世界一美しい妹を抱き締めて寝ていたらいつの間にかヤンデレになっていた
しゆの
世界一美しい妹
「今日も朝から世界一美しいぞ」
脱色では決して出すことが出来ない腰下まで伸びたサラサラとした限りなく白に近い銀髪は綺麗だし、長いまつ毛に縁取られた宝石を思わせるくらいに美しい淡紅色の大きな瞳、シミ一つない雪のように白い肌、小顔で足腰は細くて女性の象徴たる胸は平均以上にあり、天使や妖精などを思わせる神秘的で整い過ぎた容姿だ。
父親の再婚で妹が出来て初対面の時、美しすぎる瑠奈を見て思わず一目惚れした、と言ってしまった。
もちろん妹なのだから恋愛感情があるわけではないが、蒼は瑠奈を世界一美しい人だと思って愛している。
ただ、瑠奈が美しすぎるために、蒼は重度のシスコンになってしまった。
他のどんなことを疎かにしてしまってでも妹を優先してしまうほどだ。
特に髪と瞳と肌を気に入っており、蒼は毎日瑠奈の髪を手入れしている。
「兄さん……朝からスキンシップが激しいですよ」
スリスリ、と朝から頬擦りされた瑠奈は、少し困惑そうな顔をしつつも口元は緩んでいた。
本気で嫌なら抵抗してくるだろうし、兄妹のスキンシップが嫌いでないことが伺える。
「いいじゃないか。学校では一緒にいれないんだから」
「学年が違うからしょうがないですよ」
同じ高校だが蒼が二年、瑠奈が一年のために、校内で一緒にいれる時間は昼休みくらいしかない。
本当は休み時間の度に会いに行きたいのだが、流石に恥ずかしいから、と断られてしまった。
兄が過剰に接してくるのは恥ずかしいようだ。
「こうなったら留年して来年は一緒のクラスになるしかない」
「兄妹で一緒のクラスになることはないでしょうから、留年するのだけは止めてくださいね」
確かに双子で同じ学年であっても、クラスは別々になると聞く。
「それより朝ご飯を食べますよ。今日はサンドイッチを作りましたから」
テーブルには二人分のハムサンドやタマゴサンドがあり、朝から作ってくれたようだ。
「父さんと母さんがいないからって瑠奈が作る必要はないんだぞ」
今年の春から父親は海外出張で母親と共に家を空けているので、食事は瑠奈が用意してくれる。
でも、蒼はあまり瑠奈に家事をさせたいとは思っていない。
何故なら瑠奈は生まれつきメラニン色素が不足しているアルビノという先天性の遺伝子疾患のため、塩素を含む水や光、紫外線、洗剤などに敏感だからだ。
懐中電灯の光を直接見ただけで失明の恐れ、プールに入ると肌がただれ、夏場に太陽光を長時間浴びると肌が火傷する可能性がある。
美しすぎる容姿と引き換えに、普通の人なら大丈夫なことも瑠奈にとっては危険が伴う。
プール、夏場の屋外の体育は見学しなければならない。
夏場は本当に紫外線を気にしないといけないので、本日……六月一日から夏服で半袖になるが、瑠奈は長袖のスクールシャツを着ている。
上は長袖に下はタイツと夏でも比較的厚着で、外で他の人が出来るような薄着を瑠奈は出来ない。
「そう思うなら兄さんが早く起きて用意してくださいよ」
抱きつかれながらも、瑠奈はこちらに白い目を向ける。
確かに蒼が早起きをして家事を頑張ればいいだけ。
「朝は苦手なんだ……」
瑠奈のためなら何でも頑張れる自信があるが、早起きだけは苦手だ。
大好きな瑠奈と一緒に登校が出来るから遅刻しないくらいに起きはすれど、家事をするために早く起きることは出来ない。
「そんなに落ち込まないでください。ご飯を作るのは好きですから。それにビニール手袋をしてますから、水に触れても問題なしです」
「大丈夫か確認するから」
綺麗な肌にシミが出来ては嫌なので、蒼は瑠奈の手を持って隅々まで確認をする。
幸いなことにいつもと同じで美しい手をしていて一安心だ。
「兄さんは本当に心配性ですね」
呆れた様子で瑠奈はため息をつく。
心配性なのは自覚しているが、どうしても瑠奈に身体を気にかけてしまう理由があるのだ。
「瑠奈のお父さんみたいになってほしくないからな」
蒼は直接会ったことがあるわけではないが、話を聞いて瑠奈の血の繋がった父親が早くに亡くなったのを知っている。
死因は皮膚ガンで、しかも瑠奈と同じアルビノだった。
メラニン色素が薄いアルビノの人は、紫外線などの影響を受けて他の人より皮膚ガンになりやすい。
だから蒼は瑠奈を気にしている。
十代、しかもUVカットクリームがあるから気にする必要はないかもしれないが、心配し過ぎることにデメリットがあるわけではない。
純粋な日本人なのに髪と肌が白く、瞳が赤いのは父親からの遺伝のアルビノが理由だ。
「ご飯食べる前にいつもの確認しようか」
「毎日する必要ありますかね?」
「もちろん」
頬を赤く染めて恥ずかしそうに頷いた瑠奈は、長い髪を手で退かしてくるり、と回ってこちらに対して背中を向けた。
蒼はゆっくりと瑠奈のスクールシャツを捲って背中を露出させる。
もちろんカーテンは締め切っているので、不健康そうな白い肌が露出しようと太陽光に当たる問題がない。
「いつも通り綺麗な肌だ」
背中の隅々まで確認したので、蒼は瑠奈のシャツを元に戻す。
単に綺麗な肌を見たいがためにしているわけではなく、一番目の届かない背中を確認させてもらっているだけ。
背中は服を着るから紫外線が当たりにくい部分ではあるが、自分では異変に気付かない箇所であるから見る必要がある。
だから蒼が背中フェチというわけではなく、強いて言うなら瑠奈フェチ。
「うう~……恥ずかしいです」
血の繋がりのない兄に見られるのはとても恥ずかしいようで、瑠奈は毎回頬を真っ赤に染める。
小学五年生の恋を自覚してもおかしくない歳に兄が出来たのだし、見られて恥ずかしくなるのだろう。
「そうか。今日はピンクなんだな」
「い、いちいち言わなくていいです。それより早くご飯を食べますよ」
恥ずかしそうにしながら、瑠奈はテーブルにあるサンドイッチを食べた。
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