デート約束
「兄さんとデートしたいです」
病院に行った日の晩御飯後、リビングのソファーでのんびりとしていた蒼に瑠菜は隣に座ってそう告げた。
アルビノの体質上、一緒に出かけることはほとんどないが、何が何でもデートをしたい真剣な顔だ。
ブラコンと宣言したため、たまには一緒に出かけたいのだろう。
「デート?」
「はい。ブラコンは兄さんとデートしたいもの、です」
「はうわ」
耳元で甘い声を囁かれては力が抜けるため、蒼は甘えるように瑠菜の肩に自分の頭を乗せた。
力が抜けることを予想していたようで、「ふふ……」と笑みを浮かべた瑠菜が頭を撫でてくれる。
甘えるのが当たり前になってきているため、蒼にとって瑠菜と一緒にいられる時間が幸せだ。
もちろん以前からも幸せを感じていたが、昔とは段違いの幸福感。
「鼻血を出さないだけマシですね」
幸せを感じすぎて鼻血を出すと思っていたのか、きちんとテーブルにはティッシュが用意されていた。
「ふっ、俺も進化したってことだな」
力が入らないながらも不敵な笑みを浮かべてみせると、瑠菜は「はあー……」と盛大なため息をつく。
すぐに進化するのであれば苦労はしない、そう思っているのだろう。
確かにすぐに鼻血が出なくなるようなことがあれば病院に行くことはなかったかもしれない。
このまま瑠菜の肩を堪能していたいが、今はデートの話をしなければならない。
「デートって行きたいとこあるの? カラオケとかになりそうだけど」
天気の操作を人間が出来ないため、行くなら室内で遊べるとこになる。
カラオケや映画、ボーリングなどがデートの定番と言えるので、そこなら行き帰りに日差しさえ気を付ければ大丈夫だ。
最悪タクシーを使えば色んなお店がある駅前に行くことが出来る。
「兄さんと一緒にいられればどこでもいいですよ? カラオケなら人目を気にしなくていいので、私の希望はカラオケです」
頭を撫でられながら言われた。
人目がないとことイチャイチャしながらデートしたいということで、個室であるカラオケは二人きりになれるには持ってこいの場所だろう。
歌うことも出来るし、デッキがあるカラオケ店にDVDを持っていけば映画だって見ること可能だ。
以前に啓介は許嫁とカラオケでデートしたと言っていたので、兄妹仲良くカラオケデートもいいかもしれない。
「そうだな。週末にカラオケに行こうか」
「はい。約束ですよ」
そう言った瑠菜は、小指を立てた状態で左手を出してきた。
指切りで約束しようということらしく、破ったら文字通り拳骨一万回と針を千本飲まされるだろう。
そう思うと背中がゾッと悪寒が走ってしまうが、シスコンである瑠菜は妹の約束を破りたくない。
だから何があろうと、今日みたいに病院行くくらいに鼻血が出ようとデートに行くつもりだ。
「指切りげんまん、嘘ついたら針千ぼーんのーます。指切った」
お互いの小指を絡め、絶対に行くと想いを込めて指切りでデートの約束をした。
指を切った後は恋人繋ぎをして再び指を絡め合う。
「えへへ。兄さんとデート……今から楽しみですね」
「俺もだよ」
今までも何度か一緒に出かけたことはあるが、デートとして遊びに行くのは初めてになる。
カラオケは決定として、他にはどこに行くか考えなければならない。
紫外線が当たることのない場所にしないといけないから限られるが、それでもデートを楽しむことは出来るだろう。
せっかく瑠菜から誘ってくれたので、絶対に楽しませるデートにしないといけない。
明日辺りに許嫁とのデートを沢山している啓介に尋ねると決めた。
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