エピローグ
荒野人格のイベントが終わり、会場から駅へ向かう人の混雑が続く。
カイトはイベント内容と優勝チームへの文句をSNSに書き込みながら、人の流れに従って進んでいく。
そろそろ駅に着くと言う時、スピーカー越しの大きな声が耳に入り、ふいと顔を上げた。
「救急車です、通してください!」
「女の子が頭を打って、搬送を待っているんです!」
どうやらイベント帰りの人達が信号のない横断歩道を渡り続け、救急車が通れなくなっているらしかった。
救急車の後ろには車がつかえ始めているので、結構な時間を足止めされているのかも知れなかった。
「は!救急車には道を譲れよ、常識だろ」
次々に人が横断していく中、カイトは横断歩道の前で足を止める。
幾人かもカイトと同じように立ち止まり、渡り続ける人々を苦々しい表情で見つめていた。
それでも大多数の人達は救急車の前を横切り続け、立ち止まる人も声を上げてそれを止めようとはしない。
別に道を渡っている人達にも悪気はないのだろう。
救急車に道を譲るのは常識だが、今は横断歩道を渡る方が大きな流れ。
皆が渡っている状況なのだから、渡る方が常識だとすげ変わってしまっているのだろう。
「……」
相変わらず横断歩道を人は渡り続ける。
救急車側もアナウンスを諦めたのか、疲れた顔で運転席に項垂れている。
救急灯の赤い光だけが、目にけたたましい。
「お!通知か」
カイトがスマホの通知に気付いて確認する。
どうやら推しのチームが、イベントお疲れ様緊急配信を始めたらしかった。
「まずいな、もうすぐ通信制限来るぞ。急いで帰れば後半は家で見れるか?」
ギガが不安なカイトは、急いで横断歩道を渡り、Wi-Fiのある自宅へと急ぐ。
足を止めていた人達も自分だけ聡明でも仕方がないと見切りをつけ、カイトの後に続いたのだった。
御厨みくりは殺された?犯人のいない殺人事件 月猫ひろ @thukineko
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