13:記憶の変化

データ制作プロセスにエラー多数/ 日時不明/ 天候不明



 私は今日も、レオの夢を見る。


 でも再生出来る記憶は、もうほとんどなくなってしまった。

 せっかくまとめた日誌も、アクセスする事が出来なくなってしまった。

 唯一見られるのは、キスをする夢だけとなり、終わりの時が近づいているのを感じる。


 少し寂しかったけれど、キスの記憶を忘れる前に壊れるのは幸せなのかもしれない。

 レオのことを完全に思い出せなくなったら、きっと壊れることよりも辛い。


 だからキスの記憶だけは消えないで欲しいと願いながら、私はもう一度キスの記憶を再生させた。




――しかし、今回は何かが変だった。


 記憶の中のレオは優しく微笑み、キスを三回してくれる。

 なのに1回半で急に彼はキスをやめてしまった。

 その上突然「一体いつまで寝ている気だ!」と肩を掴まれ身体をガクガク揺さぶられた。


「寝てるんじゃなくて壊れたんです」


 そう言ってキスをしたら記憶は元に戻ったが、なんだか心がわざわざした。


 だからもう一度、私は同じ記憶を再生させた。

 するとやっぱり、何かが変だった。


 もうキスの記憶しか残っていなかったはずなのに、レオはキスをしてくれなかったのだ。


 代わりにレオは私の手を引いて、どこかへ連れて行こうとした。

 でも記憶と違う事が起きるのが怖くて、私は思わず手を離してしまった。


 そうするとまた、いつものキスしてくれるレオに戻った。

 ほっとしながらも、あのまま手を引かれていたらどうなっていたのかと少し思う。

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