第12話 暴走
ここはとある軍の宿舎、ここに様々な学校の生徒達が学生隊として戦争に参加するために集まっている。
「なんか思ってたよりも人が集まってるね。」
「こんな時代ですもん、きっと皆並々ならない事情があるのですよ……」
「……なあ誰か来たみたいだぞ大国魔道士の人か?なんかただ者じゃない雰囲気けど」
カンナの言うと王国魔道士らしき人がやってきたたしかにただ者ではなさそうだ。付き添いには前に学校に来ていたエレ……なんとかさんもいる。
「よく集まってくれた勇敢な戦士達よ私は大国魔道第三中隊の隊長ギルだ。今日私がこうして出向いたのはほかでもない。この戦争において私の経験に基づく大切な話をするためだ。まず一つめは……」
*
「……以上だ。」
……話は30分以上続いた。はっきり言ってくそ長い、しかも内容も根性論ばかりの退屈なものだった。まるで校長先生の話を聞いているような……いや、聖魔道女学園の学長は話を3分程度に抑えていて内容もそこそこおもしろかった……なんか学園が恋しくなってきた。
「ええ……この後は王国から貴様らに渡すべきものがある。これを受け取ったその瞬間、貴様らは戦士だ。」
僕らはその「渡すべきもの」を受け取るために列に並ぶ。
「学生隊隊員番号056レイラ受け取れ。」
「……」
王国からのプレゼント。それは学生隊の制服だった。ギル隊長の言うとおりこれを受け取ってしまったらもう後戻りは出来ないだろう。
「なんか、これ渡されるとなんか……私たちほんとに戦争に参加するんだなってかんじするよね」
「どうしたんですか、緊張するなんてカンナらしくもない」
「私だって緊張ぐらいはするよ。まあレイラほどじゃないけど。」
「べ、別にきっ、緊張なんてしてないから……」
「ははは、相変わらずだな」
「う、うっさい!!」
「ふふふ……」
「皆聞け、訓練は明日早朝から行われる。そのために今日は早く休むようにそれでは解散!!」
*
僕達は風呂を済ました後、各自自分の部屋に戻っていった。部屋は僕とカンナそしてリアの三人部屋になっていた。
「そういえばリア、なんか荷物に重そうなものあったけど何が入ってるの?」
「ふふふ、それはですね、私の秘密兵器です。」
「なんだよ秘密兵器って?」
「それは内緒ですよじゃなきゃ秘密兵器にならないですよ。」
リアの秘密兵器も気になるが時刻はも午後十時をまわろうとしている。そろそろ就寝時間だ。
「もう寝る時間だし早く寝よ、じゃないと明日起きられないよ。」
「よく言うよ一番起きられないのはレイラでしょ。毎日私が起こさなきゃいつも遅刻ギリギリじゃん」
「いや、それはその……とにかくおやすみなさい!!」
「はいはいおやすみおやすみ……」
「おやすみなさあい。」
*
……ここは、あれ僕は軍の宿舎にいたはずじゃ……どうして僕は村に……あれは?空から何かがやってくる。あれは機竜?そう認識したとたん村は燃え、人は機竜に襲われている。そして目の前に誰か……少年が目の前に立っている。
「……せ」
何を言っているのか聞き取れない。でも聞かなくちゃいけない、なぜだかわからないけど、そうしなければいけない気がする。
「……ろせ」
あとちょっと……あとちょっとで聞き取れ……」
「……ころせ!!」
「……!?」
その言葉を聞いた瞬間意識がフェイドアウトする。気がつくと僕は宿舎のベッドにいた。
「ゆ、夢か……」
……久々に見たなこの夢、レイラが死んだ日からこの夢を毎日のように見ていた。最近はあまり見なくなったのに……
「ん、レイラ起きられたのか珍しいな。いつもは私が起こさなきゃ起きないのに。」
「べ、別にいつもじゃないでしょ」
「二人とも早く準備しなよ、そんなに時間余裕ないよ」
僕達はすぐに準備して集合場所に向かった。そこにはすでにギルさんと付き人が待機していた。
「諸君おはよう今日からの訓練はおそらく今までにないぐらいきついものになるだろう、これを乗り越えられないようでは戦争で生き残ることなどできないと思え!!いいな」
「はい!!」
「声が小さい!!もっと大きな声で!!後返事はサーイエッサーだ!!」
こいつめんどくせー!!正直苦手なタイプだ。
「さ……サーイエッサー!!」
この人と一緒にこれから過ごさないといけないと考えるとなんか憂鬱だな……
「では、訓練を始める前に……そこのおまえちょっとこっちこい」
「えっ、お、おれ!?」
ギルは突然、学生の中の一人を呼び出した。
「お、俺になんか用ですか?」
「もっと近くにこい。」
「は、はあ……?」
ギルに言われたとおり学生の一人がギルの法へと近づく。そして……
「一体何の用で……ぐはっ!!」
「……!!」
その光景を見て俺を含めた全ての学生達があっけにとられる。殴ったこの人生徒を殴りやがった。いかれてるのか!?
「て、てめえ何しやが……うっ!!」
……ん?あれ?殴られた人の様子がおかしい、顔や身体つきが変わっていく。
「その程度で俺を欺けるとでも思ってたのか……竜人!!」
殴られた学生は竜人の姿へと変貌した。
「ちっ、なんでばれたんだ……」
「『第六感』超絶的感性を有する俺の能力、この能力を持つ俺をだますことはできない」
「そんなのありかよ……」
「おい、エレアラこいつを捕獲しろ」
「はい!!
拘束魔法を使いエレアラさんは竜人を捕獲した。にしてもこのおっさんこんなにすごい能力持ってたのかよ。やっぱり中隊長なだけあるな。
「ギルさん!!大変です!!」
「どうしたイルス、おまえの持ち場はここじゃないだろ。」
「それどころじゃないんですよ、かなりの数の機竜と竜人がこちらにむかって来てるんです。」
「何だと……貴様あ!!」
「ふん、今更気がついても遅いんだよ、もうじきここにたくさんの同士が……ぐはっ!!」
「このやろう!!拷問でも何でもいいエレアラ!!とにかくこいつから情報を聞き出せ、いいな!!」
「はい!!」
「違う!!サーイエッサーだろうが馬鹿たれ!!」
「サーイエッサー!!」
「学生諸君、こうなったのは我々の責任だ。本当にすまない……。だが、ここに来たと言うからには覚悟はできてるだろうな!!」
「はい!!」
「……ああもういい!!とにかく向かうぞ!!」
ついにこのときがやってきた。竜人どもに復讐するこの時が……ギルさんについていくとそこには見たこと無い数の機竜と竜人が何匹かいる。すでに数人の魔道士が戦闘しているが若干押され気味に見える。
「前線は我々に任せて学生諸君は後方からの援護を頼む」
さすがに前線は任せてくれないか……
「ではいくぞ!!『ジェット』!!」
ギルは跳躍魔法を使い竜人達の方へ向かって一直線に飛んでいく。
「おい、誰か来るぞ!!」
「あいつはギルだ!!気をつけろ、強敵だぞ!!」
ギルさんが参戦したことで戦線はだいぶよくなった。だが、竜人も次々と増援を呼んでくる。
「ぐはっ!!」
前線にいる人たちが次々死んでいく。次第に学生達は戦争の空気にのまれていく。あるものは動きを止め、あるものははきそうになっていた。だが、撤退する人は誰一人いなかった。皆覚悟を決めて来ているのだ。
「まずい!!機竜が三体そっちに向かったぞ!!」
機竜が向かってくると言われ後方がざわつき始める。そして、三匹とも僕の方へ向かってきた。僕は少し動揺してしまう。いままで機竜にはろくな目に遭っていないからだ。そして反射的に……
「サンダー!」
魔法をくり出す。その瞬間飛んでいた機竜は地に落ちていった。さらに、二体の機竜がこちらに向かってくる。それも魔法で難なくかたづけた。
……そうだ。僕はレイラなんだ。機竜を倒すなんてこと朝飯前だ。なのに、何故後方で支援何てしているんだ。馬鹿馬鹿しい。
「ナイスだぞ!!レイラ!!……レイラ?」
僕はそのまま前線に突っ込んでいった。
「レイラ何してるんですか!!戻ってください!!」
機竜が次から次へと襲いかかってくる。だが、僕にはこんなやつ敵じゃない。攻撃するたびに機竜がゴミくずのように崩れ落ちていく。
「おいあいつ、あの数の機竜に一歩もひけをとらないぞ。」
「何者なんだあの女の子……」
あれだけ僕を悩まされてきた機竜がこうも簡単に……
「は、ははは……」
ああ、なんだろう……なんかすごく気分がいいぞ……
*
その後も機竜や竜人が僕を狙って襲い続けた。十、いや二十……何十体もの機竜が僕を倒そうとしてくる。だが……そんなものは何の問題にもならない。なぜなら、僕はレイラだから、聖魔道女学園No1の実力を有し王国で随一の魔法使いだったアラン後を引き継ぐレイラだからだ!!
「サンダー、サンダー、サンダああああ!!!」
僕がひとたび魔法を放つたびに機竜はまるで前進がウエハースで出来ているのかと思ってしまうほど粉々に砕けていく。
「す、すごい……」
「本当に同じ学生隊なのかよ……」
ああ、なんて、何て気分がいいんだ。村を破壊し僕を絶望に陥れた機竜がこうも簡単に……しかも遠くにいる竜人どもの顔!!絶望してやがる!!あのときの僕ととレイラが死んだあの日の俺と同じ顔してやがる!!ああ……ざまあないわ。……どうしようかこのままあいつらを殺してしまうか?命令違反になってしまうけど別にいいよな!だって僕は、俺は……レイラなんだから!!
「……誰か来る。」
そんなことをかんがえていると遠くから竜人がものすごい速さでこちらにやって来た。その速度からただの竜人でないことが分かる。
「あの人間がアランの娘なのか……」
「そ、そうですブルドラ様……」
「ふん、ならば好都合だ。俺の親父を殺したアラン……その娘をこの手で葬れる……なんて光栄なことだ!!」
あのドラネアと同じ魔力をおびた剣をしかも二つも持っている。
「ふんぬっ!!」
そして僕に襲いかかってきた。僕はすぐに防御魔法を展開する。
「ぐはっ!!」
だがあまりの衝撃で地面に突き落とされてしまった。竜人は攻撃の手を緩めない。
「アランの娘……その命もらった!!」
防御魔法で展開した盾を何度も攻撃し続けてくる。
「これで、とどめだ!!」
竜人がそう言い剣を振るおうとする。その表情からは鬼気迫る物を感じる。
「キーン!!」
そのときどこからともなく白いカラスのような鳥が飛んできた。そして竜人を攻撃する。
「うお!なんだこのくそ鳥!!どっか行け!!……あれ?力がうまく出ない」
竜人が動揺している。今がチャンスだ!!
「イナズマ!!」
放ったイナズマが竜人に直撃し竜人は死んだ。
「レイラ大丈夫ですか!!」
「おい何勝手なことしてんだよ!!」
リアとカンナがやってくる。さっきの鳥はリアの方に向かっていきリアの肩に止まった。
「リアその鳥は……」
「えっへん、見ましたかこれが私の秘密兵器です!」
リアは誇らしげにそう言うと手をこちらに差し伸べた。
「まあそんなことより早く戻りますよ、怪我してるみたいだし……」
「いやいいこのまま戦う……」
「……え?」
僕の言葉を聞いたとき二人はひどく動揺する。
「な、なに言ってるんだよ、さっきも危なかったくせに!!」
「あれぐらい、私だけでもどうにかなった……それより早く前線に……」
僕は二人の言葉を聞かずそのまま前線に戻ろうとした……
「……い」
「……あ?」
「いい加減にしてください!!」
リアが大声で訴えかけた。いままで聞いたことの無いぐらい大きな声だった。
「一体どうしちゃったんですかレイラ……らしくないですよ……」
その言葉を聞いて僕は何も言えなかった……
*
その後僕は医務室に運ばれた。怪我自体は大したことはなく数日すればすぐに復帰できるとのことだった。ある程度の治療をしてもらった後、僕はギルさんに呼び出された。
「なぜ命令を無視して突っ込んだ……」
「……私はただ、だって……機竜は倒せたじゃないですか、敵の親玉も倒したじゃないですか……」
「馬鹿やろう!!そういうことを聞いているじゃない!!いいか!確かにお前は優秀な魔法使いだ、実力はきっと私以上だろう。だけどな、そんな優秀な魔法使いでもな死ぬとき死ぬんだ!!」
ギルさんはかなり激怒している。
「昔な……撤退命令が出たのにも関わらずそれを無視して突っ込んで死んだやつがいた……おまえの親父さんだ」
……この人、レイラの父さんと知り合いだったのか……
「アランは優秀な魔法使いだった。だが、死んだ。お前も勝手なことをすればきっとアランの……俺の友達のように……だからもう勝手なことするんじゃねえぞ……いいな!!」
ギルさんの説教を受けた後、僕はそのまま自分の部屋に戻っていった。
「あっ、レイラお帰りなさい……」
「……リア、カンナさっきはごめん、あんなこと言って」
「なんだよそんなこと気にするぐらいなら、早く休んでちゃんと怪我治せよ!」
「……うん」
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