第7話 事件「前編」

 今日も僕は図書室に向かった。彼女の呪いについてこれといった手がかりは未だに見つかっていない。本当に手がかりなんてあるのだろうか。そんなことも考えてしまう。


「「「ざわざわ……」」」


 向かっている途中、廊下で人が集まっているのを見かけた。何かあったのだろうか?


「なんか二人とも突然倒れたらしいよ」

「医務室の先生呼んだ方がいいんじゃない……」


 どうやら誰かが倒れたらしい。一体何があったのだろう?そんなことを考えていると、医務室の先生達がやってきて倒れている二人を運び出した。そのとき倒れている二人の顔が少し見えた。見覚えのある子だ。間違いないこの前、図書室でリアに絡んできたあの二人だ。


「レイラ、何かあったんですか?」


 リアが私に話しかける。


「ああ、なんかこの前図書室でリアに絡んでいた女の子いたじゃん、その二人が倒れたみたいなの。」

「そうなんですか……」

「それより早く、図書室にいこ!カンナきっと待ってるよ。」

「……それもそうですね。」


 そのまま僕たちは図書室に向かった。


「二人ともなにやってたんだよ待ちくたびれちゃったじゃん」

「待ちくたびれたって……別にそこまで待たしてないでしょ」

「それは私が5分以上待てないことを知ってて言ってるの?」

「そんなことで威張らないないでよ……とにかく今日も頑張ろ!」


 そう言うと僕達はいつものように本を探し出した。図書室には膨大な数の本があり呪いに関するものだけでも何百冊もある。


「あー!!」

「どうしたのカンナ何か見つけたの!」

「これ私が読みたかった本!こんなとこにあったんだ。」

「もう何やってんのよ……」

「いやほんとにこの本のシリーズ面白いんだって」

「いまはそんなことしてる場合じゃないでしょ!」

「まあまあ、レイラ、今日はもう終わりにして好きな本読みましょうよ。たまには息抜きもした方がいいですよ。ただでさえ私のせいで大切なお時間を使わせてしまっていますし……」


そう言うとカンナはいつもと違って落ち着いた感じで


「そんなこと言うなよ、私たちは好きでやってんだからさ……」

「カンナ……」

「でも、今日はこの本を読みたいというか……」

「はあ……まあリアもこう言ってるし今日はもう本を読むことにしましょ」

「やった恩に着るぜ、レイラとリアも読んでみろよ、このシリーズの一巻がちょうど二冊あるからさ」


 カンナに本を渡される。早速読んでみた。本の題名は『病の村』村の人たちが突然原因不明の病で倒れてしまい村の少年達がその原因を探す冒険に出かけるよいうもので読んでみるとなかなかおもしろい。

 

 病といえば……さっきの二人はなぜ倒れていたのだろうか日射病にかかるような暑さではなかったし、なにかの病気なら二人同時に倒れるのは不自然だ。だとすれば一体何が原因で……そんなことを考えている間に夜になりその日は自分の部屋に帰った。そして次の日。


「ねえ昨日も誰か倒れてなかった?」

「何かの病気かしら?」


 また誰か倒れたらしい。今度は知らない子だった。だが一緒にいたリアは少し驚いた様子だった。


「知り合い?」

「……まあそんなとこです」


 そしてまた次の日……


「ねえ、またよ、なんだか気味悪くない?」

「ほんとに何が起きてるのかしら……」


 また女子生徒の誰かが倒れた。これは何かおかしい、なにかいやな予感がする。


「あっ、ああ……」


 リアが動揺している。


「どうしたんだ、リア?なんか動揺してるみたいだけど?」


 カンナが心配そうに聞いた。


「……レイラ、カンナ少し来てもらえますか?」


 そう言われ僕達はリアの部屋に向かった


「どうしたんだよリア、急に部屋に呼び出したりしてさ」

「……実は二人に言わなければいけないきゃいけないことがあるんです」


 リアは少し震えている。


「さっき倒れていた子も、昨日やおととい倒れていた子も私によく絡んでくる人たちなんです……」


 なるほどだからあんなに慌ててたわけか。


「へー……でも、それってただの偶然なんじゃないかな。」

「私も昨日はそう思いました、でも……三日連続でこんな……」

「まさか自分の呪いのせいって思ってるんじゃないでしょうね」

「……」

「大丈夫よ、だって本当に呪いのせいだったら、リアをいじめてた人たちじゃなくて私たちにだって何らかの影響がでるはずでしょ。だから……ね?」


 大分強引だがリアを安心させるにはそう言うしかなかった。


「そうだぞリア、だからあまり気にするな。それよりも今日はなんだか手がかりがつかめそうな気がするんだ。早く図書室にいこうぜ。」


 カンナはいつになく乗り気である。


「私、少しよりたいとこがあるから先に行ってて。」

「お、そうか、わかったよレイラ、じゃあまた後で。」


 そのまま僕は保健室へ向かった。倒れた人たちのことを聞くためだ。保健室の人の話によると倒れた人たちは外傷はなく、なにか中毒のような症状が出ているとのことだ。ただ食中毒だとしても何が原因なのかわからないらしい。


 食中毒……食堂のメニューは日替わりだ。だから、食堂のご飯が原因とは考えにくい。だがこの学校でご飯を食べることができるのは食堂だけだ。ということは、人為的なものなのか……、だとすると怪しいのは……


「何か心当たりでもあるんですか」

「な、なんでもないですよ先生……」


 いや、リアに限ってそんなことをするはずがない。大体リアが犯人なら僕たちにあんなことを言うはずがない。


「先生、いろいろ教えてくださってありがとうございます。」

「いえいえ……犯人わかるといいですね。」


 ……僕は今の先生の一言に違和感を覚えた。


「……いま先生『犯人』っていいましたよね。」

「えっ、ええ……あっ!!」

「それって今回の騒動には犯人がいるってこと。つまり人為的に起きた騒動ってことなんですか?」


 先生はしまった!!という顔を浮かべるがすぐにまあしゃべっちゃったものは仕方ないかと思ったのか僕に詳細を話してくれた。


「……これは教員にしか知らされていないんだけど、倒れた子達の首元にね赤い斑点みたいなものがみつかったの」

「赤い斑点?」

「これがね、数年前に世間を騒がせた集団中毒事件の症状と酷似してるの」

「集団中毒事件……」

「まあその犯人はもう捕まってるんだけどね。犯人は自分の能力を使って毒を精製して服用させていたの」

「まさか同じ能力を持つ人がこの学園に?」

「恐らくね……このことは他の人には内緒にしてね。」

「わかりました。」



 固有能力か……固有能力は入学するときに学校に届け出を出すことが義務づけられている。だからそんな能力を持つ人間がいたらすぐにわかるはずだ。それでもわからないということは在学中に発現したということなのか。どちらにしろ犯人を早く捕まえなくては、リアを安心させるためにも……


 保険室の先生の話を聞いた後、僕はそのまま図書室に向かった。リアとレイラはすでに図書室で調べている。



「おお、レイラ!何やってたんだよ!こっちは一人いなくて大変だったんだぞ」

「……カンナったら、今日はなんかやたら気合い入ってるね。」

「お!わかる?私の勘が今日中に何か手がかりが見つかるって言ってるんだよ。」

「ふふふ……カンナらしいですね」

「おいおいリア、それってどういうことだよ……」


 カンナのおかげでリアは大分気が楽になったようだ。ほんとにカンナはすごい。僕もカンナのおかげでこんな状況でもなんとかやっていけている。


「さあレイラも来たことだし早く始めましょうか。」


 僕らは今日も呪いについて調べる。だが僕だけは、呪い以外にも調べなければならないことがある。あった。数年前の事件をまとめている本の中に例の集団中毒事件について書かれていた。


 5年前ラトラという村で起こった事件で犯人はその村に住んでいた魔法使いの青年。動機は能力に目覚めたからその能力の性能を試したかったなどというなものだった。そしてその毒だがその能力でしか発症しない中毒であるため『世界の奇病百科』に載るほど珍しいようだ。


 『世界の奇病百科』これにあの毒の詳しいことが書いているだろうか開いてみると目次がわかりずらくどこに何を書いているかがわかりずらい。これではかなりの時間を浪費してしまう。この本は部屋に戻ってから読もう。そしてその後も様々本を調べるがなかなか手がかりが見つからない……


「きっ……キャアアア!!!」


 図書室の二階で女子生徒の悲鳴が聞こえた。僕は悲鳴がしたところにすぐ向かった。


「これで何人目よ……」

「ほんと一体どうなっているのかしら?」


 学校内のがすでに何人か集まっていた。そこには昨日一昨日と同じく女子生徒が苦しみながら倒れていた。首元を見てみると赤い斑点が浮かんでいる。


「ねえリアこの人ももしかして……」

「……はい、そうです。」


 これは……さすがに偶然として片付けるには少し無理が出てくるな……


「ちょっと、どいてどいて!!」


 野次馬の生徒達を押しのけて医務室の先生と生徒指導の先生がやってきた。医務室の先生は倒れている子を運び出し、生徒指導の先生はリアのいる方に向かっていきリアに声をかける。


「リアちゃんだよね。」

「はい。」

「……話があるから、生徒指導室にきてもらえるかな?」


 ……最悪の事態が起きてしまった。











 























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