第19話 能力
「おい、リドラ起きろ!!起きろって言ってんだよ聞こえてねえのか!!お前の耳は何のためについてるんだよ!!」
「うーん、なんだよ……まだ暗いじゃんかよ……」
「馬鹿野郎!!時間がねえんだから早起きしなきゃ作戦会議できねえって言ったじゃねえかよ!!全く……何で俺がお前のこと起こしてやんなきゃいけねえんだよ……」
僕だって竜人になんか毎朝起こされたくない……リオンだったときはレイラに、レイラだったときはカンナに起こされてた毎日が恋しい。今思えば本当に……
「今日はこの監獄にいる念力使いに協力してもらうわけだ。念力を使えば看守の鍵を奪うことができるからな。で、どんなやつなんだその念力使いは……」
「それがさあ、俺のアイズは顔みたいな細かいとこまでは正確に把握できないんだ」
ちなみにこれはレイラだったときと同じだ。
「は?なんだよそれ!!それじゃあ誰が能力持ってるかわかんねえじゃねえかよ!!」
「でも、どこにいるかはちゃんとわかってるから。たしか一番奥にあって、海が近くにあるところで……」
僕は念力使いがいると思われる場所をアイズを使いながら一から十まで説明してなんとか大体の位置を特定することが出来た。
「第2牢獄塔Bー3区にいるってことまでは分かったがBー3区には牢屋が大体十個あるからそこから更に絞り込まないと……」
「奥の方ににいるのはわかってるんだけどなあ……?」
「Bー3区に誰がいるかは把握してるけど、どの牢屋にいるかは分からねえんだよ。だけど幸いここは第2牢獄塔Bー1区。コンタクトをとるのはそこまで難しくはないはずだ。」
「で、どうするんだ一ぴ……一人一人しらみつぶしに能力を聞いて回るのか?」
「まさか……そんなわけないだろ。さすがに怪しまれるし時間もかかる。ここはそうだな……少し危険だが俺の能力を使うか。」
*
今日も今日とて労働を終わらせそして昼休みの時間……
「今日はドラネオの能力を使って能力者捜すんだったよな?」
「ああ、そうだな。」
「で、どんな能力なんだ?お前の能力……?」
「俺の能力は……まあ簡単に言えば相手の能力をコピーする能力だ」
「コピー?」
「まず能力をコピーしたい相手のDNAが付着しているもの……できれば血液を採取する。それをこの俺が能力で作ったカプセルに入れて飲み込む。そうすることで能力をコピーできるって訳だ。」
なるほどな、そのカプセルを使ってどいつが念力使いかを捜し当てようってわけか。
「で、問題なのはどうやってDNAを採取するかなんだよなあ、わざわざ血液くださいって頼むわけにもいかねえし……」
「……血液って少量でもいいのか?」
「まあ、一滴あれば足りるかな」
「だったら俺に考えがある」
ええと、刃物はないから何か代わりになるものはないか……この際爪でもいいか。僕は牙を使い自分の爪をかみ切る。
「おいおい何やってんだよお前。突然爪なんかかんだりして」
「いいから見てろって。」
これを爪を能力の糸にくくりつけて……これで準備は完了だ。後はあいつに気づかれないよう慎重に……
「………痛って!!なんだ一体!?」
糸にくくりつけた爪が歩いていた竜人の膝を傷つけ爪に竜人の血をつける。よしこれで血液を回収できた。やはりこの糸の能力は便利だ。相手を拘束するだけじゃなく不意打ちやこういう隠密行動にも効果的だ。
「ほらこれでいいんだろ。」
「……糸の能力か……」
「どうした?」
「いや、その……糸の能力にはいい思い出がないんだよ俺。」
「…………!!」
ああ……なるほどそういうことか。
「とにかく、この調子で他の奴らからもどんどん血液を採取していこうぜ!!」
「ああそうだな……」
そして、その後も何人かからか血液を採取し労働時間を迎えた。そしてその夜……
「ふう……結構集まったなあ。今日はこれぐらい集まれば十分だぜ!!早速一個づつ調べていこうぜ!!まずはこのカプセルと……そうだ、お前も手伝え」
「手伝えって……何すればいいんだよ?」
「このカプセルをお前にも飲んでもらって能力の有無を確かめてほしい」
「えっ、俺が飲んでも能力をコピーすることができるのか?」
「まあな。」
「お前の能力ほんとにすげえな……」
「だけど、もちろん欠点だってある。まず、コピーした能力が使えるのは10分間だけということ。」
思ってたより短いな……まあ、10分使えれば十分と考えるべきか……
「それと、飲んで10分たって一度能力が解除されないと次の能力のカプセルを飲むことができない、飲んだら大変なことになる」
つまり、二個以上カプセルを飲んで能力を二つ以上増やすことはできないってわけか……大変なことって一体なんなんだ?
「だから、お前の協力してくれればだいぶ時短になる」
「ああ、そういうことなら任せてくれ」
試しにドラネオに渡されたカプセルを一つ飲み込んでみる。特に変化はなさそう……ん?何だろう、なんか変な感じがする。
「どうだ、使えそうか?」
「うん、多分……うー、はっ!!」
ん、何だろう?なんか鼻がむずがゆくなってきた目から涙も止まら……
「は、は、はっくしょん!!はーっくしょん!!なんだ、これ……」
「おいおい、これってもしかして……へっくしょん!!おい早く能力を止めろ!!」
「そんなこといわ、言われても……へっくしょん!!」
「いいから気合いで止めろ気合いで!!」
その後、僕は気合いでなんとか能力を解除することができた。
「はあ、何だった今の……」
「多分、花粉をばらまく能力だったんだろうな。」
「……とにかく!!こういう事故が起こることも多いから注意しろよ!!」
その後も監獄にいる竜人たちから同じ方法で血液を奪い、カプセルを飲み続けたが、念力使いの能力を引き当てることができずその日は終わった。
*
その次の日も更に次の日も僕らはBー3区の竜人を見つけては血液の採取を繰り返し行った。念力使い以外にも脱獄に有用そうな能力もさがしたがこれと言って良さそうな能力者はいなかった。そして、一ヶ月後……
「これで、最後か……まさか全員調べる羽目になるとは思わなかったな。」
「なんか……俺少し不安になってきたな。」
「もし、こいつも違ってたら……その時は、わかってるだろうな……」
「大丈夫だって!!いることは間違いないんだから!!」
「お前が見たって言ってるだけだけどな。」
「……とにかく、そのカプセル早く飲んでみろって!!」
ドラネオはカプセルを飲む。なんか緊張してきた。いやいや大丈夫だ。僕は間違えなく見たんだこの目で……パンが宙を浮き牢屋の中に入っていく様子を……だからこの最後の一個が当たりのはずだ。そのはずなんだ。
「……」
「ど、どうだ。」
「……」
「な、なんとか言えっt……う、うわっ!!な、なんだ?」
突然僕の体が空中に浮かぶ。これは、もしかしてドラネオが……?ということは!?
「やった……ついに見つけたぞ!!」
やはり最後の一匹が念力の能力を持つ竜人のようだ。俺は安心し『ふう……』と一息つく。
「よ、よかったあ……び、びびらせんじゃねえよ。」
「はっはっ!!てめえの焦り顔なかなか傑作だったぞ!!」
こ、こいつは……
「これで、脱獄に一歩近づくことができた。これもお前のアイズと俺の能力があってこそだ。……もしかしたら俺ら結構いいコンビかもしれねえな。」
「な、なんだよ急に気持ち悪いこというなよ……」
「まあまあ、そう恥ずかしがるなっての!」
「……」
そう……本当に気持ち悪い。この言葉に嘘偽りはない。それは、あいつも俺の正体を知ればきっとそう思わざるを得ないだろうな。
「それでこの能力を持ってた竜人は……」
「ええっと……番号678たしかヒュウって呼ばれてたかな?」
ヒュウ、それが脱獄に必要なピースを持った竜人の名。こいつの協力があればきっと……きっとここから脱獄できる……
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