第6話 神様の化けの皮を剥ぐ~翔~

 神様とやらの化けの皮を剥がしてやる。


 浅海あさみしょうはそんな思いを抱き、夏休みの暇潰し程度の感覚で旅に参加することを決めた。


 神様なんているはずがないのだから、それを名乗るものはニセモノだ。

 どんな理由でそんなふざけた真似をしているのか暴いてやりたかった。

 参加動機はそれだけである。

『願いごと』を叶えるなんてはじめから信用していない。


 高校生である翔は参加に親の承諾書がいると言われたが、そんなものは自分で書いて偽造した。

「『願いごと』をひとつだけ叶えてもらえるから二泊三日の旅行に行ってもいいか?」と訊いたところで、母からは反対されるのは目に見えている。

 だから学習塾の夏期講習だと嘘をついた。

 騙した罪悪感などもちろんない。

 わずかな時間だがこの母親の顔を見なくて済むと思うと清々する思いだった。


「まあ、詐欺とか誘拐の心配はなさそうだな」


 オペラグラスを覗きながら翔が独り言ちる。

 待ち合わせ場所には既に自分以外の参加者五人が集まっていた。

 会話もなければ纏りのない集まりは、どう見てもこれから犯罪を犯そうというグループのメンバーには見えない。


 自分と同じく『かみさま』の誘いを受けてやって来ただけだろう。

 それにしてもあんな怪しげな誘いにこれだけの人が応じるというのは意外だった。


「そろそろ行くか」


 腰を上げようとしたとき、オペラグラスの先に気になる人影が写る。

 レース付きの襟と胸元の細い紐のリボンがついたシャツを着た髪の長い女性だった。

 集合場所から少し離れた場所でなにやら熱心にメモを確認していた。


 参加者は自分を含めて六人と事前に告げられている。


 まさか招かれざる七人目の参加者だろうか?


 ミステリー小説じみたことを想像し、笑って打ち消す。

 別に近くにいるからといって参加者とは限らない。

 恐らく無関係の他人だろう。


 既に集合時間を過ぎて人を待たせているというのにも関わらず、翔はゆったりとした足取りで集合場所へと向かっていった。


「さあ、ゲームの始まりだ」


 芝居じみた独り言を呟き、翔はニヤリと笑った。


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