エピローグ:ふたりは恋を記録する

 第7宇宙歴124年

 12月1日

 快晴



 いつか壊れた日のために、消えない日誌を綴りたい。

 そう思って、手書きの文字とノートを使った日誌を書くことにした。


 そしてこの日誌は、私だけのものではない。

 二人でつける物。交換日記という物だ。

 日誌ではなく日記と表記するのが可愛いしラブキュンだと、キャシーが教えてくれた。

 そしてせっかくなら好きな相手と二人で書くべきだと豪語したのもキャシーで、彼女から貰ったピンクのノートにこれを書いている。


 といっても、誰かに向けて日記を書くのは初めてだから何を書けばいいか分からない。とりあえず他愛ない内容から始めようと言われたが、どういう物が他愛ないのかもよくわからない。


 なのでとりあえず、この下にハム二郎三世の絵を書こうと思う。

 見てね。


【アンドロイド製造番号J0956345より】










































第7宇宙歴124年(だっけ? そしてこれいるか?)

12月2日


【ジルへ】


 君の絵は、相変わらず個性的だな。

 あと何故特殊インクで描いた。

 絵を書くのが、実はちょっと恥ずかしかったのか?

 それはそれで可愛いが、機械の眼がないと見えないから、今度からは普通のペンで書いた方が良いと思う。


 あと何を書けば良いか悩んでいたが、会話するみたいに思った事を自由に書けばいいんじゃないか?

(と言っても俺も交換日記なんてしたことないし、まだ勝手がよくわからないが……)


 とりあえず、迷ったときは「レオが好き」って書いておくのはどうだ?

 他にも俺としたいこととか、デートで行きたい場所とか、キスして欲しい場所でも良い。

 まあ来週からはまた一緒に暮らせるし、口で言ってくれも構わないけど、日誌で愛の言葉を交換するのもそれはそれで乙な気がする。


 だから是非、俺への愛を綴ってくれると嬉しい。



 ……なんて書いてみたが、いざ自分が書こうとすると何だか恥ずかしくてペンが止まるな……。とりあえず、今日の所はこれくらいにして愛の言葉は君に日記を渡すときに直接囁かせてくれ。


 それじゃあまたな。


【レオより】

(ここは普通、製造番号じゃなくて呼び名を書くんだぞ)





第7宇宙歴124年(年号は大事だと思います)

12月3日


【レオへ】(出だしと締めのを書きかた、記憶しました)


 私はレオが大好きです。

 レオと一緒にしたいのは、ダンスです。またあの曲で踊りたいです。


 デートで行きたい場所は海です。

 少し前に、キャシーがレイン中佐をストーカーしてる最中に素敵な浜辺を見つけたと言っていたので、そこに行きたいです。


 キスして欲しい場所は、特にありません。


【ジルより】







第7宇宙歴124年(わかった、君のやり方に従おう)

12月4日


【ジルへ】


 最期の一文で俺の気持ちをどん底に落とすのをやめてくれ。

 ……まあ日記を読んだあと、側にいた君を問いただして「キスよりぎゅっとされたい気分だった」って直に言って貰ったから結果オーライだが。


 とりあえず次のデートでは海に行こう。

 あの曲を流して、浜辺で二人で踊ろう。


 そして君の耳元で「愛してる」ってもう一度――いや何度も言わせて欲しい。

 あと叶うなら、君からも同じ言葉を返して欲しい。

 ……なんて、あえて文字にするとやっぱり気恥ずかしいけど、それもまた良い想い出になる気がするから、頑張って書いてみた。だから君も、少しずつで良いから甘い言葉を沢山書いてくれると嬉しい。


 それじゃあまたな。


【レオより】


 追伸

 レインからキャシーの好きなものを聞かれたんだけど、なんて答えれば良い?








第7宇宙歴124年

12月5日


【レオへ】


 今日も、レオが大好きです。


 キャシーが好きなものは、昔はウェイン中佐だったけど、今はレイン中佐だと言っていました。

 あの銀色の髪と素敵な灰色の目がとても好きだそうです。

 確かにあの髪は、キラキラしていてなんかいいとおもいます。


 あと甘い言葉は具体的にどのようなものですか? ケーキなど糖度が高い食べ物の描写などですか?


 よくわからないので、教えてくれると嬉しいです。



【ジルより】






第7宇宙歴124年

12月6日


【ジルへ】


 甘い言葉については、あとで君に口でレクチャーするよ。文字で綴るより、その方がムードもでるし。


 それより俺は少し怒っている。……というのは冗談で、可能ならひとつお願いがある。

 日記では、できるだけ俺以外の男を褒めるようなことを書かないでほしい。

(自分の心の狭さに我ながら呆れるが、言わずにはいられなかった)

 他意はないとわかっていても、君の口からあいつの褒め言葉が出るだけで十代のガキみたいに嫉妬するんだ。

 もちろん、もう少し大人になれるように俺も努力する。でもしばらくは、俺の心が平穏でいられるように、ジルの「なんかいい」って言葉は俺に独占させてくれ。

 

 ちなみに俺は、君の髪が好きだよ。

 明日からまた一緒に暮らせるし、そうしたら毎日君の髪にキスさせて欲しい。

 ずっとそうしたくて堪らなかったし、機械化していた手にようやく人の感覚が戻ってきたんだ。

 だから思う存分君に触って、撫でて、温もりを感じさせて欲しい。


 それと来週の日曜日、時間が出来たからこの前言っていたデートに行こう。

 詳細は明日、君が家にきたら話そう。

 まあ同棲再開の初日だし、荷物の整理で(あと他にもしたいことが沢山あるから)それどころじゃなくなるかもしれないけどな。


 あとそうだ、ちょっと恥ずかしいけど、キャットからこれを書くのが交換日記の醍醐味だっていわれから最後の一言を少し変えてみるよ。


 それじゃあ、またな。

 君と暮らせるのを、心の底から楽しみにしてる。


【レオより愛を込めて――】








第7宇宙歴124年

12月8日

流星

(昨日はレオとキスしたり色々するのに夢中になって、日記を書くのを忘れました。ごめんなさい)



【レオへ】


 心が狭いレオが大好きです。なので別に、呆れなくて良いと思います。


 私もレオに髪を触られるのが好きです。あと触るのも好きです。

 触ったりキスしたくなるのはレオの髪だけです。


 だから今日も、いっぱい触らせて下さい。

 髪だけじゃなくて、色々なところにも触りたいです。


 あと前に一緒に暮らしてた時みたいに、レオが料理をするところや家具を作るところを見たいです。

 二人で「なんかいいね」って言いながら、休日を過ごしたいです。


 他にも色々したいことがありすぎるので、それは今日の日記を書いた後レオに直接言いに行きます。(全部書いたらページが足りなくなってしまうし、今すぐレオの所に走って行きたくなるから書くのはやめました)


 だからこれから、寝室で漫画を読んでいるレオの所に行こうと思います。

 そして隣に寝っ転がって、ぎゅってしてくれるのを待とうと思います。


 漫画、すぐ読み終わると嬉しいです。





 追伸(これ、一度使ってみたかったので使います)


 今日部屋の掃除をしていたら、ベッドの下から高そうな箱に入った指輪が出てきました。それを、うっかり掃除機で吸い込んでしまいました。

 そして掃除機が壊れました。ごめんなさい。


 でも、どうして指輪をあんな所に隠していたのですか?

 くっつきながら、それも教えてくれると嬉しいです。


 あと私も、こう書かせて下さい。


【ジルより愛を込めて――】






アンドロイドは恋を記録する【END】

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アンドロイドは恋を記録する 28号(八巻にのは) @28gogo

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