デートプラン

「啓介、俺とデートしてくれ」


 瑠菜とデートをする約束をした次の日、教室に着いた蒼は自分の席に座っている啓介にそう言った。


「……は?」


 いきなり同性からデートしてくれ、と言われたからか、啓介は手に持っていたスマホを机に落として驚いたように目を見開く。


「どうした? ついにゲイに走ったのか?」


 椅子ごと距離を取る啓介を逃がさないように蒼は彼の肩を抑える。


「シスコンの俺がゲイになるわけがないだろ」

「じゃあ、何で俺とデートなんだ?」


 若干怯え気味の啓介は、恐る恐るといった感じの声を出す。

 同性からデートに誘われたら当然の反応と言えるが、蒼はゲイに走ったから啓介にデートに行こうと言ったわけではない。


「すまん、言い方が悪かった。瑠菜と出かけるから下見をしておきたい。許嫁とデートをしている啓介ならいいプランを出してくれると思って」

「なんだ。そういうことか」


 ホッとしたように啓介は胸を撫で下ろす。

 親友がゲイにならなくて良かった、と思っていそうな反応のため、蒼は心外だと頬を膨らます。

 デートしてくれと言った時にクラスメイトの女子から黄色い声が上がったが、今はどうでもいいので気にしない。

 このクラスは男性同士の恋愛が好きな女子が多いみたいで、たまにBLな話が聞こえてくる。

 どうも蒼X啓介のBL本を書いている女子がいるようだ。


「それにしても妹とデートね。どこまでもシスコン街道を突っ走るな」

「それが俺だ」


 シスコンでなければ今の自分はいないと思っている。

 瑠菜のためにどこまでも愛し、瑠菜のために何でも頑張れるのが蒼だ。


「あの身体でデートって大丈夫なのか?」

「日差しには気を付ける」


 UVカットクリームに日傘さえあればある程度は大丈夫だし、駅前まではバスを使えば大丈夫だろう。

 紫外線はガラスを貫通してくるが、窓側に座らせなければ問題ないし、そもそも肌は服でしっかりガードする。

 デートに行く日に紫外線による肌の火傷の原因のUVBが抑えられる曇りか雨になってくれるのを祈るのみだ。


「そうか。でも、美波のことはいいのか?」


 啓介はまだ登校していない美波のことを見る。

 どうやら美波は寝坊助らしく、学校に来るのはいつもギリギリだ。


「まあ、付き合う気はないよ」


 学校では良く話しかけてくるし胸を押し付けてくる時もあるから気持ちには気付いているが、好きでもないのに付き合う気はないし、それなのに付き合ったら美波に申し訳ないだろう。

 もちろん好きな気持ちがあったらこちらから告白していたが、今の蒼は瑠菜一筋なので誰かと付き合いたいと思ったことはない。

 でも、その内美波とは決着を着けないといけないのは分かっているため、今度呼び出して自分の気持ちを言わないといけないだろう。


「そうか。美波は俺にとっても幼馴染みみたいなものだから出来ることなら応援してやりたいんだが……」


 昔は三人で一緒に遊んでいたので、啓介は心情的には美波の恋を応援したいらしい。

 教室で美波のアタックぶりを見ていたら、そう思っても不思議ではないだろう。


「美波とは今度話す。それよりか今は瑠菜とのデートプランだ」

「お、おう……」


 瑠菜とのデートがどれだけ大事かが伝わったようで、啓介は気圧されたように返事をした。


「カラオケに行くのは決まっているんだが、他にどこがいいと思う? 休日に行くから夜までいるのは無理っぽいし」


 駅前にあるカラオケ店は、混雑時はフリータイムであっても三時間で退室しなければならない決まりがある。

 なのでずっとカラオケでイチャイチャ出来ないため、蒼は他にどこに行くべきか指を顎に当てて悩む。


「室内のデートなら漫画喫茶がいいんじゃないか? 個室のこともあるし、漫画やアニメも見放題、ソフトドリンク飲み放題だぞ」

「ふむ。参考にさせてもらおう」


 漫画喫茶はカラオケとは違って退室させられることはないし、のんびりイチャイチャするにはもってこいの場所だ。

 スマホのメモ帳アプリを起動し、早速『漫画喫茶』と打ち込む。


「ん? スマホ変えたのか?」

「ああ。前のは動きが鈍くなったから」


 最近は教室でスマホを弄ることがあまりないため、今まで啓介は気づかなかったようだ。


「俺のスマホのことより、他にどこがいいか教えてくれ」

「分かった」


 予鈴が鳴るまで啓介にオススメのデートプランを聞きまくった。

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