再び

「まさかまた輸血することになるとは……」


 朝から鼻血を出しすぎた影響で、蒼は再び病院の処置室のベッドで輸血することになった。

 たまたま前回と同じ先生がいて物凄く呆れられたが。


「私が暴走してしまってすいません」


 椅子に腰かけている瑠菜が頭を下げる。

 確かに昨日のヤンデレ宣言してから暴走気味なので、少し自重させた方がいいかのしれない。

 兄さんのお願いは何でも聞きます、と言ってくれたし、今回のことで暴走することはなくなるだろう。


「俺は瑠菜が素直になってきて嬉しいぞ」


 もう力が入るようになったので、蒼は輸血させていない方の右手で瑠菜の頭を撫でる。

 撫でられて嬉しいらしく、笑みを浮かべた瑠菜が「にゃん」と可愛らしい声を出す。

 普段クールな彼女からしたら考えられないような声だが、ブラコン、ヤンデレを完全解放したから可愛い声を出したのだろう。


「あまり鼻血が出るのはよろしくないけど、少しなら我慢……出さないようにする」


 カーテン越しに看護師が「ゴホン」と咳払いしてきたため、もう出さないようにしなければならなくなった。

 嬉しすぎによる鼻血で病院に来られては、先生も看護師も迷惑だろう。

 本当に必要としている人の診察が遅れてしまう可能性があるのだから。

 一応は蒼も血を失い過ぎてはいるから診察が必要ではあるが、気をつけていれば鼻血が出ることはない。

 鼻血が出なくなる、つまりは濃厚なイチャイチャが全く出来なくなるのは嫌なので、少し自重しながらすればいいだろう。

 今までの経験上、蒼からいけば鼻血が出ることが少ないため、瑠菜に自重してもらってこちらからイチャつけば問題ない。

 それが沢山鼻血を出して学んだことだった。


「そうですね」


 ギュッと手を握ってきた瑠菜も、蒼からきてほしいと思っているようだ。

 人前ではどうなるか分からないが、もう瑠菜はいきなり抱きつかれそうになったとしても逃げないだろう。

 ブラコン、ヤンデレと宣言しているのに逃げるなんておかしな話なのだから。


「瑠菜が美し過ぎ……」

「はいはい」


 言い切る前に適当な返事で遮られてしまった。

 病人なんだからおとなしくしといてください、と思っているのだろう。

 今回は瑠菜の暴走が原因だから反省しているようだが、元々は蒼の体質のせいでもある。

 喜びが最高潮の達すると鼻血が出る人なんて中々いないし、蒼自身も今後瑠菜とイチャイチャするために治したい気持ちがある。

 何で嬉しくなると鼻血が出てしまうのか分からないが、なるべく早く治していっぱいイチャイチャしたい。


「本当に世界一美し……」

「兄さん?」

「すいません」


 瑠菜に凄い目力で見つめられたため、蒼は謝るしかなかった。

 全くもう……と呟いた瑠菜は、椅子から立ち上がって何故かベッドに座る。


「病院の枕と、私の膝枕……どっちがいいですか?」

「瑠菜の膝枕」


 頬を赤くした瑠菜が耳元で小声で言ってきたので、蒼も小声で返す。

 先ほど看護師が輸血の調整に来たので、もう終わるまでは来ないだろうし、膝枕でおとなしくさせようと思ったのだろう。

 カーテンの外にいる看護師にバレないように、蒼は瑠菜の太ももに頭をのせて膝枕を堪能する。

 どんな枕より寝心地抜群の瑠菜の膝枕に加えて頭を撫でられたため、蒼は自らの意思で意識を手放した。

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