慣れてもらうため
「おはようございます」
朝になり蒼が目を覚ますと、一番最初に瑠奈の顔が目に入る。
白い髪と肌、赤い瞳がとても神秘的で、見ているだけで幸せな気持ちになってしまうほど。
探せば他にアルビノの人はいるだろうが、瑠奈以上に神秘的な人は本当に中々いないだろう。
「おはよう。俺が起きるまでベッドにいてくれるのな」
起きても瑠奈はベッドから出る気配はなく、蒼が起きるまでずっと側にいてくれる。
最初は強く抱き締めているからかと思ったが、流石に寝ている時に強く抱き締めるのは無理なので、故意にベッドから出なかったのだろう。
ブラコンと宣言したのだし、堂々と寝顔を見ていたかったのかもしれない。
蒼も瑠奈の寝顔だったら飽きずに永遠に見ていられるのだから。
「だって、ブラコンは……兄の寝顔を見ていたいんです、もん」
プイっと視線を反らして恥ずかしそうに言う瑠奈はとても可愛く、朝から一緒に寝て良かったな、と蒼は思う。
いつもは凜として美しいが、恥ずかしがる瑠奈は普段と違って可愛らしい。
「今は何時かな?」
ベッドの隅に置いてあるスマホで時刻を確認すると、起きるには早い六時三十分だった。
最近は瑠奈の寝顔を見てから寝るということがないため、以前のようにギリギリまで寝ることが少ない。
後三十分はこのままベッドにいてから学校に行く準備をすれば大丈夫だろう。
でも、大好きな妹と一緒にいるので、蒼にとって三十分はあっという間に過ぎる。
時間が止まってくれれば永遠に見ていることが出来るが、そんなことは不可能なので望まない。
死ぬまで瑠奈と一緒にいられるのを望むだけだ。
天国というものが本当にあるのであれば、死後も一緒にいられるのが望ましい。
「まだ抱き締めていていい?」
「はい」
もっと遅い時間だったら断られていただろうが、今は朝早いから大丈夫だった。
ギュっと力を入れて抱き締めると、瑠奈は「あ……」と吐息混じりの甘い声を出す。
一週間前のことであれば断られたことも、ブラコンだと宣言された今ではすることが出来る。
本当に嬉しくて、このまま抱き締めて登校したいくらいだ。
実際には抱き締めて登校するのは無理なので、しばらくこのまま抱き締めて幸せを味わうことにした。
「兄さん……んちゅ……」
不意討ちに頬にキスをされ、蒼はいつも通り力が抜ける。
以前はお願いして頬にしてもらったことはあるが、今回は瑠奈の方からしてきたのだから力が抜けないわけがない。
「私はブラコンなので……毎日、兄さんの頬にキス、したいです」
「はうわ……」
頬を赤くしている瑠奈の一言で脳を揺さぶられるくらいの衝撃を受け、蒼は全く身体に力が入らなくなる。
心なしか頭もボーッとし、瑠奈を直視するのも出来なくなっていた。
「兄さんのこの変な体質は治した方がいいと思うんですよね」
毎回力が抜けてしまう兄を白い目で見て、瑠奈は「はあ~……」と深いため息をつく。
嬉しいのは分かるが、力が抜けるのは勘弁してほしい、と思っているかのような顔だ。
「昨日は鼻血まで出してしまいましたし、また一緒にお風呂に入ったら出しそうですね」
「また入ってくれるのか? ぶしゃぁぁ」
「ちょ……鼻血出すとベッドが汚れるので止めてください。後、いちいち擬音を使わなくて結構です」
昨日のお風呂の時と同じように嬉しすぎて、蒼は鼻血を出してしまう。
急いで手を使って鼻を抑えるも、勢いが強いから止めきることは不可能だ。
瑠奈がティッシュを持ってきてくれたので、蒼は急いでティッシュで鼻を塞ぐ。
エロい姿を想像して出たわけではなく、一緒に入れるのが嬉しくて出た鼻血だ。
「俺は幸せすぎて死ぬ……」
「何バカなことを言っているんですか? 昨日もいっぱい出しちゃったんですから早く止めてください」
シーツを汚さないように力が入らないながらもベッドから転がり落ちるように出て、蒼は朝から鼻血を止めなければいけなくなった。
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