嘗てはベッドタウンとして栄えた清新市。

 時代が経つにつれ利便性の優位は薄れ、中心以外の顔は寂れていった。

 駅から少し離れたアーケードはシャッターを閉めた店ばかりが目につき、明かりも殆どと持っていない。

 薄暗い上に人通りがなく、地元の小学生からはお化け商店街何て呼ばれているらしい。

 そのお化け商店街を抜けた先に、潰れたカラオケ店がある。

 4階建ての立派な建物だが、立地の悪さから立てられてすぐに閉店。

 持ち主が破産して逃げたとかで、建物は取り壊されずに残ったと聞いている。

 そんな廃カラオケ店は、今はノブレスカイトの溜まり場になっている。

「ガラの悪そうなのが、ウジャウジャいるな」

 お化け商店街を散策するフリをしながら、廃カラオケ店の様子を窺う。

 入り口にはガタイの良い男達が立っており、集まってくる客のチェックを行っていた。

 SNSの情報によると、今日のあの場所で集会成るものが行われるらしい。

 と言っても、実態はメンバー集めのためのパーティーのようだ。

 ネットに出回っている『入会証』なる画像を見せれば、誰でも参加できるとの事。

 そんな建前ではあるが、やはり可愛い女子以外の一見さんはお断りらしい。

「やばいな」

 入り口にいた男の1人が俺に気付いた様子。

 同じ所をうろうろし過ぎて、怪しまれてしまったのか。

 このまま逃げてもいいが、集会とやらは不定期開催。今日を逃せばいつチャンスがあるか分からない。

 いや、そもそも今はチャンスじゃないが、御厨の彼氏くんと御厨の事件?の情報を手に入れたい。

「あー、君達も集会に参加するの?」

 焦った末に何を血迷ったのか?前を歩いていた女の子3人組に声を掛けてしまった。

 女の子達は戸惑いを見せたが、俺の制服を見て顔色が変わる。

「おにーさん、浩岳高校の人?」

「うん、そう」

「すごー、エリートじゃん」

 うちの高校はそれなりに偏差値が高く、付近の女生徒の受けは良い。

 聞く所によると女子校生の間では、うちの高校のスクールバックを使うことが、一種のステータスなのだとか。

「え?おにーさん1人?一緒に行きます?」

「今1人。一緒に行く奴来て無くて」

「えー、やばー」

 3人の内で一番大人びている子が話をしてくれる。

 制服の力に助けられて、ナンパっぽいものが成功してしまったらしい。

「あ、私達4人分でーす」

 ……制服で集会に入る流れっぽくてマジでヤバイ。

 女の子達は入館証を見せ、俺の腕を引っ張ったまま、廃カラオケの中に入っていった。

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