嫉妬?


 翌日の朝のこと。


「そういえば天助、昨日月島さんと一緒にいなかったか?」


「え、天助は昨日実行委員の仕事があったんじゃ?」


 校門のところで偶然会った千尋と菜乃花と一緒に昇降口で靴を履き替えている時、思い出したように千尋が言った。菜乃花も驚いたように俺を睨む。


「いや、帰りにたまたま会ったんだよ。んで、ちょっと気分転換に遊んでただけ」


「あんな遅い時間まで?」


「……なんで知ってんだよお前は」


「コンビニに行った時にさ、たまたま見かけたんだ」


 別にやましいことなど一つもないので、見られていても困ることはないけど、何だかいい気分ではないな。


「で、なんでお前はそんなに睨んでくるわけ?」


「睨んでないよ、自意識過剰なんじゃない」


 って言いながら、睨んでくるし。


 ほんとうにこいつは、俺のことをどう思っているのだろうか。


「あ、葉月くん!」


 後ろから、声をかけられた。


 耳にすうっと入ってくる綺麗な声、誰のものなのかは振り返らずとも分かった。


「あ、彩夜ちゃん。おはよー」


「おはよう」


 女の子同士は気さくに挨拶を交わす。その後に、千尋との挨拶を済ました月島は俺の目の前にやって来る。


 じっと俺の目を見つめて、何か言いたげな表情を見せた。


「……え、っと」


「昨日はありがとね、おかげで解決したよ」


 ぺこりと頭を下げて、律儀にお礼をしてくれた。そっか、仲直り出来たのか。


 それはよかった、と思っていると、月島は「それと」と言葉を続けた。


「覚えてるかな、わたしのクラスの喫茶店の話。わたし、歌うことにしたから。絶対に見に来てね?」


 曇りのない笑顔でそう言って、俺が何かを言う前に走って行ってしまった。


 きっかけは何かは分からないけれど、どうやら前に進み始めたようだ。


 俺も、負けてはいられないな。そんなことを思っていると、


「なに、二人で話してんのさ。昨日何があった? 何があった!?」


 横で菜乃花が何かに火を灯していた。


 やめろよ、そういう嫉妬してるみたいな反応。勘違いしてしまうだろうが。


 嫉妬……してんのかな?

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