創立者祭開始!
クラスの中はざわついていた。浮ついていた。
来ている生徒は、約三分の二。一部の生徒はどうやら協力的でないらしい。みんな頑張ってんだから、手伝おうとか思わないのかね?
教室の中では、赤坂の指示の下それぞれ最後の準備に差し掛かっている。開始まで残り一〇分ほど。緊張とかはないけれど、それでもまあドキドキはする。どうやら俺も浮ついているらしい。
「今日の予定は?」
「昼からは自由行動にしてもらうために、朝は働く」
「天助が自分から働こうとするなんて、どういう風の吹き回しなんだ?」
くすくす笑いながら、俺の隣で同じようにクラスの様子を眺めている千尋は、何というかいつも通りだった。
「じゃあ昼から一緒に回ろうよ!」
そう言って、菜乃花が近づいてくる。気づいた俺と千尋はそっちの方に視線を移した。
花咲菜乃花も、少し浮ついている。
それは完全に俺が思っただけで、実際どうかは分からないけれど、テンションがもう高いし、何というかいつもと違う。
そう思いながら菜乃花の方を見ていると、菜乃花もこちらをじっと見つめてくる。なんだ? なんでそんなに見てくる? 俺の顔になんかついてるのかな……。
「花咲さん、髪留め買ったの?」
髪留め? 言われて見てみると、確かに前髪が分けられて留められている。だからいつもと何か違う感じがしたのか。髪が耳にかかっていて、確かに言われてみればいつもと雰囲気が違う。女の子って髪型一つで印象変わるんだな。
「んもう、千尋くんはイケメンだから気づくと思ってたよ? なんで天助は気づいてくれないかなー。やっぱもうちょっとダイタンな方がよかったかな」
「似合ってると思うけど?」
「千尋くんはイケメンだから、そう言ってくれると思ってたよ。髪が長かったら括ったりしてイメチェン出来るんだけど、あんまり髪長くないから難しいんだよ」
「女の子らしくていいと思うけどね、そういうところに気を回すの」
「千尋くんはイケメンだから、女の子の褒め方を理解しているよね、それに比べて天助は」
「なんでそんなにイケメンを強調するの!?」
おお、珍しく千尋が声を荒げてツッコンだ。
「え、でもイケメンじゃん」
「喜んでいいのか分からないなあ、花咲さんの褒め言葉は」
「心の底からの言葉だよ」
グッと親指を立てて千尋に向けた菜乃花は、そのまま俺を横目で見る。
「天助も千尋くんのイケメン具合を見習うといいよ」
「いや別にいいよ、勝てる気しないし」
千尋とイケメン対決するとか、正気の沙汰じゃないよ。プロレスラーにプロレスで勝負するとか、サッカー選手とPK勝負するみたいなもんだぞ。イケメンとか完全にあいつの土俵じゃねえか。
「人によっては、勝ちの目あると思うよ?」
「どういう意味だ?」
イタズラに笑って、千尋はよく分からないことを言う。
「俺がイケメンかは置いといて、それは周りからの印象の問題だもの。誰かさんは俺よりも天助の方がいいって言うかもしれないよ」
そう言って、何故か千尋は菜乃花の方を見た。何でここでそっちを向く? それはあれか、フラグ的な何かか? いや、騙されんぞ俺は成長したんだ。
「もう、千尋くんっ!」
ぺしぺしと千尋の肩を叩きながら、菜乃花が顔を赤らめる。
千尋のやつ、菜乃花の攻撃を受けて微動だにしていない……だと……? ダメージがないのか? あいつ弱いフリして実はめちゃくちゃ強いんじゃ。
「とにかく、昼からはみんなで回ろうね!」
そういやそんな話してたね、なんかすっかり忘れてた。
「あれ、俺も行っていいの?」
「いいに決まってるでしょ!」
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