改善体質のため
「兄さんは体質を治す努力をするべきです」
病院から帰ってくると、リビングで瑠奈は真剣な眼差しをこちらに向けた。
力が抜けるだけではまだしも、鼻血を大量に出してしまうと処理が大変だし、病院に行くことになる。
確かに鼻血で再び病院に行くのは面倒なため、出来ることなら治した方がいいだろう。
基本的には出ないのだが、嬉しさマックスになるとどうしても鼻血が出てしまう体質らしい。
一応、錠剤タイプの増血剤が処方されたが、飲まないに越したことはない。
鼻血を出さないようにするには瑠菜とイチャイチャしなければいいのだが、ブラコンだと宣言したからくっつけないのは嫌なのだろう。
だからなんとしてでも治してほしい、と思っていそうだ。
「治すってどうするんだ?」
蒼自身も鼻血を出したくないは思っているが、体質を治すなんて一朝一夕で出来ることではない。
病院で輸血をしたから顔色は良くなっており、蒼は瑠菜の目を見て尋ねる。
「具体的な案はありませんよ」
「うおーい」
何か考えがあると思ったが、どうやら瑠奈は何も思い浮かばなかったようだ。
少し考えただけで体質が治る案が思いつくなら誰も苦労しないし、蒼もそう簡単に治るとは思っていない。
ただ、具体案を提示してくれそうな雰囲気だったので、苦笑いしながら答えた瑠菜についツッコミをいれてしまった。
いっぱい瑠菜とイチャイチャしたいので、治ることに越したことはないが。
でも、クールに言われるとは思ってもいなかった。
「思い付かないのはしょうがないじゃないですか」
「そうだな。とりあえず俺も復活はしたし」
輸血をしたおかげで顔色も良くなってフラつきもないため、二人で歩いて帰宅した。
もうそろそろ梅雨に突入しそうな雰囲気で雲っていたので、アルビノの天敵である紫外線をあまり気にしなくて良かったのだ。
「本来であればイチャイチャをしなければいいんでしょうが、それだと私が我慢出来ません」
「俺も我慢できん」
せっかく兄妹仲良くいられるようになったのだし、鼻血のせいでくっつけなくなるのは嫌だ。
今も抱き締めたいのを我慢しており、出来ることならずっとくっついていたい。
「私からいくと兄さんは鼻血を出す恐れがあるので、兄さんが私にくればいいのです」
瑠菜の言葉に蒼は「そうか」と頷く。
そもそも普段は蒼の方からくっついていて、その時は力が抜けたり鼻血を出すことはなかった。
だから蒼からぐいぐいとくっつけば、とりあえず鼻血を出すことはない。
「それに……私は兄さんからくる方が、好きです」
「はうわ……」
大好きな妹に耳元で甘えたような声で言われ、蒼は早速身体の力が抜ける。
そんな蒼を支えるようにソッと抱き締める瑠菜であるが、非力な彼女には支えるのは無理な話で、少しずつソファーに押し倒すような形になった。
端からみたら兄が妹を襲っている構図だが、力の入らない蒼に襲うことなど出来ない。
そもそも妹を性的な対象として見たことがないので、今のところ襲いたいとは思っていないのだ。
「兄さん、重いです」
もろに体重がかかっているらしく、瑠奈は少し苦しそうな顔をした。
いくら蒼の体重が平均より軽いといっても、女性からしたら重いのだろう。
「動けない……」
本来であればすぐ退けば済むが、今は力が入らないから動けない。
「本当にどうにからなないんですかね……」
はあー、と瑠奈はため息をつきながらも、何とかしてかかっている体重を分散しようと動いている。
非力な瑠奈には難しいようで、ほとんど……いや、全くと言っていいほど動いていない。
もちろん蒼は瑠菜の身体に負担をかけたくないから動かそうとするが、努力虚しく動けない状態だ。
「兄さん、どうにかしてくださいよ」
「む、り……」
力を入れようにも上手く入らず、しばらくこのままの状態だった。
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