リビングに通され、カイトの与太話を聞かされる。

 内容はノブレスカイトでの自身の重要性や、ノブレスカイトの存在意義など。

 ノブレスカイトに詳しくない俺が聞いても意味不明だったが、所属しているナギさんからしても荒唐無稽だったらしい。

「こいつは一体何なんだ?」

 俺達がいないかのように話し続けるカイトを前に、ナギさんに脇を小突かれる。

「御厨の彼氏らしいですよ」

「それも精神異常の誇大妄想じゃないのか?」

「そっちは御厨側も『彼氏くん』で名前登録してたりで、本当っぽいです」

「あー……彼氏いないの恥ずかしいから、とりあえず作ったみたいなこと言ってたな」

 ナギさんは渋い顔でカイトを眺めた。

「こいつが御厨について、何か知ってるのか?」

「本人が情報を知っているかは謎です。でもカイトが御厨に位置情報アプリを入れてたらしくて、それで直近の御厨の行動が分かるかと思います」

「そうか」

 説明すると、ナギさんがおもむろに立ち上がった。

 カイトは怪訝な顔をして、話を止める。

「なん……うご!」

「ちょ!ナギさん」

「こうするのが早いだろ。この手のタイプは、放っておくと、延々と作り話を吐き出し続けるんだよ」

 だからっていきなり顔面殴り付けて、気絶させるのはどうかと思います。

「追跡アプリはこれか……気持ち悪い」

 ナギさんはカイトがイジっていたスマホを取り上げ、アプリを操作する。

「オニとホテルに行った日、御厨はどんな動きしてますか?」

「そんな日知る訳……いや、この日か?」

 ナギさんがスマホの画面を見せてくる。

 それはこの前カイトが見せてくれた画面と同じだった。

「その日だと思います」

 時間も無いので、スマホの画面を直接写メった。

「ノブレスカイトの廃カラオケ店に行って、ホテルに行って、行名山に行ってるな。その後オニの家に行って、ここに来てる。は!オニの奴御厨のこと良くないとか言っといて、お持ち帰りするほど気に入ってるじゃねーか」

「……カイトの家にも来てるんですか?」

「来てるけど、シャワーでも浴びにきたんじゃないか?こいつが関わってるってことはないと思うぜ」

 ナギさんは気絶しているカイトを、イジッているスマホで指した。

「次の日から、スマホはずっと学校にあるな。その後電池が切れてる」

「田小山先生に、スマホを没収されてたらしいので」

「ち……事件当日の動きは分からないか。でも、流れは見えてきたな」

「はい」

 御厨の友だちのパコが行方不明になり、彼女を探している途中でオニに行き当たった。

 何かしらの理由でオニに取り入って、油断した鬼が行名山に御厨を連れて行った。別日に御厨は行名山に調査に行き、死んでしまった。

 そしてそれには八足が関わっている。八足は現在行名山におり、パコや自分の彼女を見付けたとの事。

 その彼女は薬を使われ、まともな状態ではないらしい。

「とにかく行名山に急ぎましょう」

「こいつのスマホ持っていくか?」

「いや、可哀想ですよ。スマホが無いと困りますから」

「そうか」

 ナギさんはカイトのスマホを、気を失っているカイトに放り投げる。

 スマホはカイトの体にぶつかり、そのまま床に転がった。

「……」

「どうした、早く行くぞ?」

「はい、そうですね」

 玄関から呼ばれ、急いでナギさんの下に行く。

 扉を潜ると、ナギさんにヘルメットを押し付けられた。

「バイクが有ったから、それで行くぞ」

「いや……良くないですけど、乗れるんですか?」

「乗れる。乗ってきたタクシーはもういない。乗らなきゃ間に合わないかも知れない。OK」

「間に合わないかも知れない位切羽詰まってるなら、行きたくないんですけど」

「つべこべ言うな、2人乗りしてみたかったんだ」

 ナギさんは訳の分からない事を言いながら、カイトのバイクのエンジンを掛ける。

 バイクの鍵は玄関に掛かっていたので、そのまま拝借したのだろう。

「分かりました。とにかく御厨が行った所まで行って見ましょう」

「おう。しっかり腰に捕まってろよ」

 運転するナギさんの後ろに乗り、落ちないように捕まる。

 バイクは軽快に走り出し、行名山へと向かう。

 既に日は暮れ始め、夜の帳が迫ってきていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る