カラオケデート
「次はカラオケ。これは予定通りですね」
映画を見に終わった後カラオケで、フリータイムにドリンクバーを学割を使って入る。
今日は大雨であまり人は来ないだろうし、制限時間ギリギリまでいることが出来るだろう。
いられなかったらいられなかったで他にも行きたいとこがあるため、何も問題はないのだが。
「まずはご飯食べよう」
カラオケで昼食を摂るつもりなので、映画が終わってからファミレスなどには行っていない。
蒼はメニューを手に取り、どれを食べようか迷う。
カラオケ自体は啓介とたまに行くが、基本的に食べ物を頼んだりしない。
家に帰ればご飯があるし、いっぱい歌いたいから頼む必要を感じないからだ。
でも、今日は二人きりになれるカラオケデートでしたいと思ったことをしたい。
「兄さんがカラオケで食べる理由は何となく分かりますが……」
ブラコンだけあって兄の考えはある程度分かりようで、蒼の隣にいる瑠菜も一緒にメニューを見る。
ここ最近感じる甘い匂い……一緒に寝るようになってから本能を直接刺激してくるかのようだ。
以前はいい匂いだなと思いつつも特に何か考えることはなかったが、今は瑠菜の匂いを感じると単に妹として見ることが難しくなる。
もし、次にキスを迫られたら我慢出来ないかもしれない。
それほどまでに今の瑠菜は魅力的なのだから。
「兄さん、どうしました?」
「いや、何でもない?」
不思議そうに思っている瑠奈に見つめられたが、蒼は平然を装って答えた。
魅力的な瑠菜が側にいるだけで力が抜けそうになるが、何とか我慢してメニューを選ぶ。
ファミレスより若干値段が張る気がするが、二人きりでしたいことがあるからしょうがない。
それに初めてのデートにお金をケチるものではないし、そこまで高くないから大丈夫だろう。
「俺はフライドポテトとチャーハンにしようかな」
二人でつまめるポテトとお腹が膨れるご飯物を食べれば問題ない。
瑠菜も何を食べるか決めたようなので、何を食べるか聞いた蒼はインターホンで注文をする。
今日はあまりお客さんがいないっぽいため、十五分もすればテーブルに食べ物が並ぶだろう。
「じゃあ、少し歌おうか」
「はい」
食べ物が来るまで時間があるので、蒼はドリンクバーから持ってきたお茶を飲んでからデンモクで曲を選ぶ。
基本的にアニメを見ることが多いので、アニメのジャンルから選曲することにした。
「一緒に歌う?」
「いえ、兄さんの歌を、聞きたいです」
ちょこん、と蒼の手を指の先で摘まむようにしてきた瑠菜が可愛く、自然と口元が緩んでしまう。
どうして美しくありつつもこんなに可愛いのか不思議なほどだ。
「妹のためにお兄ちゃん頑張っちゃう」
「本当にシスコンですね」
若干の呆れたような声だったが、シスコン丸出しの蒼を見て瑠菜の口元が緩んでいる。
兄として妹にしっかりとしたとこを見せないといけないので、蒼は最初からお気に入りの曲を歌うことにした。
☆ ☆ ☆
「意外と美味しそうだな」
お互いに一曲歌い終わった後に料理が来た。
蒼はフライドポテトとチャーハン、少食の瑠菜はシーザーサラダだけだ。
ポテトと一緒なら充分にお腹が膨れると思ったのだろう。
カラオケ店の料理は冷凍だろうが、見た限りでは美味しそうだ。
「瑠菜にあーんってして食べさせてほしいな」
「あ、あああ、あーん?」
蒼の一言に瑠菜は頬を真っ赤にし、この兄は何を言っているの? という視線を向けてきた。
カラオケは個室であろうとも、ドアはガラスの部分があるから外から全く見えないわけではない。
だけど蒼は瑠菜にあーんってして食べさせて欲しいので、ファミレスには行かずにカラオケでご飯を食べることにしたのだ。
外から全く見えないわけではないが、絶対に断られると分かりきっているファミレスよりからカラオケの方があーんってしてくれるだろう。
ただ、以前は捻挫したからという理由があったからしてくれたが、今は右手が元気なので断られる可能性はゼロではない。
誰もいない家でだったらしてくれたかもしれないが、人の視線があるかもしれない場所では断ってくる。
一応先日行った下見でこのカラオケ店の個室に監視カメラがないのは確認済みのため、あーんってしてくれるかもしれない。
でも、やっぱり恥ずかしいようで、瑠菜はドアの方に視線を向ける。
一応は誰も見ていないが、やはりドアのガラスが気になるのだろう。
「皆歌っているから大丈夫だよ」
いちいち他の部屋でイチャイチャしている男女を見る人は少ないだろうし、別にエッチなことをするわけではない。
耳元で囁いてから優しく頭を撫でてあげると、瑠菜は嬉しそうに目を細めて「はい」と頷いた。
チョロい、と思わずにいられないが、自分もそうなので蒼は何も言わない。
先日、啓介に女の子は耳元で甘い台詞を言うといい、と言われて実行してみた結果、彼の言った通りに瑠菜もなった。
許嫁といっぱいデートに行っているようだし、リア充の言葉は実行する価値があると思った瞬間だ。
だからって全ての女の子に効果があるわけではないだろうし、ブラコンで好意抱かれていると分かっているから実行した。
他の女の子にやったとしても気持ち悪いとしか思われないだろう。
「兄さん、あーん」
恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、瑠菜はスプーンですくったチャーハンを蒼の口元に持ってくる。
ギュっと肩を抱いて己に引き寄せてから、蒼は「あーん」とチャーハンを食べていく。
元々美味しいのもあるだろうが、最愛の妹である瑠奈に食べさせてもらうと何倍にも美味しく感じる。
「瑠菜の手料理には劣るな」
どんなに美味しかろうと、やはり瑠菜の作った料理には敵わない。
瑠菜の手料理であーんってしてもらうのが最高、と分かったが、お腹は空いているから再び「あーん」とおねだりをする。
「本当にどうしようもないシスコンですね」
ふふ、と笑みを浮かべた瑠奈に、再度あーんってして食べさせてもらった。
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