7
リビングに通され、カイトの与太話を聞かされる。
内容はノブレスカイトでの自身の重要性や、ノブレスカイトの存在意義など。
ノブレスカイトに詳しくない俺が聞いても意味不明だったが、所属しているナギさんからしても荒唐無稽だったらしい。
「こいつは一体何なんだ?」
俺達がいないかのように話し続けるカイトを前に、ナギさんに脇を小突かれる。
「御厨の彼氏らしいですよ」
「それも精神異常の誇大妄想じゃないのか?」
「そっちは御厨側も『彼氏くん』で名前登録してたりで、本当っぽいです」
「あー……彼氏いないの恥ずかしいから、とりあえず作ったみたいなこと言ってたな」
ナギさんは渋い顔でカイトを眺めた。
「こいつが御厨について、何か知ってるのか?」
「本人が情報を知っているかは謎です。でもカイトが御厨に位置情報アプリを入れてたらしくて、それで直近の御厨の行動が分かるかと思います」
「そうか」
説明すると、ナギさんがおもむろに立ち上がった。
カイトは怪訝な顔をして、話を止める。
「なん……うご!」
「ちょ!ナギさん」
「こうするのが早いだろ。この手のタイプは、放っておくと、延々と作り話を吐き出し続けるんだよ」
だからっていきなり顔面殴り付けて、気絶させるのはどうかと思います。
「追跡アプリはこれか……気持ち悪い」
ナギさんはカイトがイジっていたスマホを取り上げ、アプリを操作する。
「オニとホテルに行った日、御厨はどんな動きしてますか?」
「そんな日知る訳……いや、この日か?」
ナギさんがスマホの画面を見せてくる。
それはこの前カイトが見せてくれた画面と同じだった。
「その日だと思います」
時間も無いので、スマホの画面を直接写メった。
「ノブレスカイトの廃カラオケ店に行って、ホテルに行って、行名山に行ってるな。その後オニの家に行って、ここに来てる。は!オニの奴御厨のこと良くないとか言っといて、お持ち帰りするほど気に入ってるじゃねーか」
「……カイトの家にも来てるんですか?」
「来てるけど、シャワーでも浴びにきたんじゃないか?こいつが関わってるってことはないと思うぜ」
ナギさんは気絶しているカイトを、イジッているスマホで指した。
「次の日から、スマホはずっと学校にあるな。その後電池が切れてる」
「田小山先生に、スマホを没収されてたらしいので」
「ち……事件当日の動きは分からないか。でも、流れは見えてきたな」
「はい」
御厨の友だちのパコが行方不明になり、彼女を探している途中でオニに行き当たった。
何かしらの理由でオニに取り入って、油断した鬼が行名山に御厨を連れて行った。別日に御厨は行名山に調査に行き、死んでしまった。
そしてそれには八足が関わっている。八足は現在行名山におり、パコや自分の彼女を見付けたとの事。
その彼女は薬を使われ、まともな状態ではないらしい。
「とにかく行名山に急ぎましょう」
「こいつのスマホ持っていくか?」
「いや、可哀想ですよ。スマホが無いと困りますから」
「そうか」
ナギさんはカイトのスマホを、気を失っているカイトに放り投げる。
スマホはカイトの体にぶつかり、そのまま床に転がった。
「……」
「どうした、早く行くぞ?」
「はい、そうですね」
玄関から呼ばれ、急いでナギさんの下に行く。
扉を潜ると、ナギさんにヘルメットを押し付けられた。
「バイクが有ったから、それで行くぞ」
「いや……良くないですけど、乗れるんですか?」
「乗れる。乗ってきたタクシーはもういない。乗らなきゃ間に合わないかも知れない。OK」
「間に合わないかも知れない位切羽詰まってるなら、行きたくないんですけど」
「つべこべ言うな、2人乗りしてみたかったんだ」
ナギさんは訳の分からない事を言いながら、カイトのバイクのエンジンを掛ける。
バイクの鍵は玄関に掛かっていたので、そのまま拝借したのだろう。
「分かりました。とにかく御厨が行った所まで行って見ましょう」
「おう。しっかり腰に捕まってろよ」
運転するナギさんの後ろに乗り、落ちないように捕まる。
バイクは軽快に走り出し、行名山へと向かう。
既に日は暮れ始め、夜の帳が迫ってきていた。
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