第11話 そして始まる戦い
「その案は承認できかねん!!」
「まあまあ落ち着いてくださいよ学長殿。」
「落ち着けだと!!ふざけているのか貴様!!生徒を戦争に参加させるなど、あっていいはずがない!!」
「何も全員を参加させようといってるわけではないんですよ、あなたの学園から優秀なものを何人か……」
「人数の問題ではない!!まだ、未来のある少女達をあんな……」
「……ですが、これはもう国で決まったことです。あなたは承認するしかないのですよ」
「この悪魔どもめ……」
「私だってこんなことしたくないですよ……でもそれだけ今、戦争はそれだけ魔法使いが足りない状況なんです。どうか理解してください」
「ぐっ、ぐぐぐ……」
*
あの事件から一年近く経ち、僕レイラは二年生になった。そして今、僕はとても厄介な状況に陥っていた。
「お願いします!レイラさん!」
「ごめんなさい……あなたの気持ちには答えられない。」
「そ、そんな……!!」
僕は彼女からの願いを断る。このお願いを聞き入れるわけにはいかない。だって……
「だって私達……女の子同士じゃない?その……付き合うなんてねえ……」
そう、僕、いやレイラはは今……学園の後輩(女子)から愛の告白をされていた……
「で、でも、本気なんです。そりゃ女の子が女の子に恋するなんておかしいのはわかってます。でも、それでも私は先輩のことが……」
「そういうことじゃないんだ、ただ……そのなんというか」
「……わかりました。大切なお時間を使わせてしまってすいませんでした」
そのまま涙目で走り去ってしまった。今月でもう10人目だ。男だったときは女子からの告白とは無縁の人生だったのに何でよりにもよって女になってからモテ期が……
「よお、レイラせ・ん・ぱ・い。二年生になっても相変わらず人気者だねーー」
「カンナ、リア見てたの!?……」
「レイラはほんとに誰からも好かれますよね。正直うらやましいです。」
「いやいや、毎回告白を断って泣かれる身にもなってよ!」
「うわあ、女の子泣かせるとか最低だなレイラ……」
「あのね……」
まさか、女になってこんな台詞を言われるとはおもわなかった。
「なあせっかく三人そろったことだし街に行って飯でも食いに行かない?」
「……カンナ今日は外出禁止よ、先生言ってたじゃん。」
「ええまたかよ……。」
「なんかここの近くで機竜との防衛戦をしてるらしいですよ。」
「ええそうなのか……はあ、なんかここ最近物騒になっちまったな……。」
私達が二年生になってからというもの戦争の状況はますます悪化しているとこの学園でもよく耳にする。その影響もあってろくに外出することが出来ない。
「そういえば、今日の夜に先生が訓練場で話があるっていってましたけど一体なんでしょうね?」
「まあ、こんな状況だし明るい話じゃなさそうだよね……」
そして、僕達は図書室にこもり時間を潰しそのまま夜を迎えた。
*
「……本当に生徒全員が集まってるみたいだな。」
カンナが言っている通り生徒達は訓練場に集められていた。
「……」
「……どうしたリア?」
「あの男の人……学校の人じゃないですよね?」
「……本当だ。でもあの格好どこかで……」
僕らがそんな話をしているとその男の人は口を開く。
「皆さん、突然呼び出してすまない、私は王国魔道士のエレアラだ。今日、集まってもらったのは国からの大切な知らせを伝えるためだ」
王国魔道士からの大切な知らせ?一体何のことだろうか。
「知っているだろうが、今、国は竜人との戦争において深刻な人手不足が続いている。そのため、学生の中から学生隊として戦争に参加させることとなった!」
「……!!」
エレアラという人の発言を聞いて周りはざわつき始める。
「戦争に参加って嘘でしょ……」
「私たちまだ学生なのに……」
そのざわつきを遮るようにエレアラは話を続ける。
「ごほん!!もちろん、強制はしたくない、もし志願するものがいるのならば1週間後に申し出てほしい、もちろん参加してくれれば相応の報酬を出すつもりだ、勇気ある戦士が現れることを期待しているぞ!!」
王国魔道士はそういうとそのままその場を去って行った。
「……な、なんかすごいことになりましたね。」
「ほんとだよな、全く、誰が参加すんだよあんなの、まあ報酬ってのはちょっと気になるけど。」
「もう、カンナったら……レイラはどう思いますか?」
「……」
「レイラ?」
「あっ、ごめん……」
「大丈夫ですか?今日はもう早く休んだ方がいいですよ。」
「う、うんそうするよ。」
「……」
そして、僕らは自分の部屋に戻った。
「じゃあ、もう電気消すけどいい?」
「うん、今日はもう寝るよ。明日はいつもより早いからね。」
「そっか、じゃあお休み……」
「うん、お休み……」
……それにしてもまさかこんなチャンスが訪れるなんて、本来戦争に魔法使いとして参加するためには魔法学校を卒業する必要がある。僕が卒業するためにはあと二年かかる。だから、これは近道なのだ。二年も待っていられない。僕は一刻も早く竜人どもを狩り尽くしてレイラの夢を叶えなければならない。
「なあ、レイラ……」
「何、カンナ?」
「まさかとは思うけど戦争に参加するつもりじゃないだろうな。」
「……!!」
僕はカンナの言葉を聞いて少しビクッとなる。カンナは普段は少しアホっぽい感じだが、意外と鋭いところもあるのだ。
「えっ、な、なによ急に……そ、そんなわけないじゃんやだなーもう!」
僕は何とかカンナをごまかそうとしたがかえって怪しい感じになってしまった。
「……いやなんとなくそんな気がしてさ、ごめん、今、言ったことは忘れてくれ。」
「……うん、分かった。」
僕はカンナの言葉に少し引っかかりながらもそのままゆっくりと目を閉じ……静かに眠った。
*
そして次の日、僕は借りた本を返すために図書室に向かった。
「……あれ、リアとカンナ?こんなところで珍しいな……」
その途中の廊下でリアとカンナが話をしているのが見えた。
「やっぱりそうなんですね……」
「リアも気づいてたのか。」
「はい、……レイラはもともとこの戦争を終わらせたいって夢があってこの学校に入ったんですもんね。それに故郷のこともありますし……きっと戦争にすぐにでも参加したいってそう思っていても不思議じゃないですもんね。」
……どうやら、僕が学生隊に志願しようとしているのがリアにもばれてしまっているみたいだ。
「なあ、私たちどうすればいいんだろうな?応援すべきなのか?それとも反対するべきなのか?」
「……私個人としては反対です、レイラに危険な目に遭ってほしくないですもん。でも、それってただの私のわがままなんじゃないかとも思うんです。」
「それも……そうなんだよな……」
「ええ……」
「……」
「……」
「はあ、難しいよな……」
「そうですね……」
「でもやっぱり心配だよな……」
「私もです。」
僕は彼女達の話を聞いて思わず図書館から移動する。
彼女たちは僕を……いやレイラを心配してくれている。いい友達を持ったと感動するとともに後悔もした。もし、僕らが最初から友達じゃなかったら二人とも思い悩む必要だってなかったのだ。友達なんて作るべきじゃなかったのかなあ……
そんなことを考えるうちに時間はただただ過ぎていき、そして……運命の日がやってくる。
*
僕は申し込みをしている教員室にむかった。しばらく、この学校ともお別れだろうな。そして、リアとカンナとも……
「レイラ!!」
名前を呼ばれて僕は振り向く。
「ふ、二人ともどうしてここに!?」
そこにいたのはリアとカンナだった。
「い、いやー、いつか私たちも戦争に行かされるわけだしさ。こういうことは早めに経験した方がいいかなって思って、な!リア」
「そ、そうなんですよ……ははは……」
全くこの二人は……本当に……嘘が下手くそだな。
「……別にいいよ、私に気をつかわなくたって。」
「……え?なんのこと?」
「聞いてたんだ。この前図書室で二人の会話……」
僕は正直にカンナとリアの会話を盗み聞きしたことを白状した。
「そっか聞かれちゃってたか……ははは……」
「……」
「……」
「……」
数秒間の沈黙が続いた後カンナが口を開いた。
「……なあ、レイラなんでいつもさ一人で抱え込んじまうんだよ……そうやってずっと……ずっと一人で抱え込み続けたらきっと……きっと……だめになっちまうぞ。」
「カンナの言うとおりですよ……私も自分の呪いのことずっと独りで抱え込んでたから……あのままずっと独りで抱え込み続けてたらきっと私はきっと……」
「……カンナ、リア……」
「だからさ……レイラ。少しは素直になれよ!!手を貸してほしいって言えよ!!さもないと私達はずっと、ずっとレイラにしつこくつきまとうからな!!」
……ありがとう。カンナ、リア。でもこれは僕個人の杉浦終夜の問題なんだ。もしこの二人の力を借りたら……僕の無限転生に巻き込んでしまうかもしれない。僕は、僕はもうあんな思いは二度としたくないんだ……!!
「あ、あのね……その……」
「……どうした?レイラ?」
「……」
「……?」
僕は二人の申し入れを断るために……そのために僕は口を……開こうとした。いやしたはずだったんだ……
「……手を貸して、リア、カンナ……」
……断れなかった。
「……どうやら、つきまとう必要は無くなったみたいだな。」
「……ですね。」
「本当に、本当に……ごめんね……。」
僕は怖い、二人とはなればなれになるのが、もしかしたら1年、いやそれ以上の時間かえってこれないかもしれない、もう僕は一人になりたくない。……僕は、僕は、わがままだ。
「気にするなよ。私たちの仲だろ。」
「そうですよレイラ、私たちは友達じゃないですか。そう言ったのは他でもないレイラあなたなんですよ。」
「う、うう……」
「レイラ……涙出てますよ。」
「なんだよ、そんなにうれしかったのかよ……ほらハンカチ。」
僕はカンナのハンカチを受け取りそのハンカチで自分の情けない悔し涙をそっと拭った……
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