第4話 神様がいたら、ウケる~阿里沙~
もし神様がいたら、ウケる。
待ち合わせ場所に向かいながら
一つだけ願いが叶えられるならばなにがいいだろう、と。
テーマパークを貸し切りにして遊ぶのもいい。
それとも南の島か?
いや、もっと残るものの方がいいかもしれない。
だったら家とか車とか?
欲望のままに想像を膨らませていたら、ふとつるんで遊んでいた仲間に男からマンションを買ってもらったという子がいたことを思い出した。
あれは確かに『ちぃ』、いや『さぁぽん』だったかもしれない。
プレゼントされたマンションは港区にあるらしく、「あんま広くないからガッカリ」とか言っていたが自慢げに小鼻を膨らましているのを阿里沙は見逃さなかった。
「おやじにマンション買ってもらうとか愛人かよ」
「そんなもの買い与えるなんてヤバいやつなんじゃね?」
その子が帰った後、みんなで笑った。
でもその笑い声はどこかスベっていた。
せっかく願いが叶うのに遊び系はもったいないし、かといって車やマンションとかはダサい気もする。
なにを願うか考えているうちに阿里沙は待ち合わせ場所付近まで来てしまった。
物陰に隠れ、他のメンバーを確認する。
「へえ。結構たくさん来てんじゃん……」
背が高くてまあまあなイケメンがいたが、表情が暗い。
その近くにはやけにそわそわしている麦わら帽子を被った女の子がいた。
少し年上の男性もいた。
背が低く、ずんぐりとした体型で目が細い。
こちらは妙に笑顔を振り撒いているのだが、醸し出している雰囲気がいかにも陰キャだ。
その陰キャに話しかけられているのはスーツを着た若いサラリーマン風の男性。
整った顔立ちは阿里沙の好みのタイプだが、細い眼鏡と切れ長の目が少し冷たそうな印象を受ける。
「んー……なんか絡みづらそう……」
ややこしそうな雰囲気のメンバーに阿里沙は怯む。
なにせこれから二泊三日一緒に旅をしなくてはならないのだ。
いくら『願いごと』を叶えてもらえるとはいえ、こんなメンバーでは息が詰まってしまいそうだ。
もう少しノリのよさそうな人がいないと会話も弾まない。
このまま帰ってしまおうかとも思ったが、ここまで来て参加しないのはもったいないと思い直す。
迷ったらやってみる。それが大好きだった祖母が阿里沙に遺してくれた言葉のひとつだ。
意を決して歩み寄る。
「ねぇ、ここが『かみさま』との待ち合わせ場所?」
敢えて軽いノリで声をかけながら近付くと、集まっていた人々の視線が一斉に阿里沙に集まった。
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