兄妹の甘い朝

「んん……」


 朝になって蒼は起きる。

 隣には自分の腕に抱かれている瑠奈がおり、こちらを睨むように赤い瞳を向けていた。


「兄さん、起きるの遅すぎです」


 スマホの画面に写っている時刻を確認するといつも通りだが、瑠奈からしたら遅いのだろう。

 かなり怒っている様子で、目が早く離してくださいと訴えていた。


「それと兄さんのスマホから目覚ましか分かりませんが、エンドレスで私の声が流れているんですけど」


 確かに先ほどから瑠奈の声が流れており、自分の声が流れて恥ずかしいから早く消してほしいのだろう。

 目覚ましにも瑠奈の声を使いたいので、パソコンで編集したのをスヌーズ機能と沢山の時間を設定して、止めても何回も流れるようにしてある。

 先ほどから「兄さん、起きてください。大好きな兄さんためにどんな方法を使ってでも起こしちゃいますよ」とスマホから流れているのは、録音した音声をパソコンで繋ぎ合わせて作ったものだ。

 瑠奈のことならとんでもない能力を発揮するため、編集方法などはとてつもないスピードで習得出来た。

 目覚ましを止めて、今日も世界一美しい瑠奈の方を向く。


「さあ、瑠奈よ。スマホから流れている声を同じセリフを言って起こしてくれ」

「もう起きている人に言っても意味ないですよね」

「おやすみ」


 何としてでも起こしてもらいたいため、瑠奈を抱き締めたまま瞼を閉じる。

 このまま強く抱き締めていれば抜け出す術が瑠奈にはないため、どうしても起こさないといけないだろう。


「ちょ……寝ないでくださいよ」

「スマホと同じセリフを言えば起きるぞ」

「寝てないじゃないですか」


 確かに寝ていないが、言ってくれないと離さないからこのままでは二人揃って遅刻することになる。

 だから瑠奈には起こす以外の選択肢が存在しない。


「兄さん、起きてください。大好きな兄さんを起こすためなら、どんな方法を使ってでも起こしちゃいますよ」


 物凄く恥ずかしがっているような吐息が混じった声が聞こえ、昨日と同じように身体に電気が流れた。

 身体中が幸福感に満たされるが、今日はもう少し瑠奈に甘えてみようと思う。


「キス、してくれたら頑張れる」

「キスぅ? 私たちは兄妹ですよ?」

「シスコンの俺は瑠奈のキスを望む。でないと今日は離さない」


 流石に口にキスは無理だろうし、蒼は自分の頬を瑠奈の前に向ける。

 いくら頬にキスでも恥ずかしいようで、瑠奈は「あう~……」と声を出す。


「兄さんとなら、離れなられなくても、いいです……」


 今までにないくらいの衝撃が身体中を襲った。

 離れられなくていいなんて初めて言われたし、嘘を言っているわけではないだろう。

 抱き締められながら寝たせいなのか、瑠奈は少し自分のブラコンを解放したようだ。

 瞼を閉じているから見えないが、身体がかなり熱くなっているから顔全体が赤くなっているだろう。


「でも、学校に遅刻したくはないので……んちゅ……」


 頬に熱い感触が伝わってきた瞬間、一瞬にして身体から力が抜けた。

 シスコンにとって妹から頬にキスされるのは一番の幸せであり、これだけで一ヶ月は頑張れるだろう。

 嬉しさのあまり瞼を開けると、これ以上ないくらいに瑠奈の顔が、髪の隙間から見える耳まで真っ赤になっていた。

 アルビノで肌が凄い白いため、恥ずかしくなるとすぐに分かる。


「おはよう」

「おはよう……ございます……」


 恥ずかしさからか、瑠奈は蒼の胸に顔を埋めさせた。

 朝から幸せな気持ちを感じられた蒼はとても満足だが、力が抜けてしばらく立ち上がれそうにない。

 一方の瑠奈は恥ずかしがっている顔を見せられたくないようで、同じくベッドから出ようとしない。

 あまりゆっくり出来る時間ではないのだが、もうしばらくこの幸せをベッドで味わうことにした。

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