第5話 学園生活
「レイラ、起きて……レイラ!レイラ!」
「う、うん、ふあー、もう朝……」
「もう朝……じゃないわよ!はやくしないと朝ご飯の時間に遅れちゃうわよ」
「嘘!もうそんな時間?」
「あんたまさか、また夜遅くまで勉強してたんじゃないでしょうね!気持ちはわかるけど睡眠もちゃんととらなくちゃだめよ」
「あはは……ごめんごめん」
ここは聖魔道女学園の寮だ。レイラとして聖魔道女学園の生徒になった僕はここで毎日寝泊まりをしている。
「で、どうする。先生には私からうまくいっといてあげるけど、もう少し寝る?」
「ううん、大丈夫、カンナに悪いし……、すぐに準備するから。」
この子はカンナ。僕と同じ部屋で寝泊まりしている。カナは明るくやさしい女の子で誰とも打ち解けられる。人と仲良くなるのが苦手な僕でもすぐに仲良くなれてしまった。
「今日の朝ご飯ワッフルだって、やったわね!」
「カナ、本当にワッフル好きだよね」
「そりゃそうよこの世にワッフルが嫌いな人間なんていないもの」
「いやそれは言い過ぎでしょ……」
最初は女子ばかりの学園生活(僕も今は女子なのだが)でとまどっていたはいたが、カンナのナのおかげでだいぶなんとかなっている。
「そのワッフルいただき!」
「あ、カンナひどい、後で食べようと思ってたのに」
「ははは、隙を見せたレイラが悪いのよ……」
カナは大のスイーツ……特にワッフルが大好きで隙あらば僕のものを奪おうとしてくる。
「……あっと、まずいもうすぐ1時間目の授業始まっちゃう!」
「本当だ早くご飯食べないと、1時間目の教科ってたしか……」
「ガラン先生の言語学よ!あの先生の授業に遅刻したらまずいわよ」
僕達は急いでご飯を食べ、1時間目の授業を行う教室まで走っていった。
「ハアハア、ぎりぎりセーフ……」
「ぎりぎりセーフ……じゃないですよ。レイラさん、カンナさん早く準備をしてください、さもないと……」
「す、すいません先生。『あれ』だけは、どうか『あれ』だけは勘弁してください……」
「口じゃなくて手を動かして!!」
「はっ、はいー!!」
僕達は急いで授業の準備を始めた。そしてチャイムがなる前になんとか間に合った。
「では、授業を始めます。教科書は昨日と同じページを開いてください」
「レイラ、昨日のページってどこ?私、昨日授業中寝てたからわかんなくってさ」
「87ページ、アルア語の歴史のとこ」
「サンキュー、レイラ、恩に着るよ!!」
「ほら、そこおしゃべりしない!!」
「ひっ!!」
カンナは慌てて開いた教科書で自分の姿を隠した。
ここで一つ余談なのだがこの世界の言語は日本語ではない。まあ普通に考えれば当然なのだが、異世界転生系の漫画は普通に会話できていたのでその印象に引っ張られて違和感を感じていなかった。
「はあ……ガラン先生厳しいな、大体、アラル語の歴史なんて学んで何の役に立つのよ!!」
「カンナ……そんなこと言ってたらまた先生に叱られちゃうよ」
今のこの会話も日本語で行われたものではない。では何故この世界に来て1年ぐらいの僕がなぜ流ちょうに会話できているのか。察しのいい人はわかるかもしれないがこれも無限転生でリオンやレイラの記憶を引き継いだためである。これがなければ多分詰んでいただろう。
「はあ、やっと終わったよ……次は実技の授業か……」
「実技……」
「どうしたんだよレイラ、あんたの1番の得意分野じゃん」
「まあ、そうなんだけどさあ……」
実技の授業はきらいだ。たしかに一番得意な教科ではある。でもそれは、僕が、杉浦終夜が得意という訳ではない。
僕達は1時間目の授業が終わるとすぐに2時間目の授業を行う訓練場に向かった。
「では2時間目の授業を始める。まずは、爆発魔法「メガバースト」からだ」
「嘘!ただでさえ爆発魔法って難しいのに……いきなり上級魔法って」
「こら!うるさいぞ、カンナ!まあ、難しいのは確かだが……誰か見本を見せてくれる生徒は……レイラできるか?」
「えっ、まあ……できますけど」
「見本、みせてくれるか」
僕は成り行きで爆発魔法の見本を見せることになった。もちろん、「レイラ」ならばこの程度の魔法を使うことなんて朝飯前だ。
「メガ、バースト!!」
訓練場の中央で大きな爆発が起きる。
「うむ、さすがレイラだな」
「やっぱりレイラさんってすごい!難しい爆発魔法でしかも上級魔法をいとも簡単につかえちゃうなんて」
「ほんと、憧れちゃうよねー」
またこれだ……僕はレイラが使えた魔法、能力は全て使える。この学校はオルディアで試験を受けたものだけではなく様々な場所で試験を受けて合格した。つまり、国中のエリートが集まってくるのだ。だが、それでも同学年でレイラほどの魔法使いはいなかった。
「今日も大活躍じゃんレイラ、みんなの注目集めちゃって、うらやましいなあこいつ!!」
「ははは……そうだね」
僕は学年で1番の魔法使いとして有名になった。先生も生徒も僕に注目している。最初は少しいい気分もした。でもこの魔法は能力は全部レイラのものだ。そう考えるとむなしくなった。だって全て偽物の力だから。レイラから奪ったものだから……
それから全ての授業を受け終わり1度自分達の寮の部屋へ戻った
「なんか、最近レイラのファンクラブまでできたらしいよ。」
「えっ、そうなの?」
「うん、詳しいことはわからなんだけどさなんか同じ1年生の人が主催してるらしいよ、ほんとモテモテだねえ。」
「う、うん、そうね……」
「なによー、もっとうれしそうにしなさいよー、あ!そろそろお風呂の時間じゃないか。」
「あっ、私ちょっとやらないといけないことがあるから、お風呂はみんなが出た後で……」
「もうまたそれ……別に女同士なんだから恥ずかしくないでしょ、ほら行くよ!」
僕達は風呂場へ向かった。そう、これが僕にとって最悪な時間「お風呂」だ。
「はー、1日頑張った後のお風呂は最高だよなレイラ」
「……」
「おい何うずくまってんだよ、そんなに裸見せるのが恥ずかしいのか?」
女子達と一緒に女風呂に入るこれは男だったら1度は経験してみたいことの一つだ。本来この状況はそれは、それは喜ばしい状況なのだろう。
「もしかして、恥ずかしい傷跡でもついてるのか、なあちょっと見せてみろよ」
「いやちょっ、ちょっと待って!!」
「冗談だよ冗談、いやごめんて、ほんと。」
状況が状況なんだ。素直に喜んでいいはずがない。むしろ罪悪感でいっぱいになる。本当になんでこんなことになってしまったんだ。最低じゃないか僕は。
「なあ、レイラ……」
「なに?カンナ。」
「私さ、最近レイラのことが心配なんだ……なんていうかさ……ちょっと頑張りすぎって言うかさあ、そりゃ住んでた村のこととか友達が死んじゃったこととか、事情があるのはわかるけど、もう少し……自分に甘くてもいいと思うんだ」
「どうしたのカンナ?らしくないこといって……」
「ほんとに心配なんだよ!今日もなんかほとんど寝てなさそうだったし、それに……」
カンナはいつものひょうひょうとした感じはなく真剣そのものである。本気で僕の……レイラのことを心配してくれているのだろう。
「ご、ごめんカンナ、心配してくれてありがとう、でも私にはどうしても成し遂げなくちゃいけないことがあるの。ただ、これからは少し気を付けるよ……」
「ほんとに……無理しちゃだめだからな!」
僕達は風呂から出た後そのまま自分の部屋に戻った。そろそろ就寝の時間だ。
「はあ、今日も一日あっという間だったなあ……レイラも勉強はほどほどにして早く寝なさいよ」
「わかってるって、じゃあおやすみ。」
「うん、おやすみ。」
しばらくするとカンナはすぐに眠ってしまった。カンナにはああ言ったが、僕はまだ寝るわけにはいかない。レイラの夢を叶えるために、竜人どもに復讐するために……
「……」
でも、カンナの言うことも無視するわけにはいかない。それに徹夜のしすぎでレイラが……この体が死んでしまったら、また悲劇がおきる。今日は勉強もほどほどにしてもう寝よう。そしてまた明日……
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