「ナギさんから、メッセージが来てる?」

 箕浦の駅前を歩いていると、ナギさんから通知が来ているのに気が付いた。

 開いてみると、『飯はいつ行くんだ?』と言うもの。

 そう言えば賭けに勝ったら、食事を奢ってもらう約束をしていた。

 ナギさんから御厨の話を聞き出したいのは山々だが、今は八足の事を優先するしかない。

『今立て込んでいるので、今度都合がついたら連絡します』

 こちらから誘っておいて、行く気が無いようなメッセージで気が引ける。

「電話が来たか」

 ナギさんはメッセージ内容にイラッとしたのか、直接電話が掛かってきた。

「はい、御影です」

「おいこら、私が誘ってるのに脈無しか?」

 ナギさんはお怒りの様子。

 変な嘘で取り繕うのは、止めた方が良さそうだ。

「今八足の件を調べてて、箕浦にいるんですよ」

 電話の向こうでしばしの沈黙。

 ナギさんは質問を投げかけてきた。

「……なんでだ?」

「なんでというのは?」

「いや、良い。別にお前達仲良くないだろ?」

「そうですね。寧ろ相性悪いです」

「じゃあ、なんでだ?」

「八足をネットイジメしている奴らと、同じ理由です。弱い者の味方なんですよ、俺は」

「は?どう同じなんだよ」

「イジメの理由って、不快感の解消か自衛なんです。八足に誹謗中傷している奴らは、八足と言う存在が不快なんでしょう。それを悪口と言う快感で打ち消している。

 俺は八足を悪者だと決めつける論調が不快です。だから、それが間違いだと証明して、不快感を解消したい。それだけの理由です」

「ち……お前はそんな誠実な奴じゃないだろ」

「そうですね。自分でも、よく分かってないです」

 ナギさんは大きなため息を吐く。

 少しの時間思案した後、決定事項のように伝えてきた。

「13時に私も箕浦に着く。店のURL送っておくから、そこに集合だ」

「あ……」

 ナギさんは言うだけ言って、通話を切ってしまった。

 メッセージを開き直すと、オシャレな店のURLが送られてきた。

 ここまでされると断るのも申し訳ない気がする。

「ミイさんに相談したかったけど、時間が微妙か」

 13時というのは、何とも持て余す時間設定だった。

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