飛鳥と千尋


「しかし、花咲さんとねー。ホント、教室から逃げ出した時はどうなることかと思ってたけど、きちんとケジメつけたんだねー」


 食堂で、サラダをつつきながら千尋が感慨深く呟く。


「ま、そうだとは思ってたけどさ。でも月島さんに告白された時はどうするのかと思ったよ、もしかしたら月島さんに行くんじゃないかってさ。でも、そういう結果になったんなら、やっぱり納得だ」


 俺はうどんを啜りながら、そっぽを向く。


 何だか、俺はお見通しでしたよ感がどうにも気に入らない。しかも、こいつのことだから本当にお見通しだったのだろう。恐るべし、親友。


「正直、驚きを隠せないけれど、それは私にも報告するべきではないかしら?」


 突然の声に、俺は振り返る。そこには、こちらを睨む赤坂の姿があった。千尋は驚いた様子もないので、恐らく気づいていたと見た。まじギルティ。


「隣いいかしら?」


「あ、おう」


 一言断ってから、赤坂は俺の隣のイスを引く。


「お前、弁当じゃねえの?」


「たまには食堂で食べるわよ」


 そう言って、赤坂は定食の煮魚を器用に口に運ぶ。渋いなあ、チョイスが。


「しかし何なのよ、屋上で黄昏れてるから声をかければお悩み相談してきて、それで結果報告をしないなんて、重罪よ?」


「タイミングが無かったんだよ。赤坂さ、普段近づくなオーラ出しているし」


「出してないわよ、ぶん殴るわよ?」


「委員長キャラがぶん殴るとか言うんじゃねえよ」


 拳を握る右手を抑えつけて、必死に赤坂に訴える。


 すると、前で見ていた千尋が驚いたような、関心したような声を漏らす。


「天助の問題解決に、まさか赤坂さんが一役買っていたとは、こう言っちゃあ何だけど、やっぱり意外だね」


「そうね、私も今思うとどうしてこんなどうしようもない人間を助けたのか甚だ疑問だわ」


 言い方ヒドイな。


 でもまあ、怒るのも無理はないか、確かに、俺が答えを導き出したのは、赤坂のおかげだと言っても過言ではないわけだし。


「悪かったよ、遅くなったけど、そういうことだ」


「リア充自慢はよして。言っておくけれど、私は末永くお幸せになんて言わないわよ。まあ、失恋したら慰めてあげるくらいはしてあげるけれど」


 ふいと顔を背けて、再び箸を動かす。


 赤坂の奴め、マジでツンデレ属性プラスされるんじゃね?

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