07:夏の終わりに
第7宇宙歴124年/ 9月1日/ 快晴
この夏、私は生まれて初めて「夏休み」と言う物を過ごした。
本当は去年も過ごしたそうだが、私には夏の半ばからの記憶がないので初めてのようなものである。
夏休みを過ごすキャシーに仕事でついていた形なので厳密には「休み」ではないが、テロなどに巻き込まれることもなかったし、ほとんど遊んでいたので仕事をしている感覚はなかった。
キャシーは沢山遊んで、キャンプに行って、旅行にも行った。
その全てに同行し、私も水着も着たり、登山をしたりした。
ダンスも練習して、私はツイストダンスとボンオドリというダンスを踊れるようになった。
そしてその間中、私はウェイン中佐がくれたハム二郎三世のぬいぐるみを持ち歩いた。
ウェイン中佐がいなくなってからとても寂しかったけど、ぬいぐるみをぎゅっとしているときは寂しいのが少しだけ減る。だからハム二郎三世とは、いつも一緒だった。
それをおかしいという人もいたけれど、キャシーは「いいね」と言ってくれたのでどこへ行くにも連れて行った。
あと他にも……この夏は色々と想い出を作った。
どれも楽しかったから記憶もしたはずなのに、それらを思い出そうとすると何故だか頭がぼんやりしてしまう。
ぼんやりしているのは元々だとキャシーやミカエルからは言われたが、8月以降は特に酷い気がした。
何かを思い出そうとしないときでも、気がついたらぼんやりしてしまうのだ。
おかげでいろいろな物を壊したりなくしたりしてしまった。
去年の今頃もこうなったのだろうかと考えたが、去年の記憶が私には無い。
そこに何か原因がある気がしたが、去年の記憶を思い出す方法が私にはわからなかった。
だからしかたなく、私は仕事以外の時間はずっと、ハム二郎三世のぬいぐるみを抱いてぼんやりしている。
何かを壊したりなくさないように、ただじっと、ぼんやりしている。
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