「助かりましたー!あ、拳銃は預かっておきますのでー」

 御影は気が抜けて、忙しく動く周りの状況を、自分とは関わりのない物のように眺めていた。

 いつの間にかミイが目の前に立っており、拳銃を渡せと手を差し出している。

 ミイ以外の人員はオニ達の確保や施設の確認に忙しいらしく、御影の方に関心を示していなかった。

 大方『あの少年は興奮状態で危ないから、知り合いの私が拳銃を回収しまーす。皆も刺激しない様に離れていて下さーい』なんて言い含めているのだろう。

「俺は正しかったんでしょうか、盃貴美似さん?」

「何の事ですー?」

「ノブレスカイトは、創設者のあだ名から来ているらしいですね。NOBLESSE(高貴な)はBONELESS(骨なし)のアナグラムとしてよく使われます。つまりBONELESS KITE(骨なしのビニール凧)で、廃棄されたビニールを表しているのでしょう。ところで盃貴美似って、廃棄ビニールと読めませんか?」

「名前をもじった悪口が許されるのは、小学生までですよー」

「半グレ集団を作って犯罪を行う事が許されるのはいつまでですか?」

「誰かが証拠を見付けて、逮捕するまでですねー」

「さっき施設で証拠を消したんですよね。警察も呼んでなかった筈です」

「………」

「ノブレスカイトの謎のリーダー。オニすらその正体を知らなかったのは驚きです。確かに警察なら、犯罪への関与は絶対に隠さないといけませんものね」

 ミイはニコニコしたまま手を出し続ける。

「命を救って貰ったから恩を返す訳じゃ、ありませんから」

「君はそう言う子みたいですねー。罪を罪で相殺する短絡的な思考でないと、世間は生きづらいですよー?」

「そうなのかも知れませんね」

 自嘲気味に笑いながら、御影はミイに拳銃を渡した。

 ミイは即座にマガジンを外し、素手で弾丸を確認していく。

 これで元々指紋が付いていたのか、今指紋が付いたのかは分からなくなっただろう。

「でも手の届く範囲だけでも、聡明でありたいと思います」

「良い心掛けですねー。子どもの内はいっぱい失敗しながら学んでいけばいいと思いますよー」

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