第8話 事件「中編」
生徒指導の先生はリアを生徒指導室に連れて行こうとしている。中毒症状を起こした人達が皆リアに絡んでいたことからリアのことを疑っているのだろう。
「ちょっと待ってくれよリアが何をしたって……」
カンナは先生にもの申そうとするが、リアがそれを止める。
「リ、リア……」
「ありがとうございます。カンナ。でも、私は大丈夫です。」
「け、けどさ……」
リアは何も言わず首を横へ振る。どうやら自分の意思を変える気はなさそうだ。
「……わ、分かったよ。」
リアはそのまま先生につれていかれてしまった。カンナはは不満そうな顔をしている。
「えっ、まさかあの子が犯人なの?」
「あの子知ってる……たしか呪いの少女呼ばれてる子よ」
「まさか、生徒達が次々倒れてるのも呪いのしわざなの……?」
完全にリアが疑われてしまっている。心底不快だが、ここでリアが連れて行かれるのを拒否したらよりリアが疑われてしまう。仕方ないがここは我慢するしか……我慢するしか無いんだ。
*
その後図書室が閉鎖された。僕達は生徒指導室の前でリアを待つことにした。
「もう30分過ぎたか……長いな。」
「……そうだね。」
それから更に30分ほどしてようやくリアが生徒指導室から出てきた。
「リア!大丈夫だった!?」
僕達は一目散にリアに駆け寄った。
「は、はい…何か証拠があるってわけでもなかったので。」
「そっか……よかった……」
僕達はその報告を聞いてほっと胸をなで下ろした。
「ただ、疑いを晴らすためにもしばらくは寮からでるなって言われました。」
「そうなのか……ちくしょう納得いかねーよ、なあレイラ。」
「……今はリアが疑われても仕方がないと思う。」
「レイラ、おまえ……」
「でも、リアは犯人じゃない。それは間違いない。だから、私たちでリアの無実を証明しよ!」
そうだ。この最悪の状況をこのままにしておくわけにはいかない。一刻も早くリアの無実の証拠を探さなくては……
「さっすがレイラだぜ、そうと決まればさっそく……」
「……どうしてですか?」
「えっ?」
「どうして……私のこと信じてくれるんですか?この状況どう考えても怪しいのは私なのに……」
「リア……」
たしかに、普通に考えれば、怪しいのはリアだ。動機もあるしほかに容疑者がいるわけでもない。でも……
「……友達だからだよ。」
「うんうん。」
「と、友達……」
「別に深い理由とか根拠があるわけじゃないよ。ただ……この状況で友達の私達が信じなくて誰が信じるんだって話でしょ。」
「そゆことそゆこと。」
「……」
そうだ。この状況リアに不利な要素が圧倒的に多すぎる。だからこそ信じなければいけないんだ。彼女を孤独にしないために……。
「とにかくリアの無実を私とカンナで見つけるから心配しないで。」
「そうだぞ、リア、だからめそめそすんな。」
「べ、別に、めそめそなんかしてないです……でも、その、ありがとう……ございます。」
*
僕達はそのまま寮に戻っていった。
「はあにしてもどうすればいいのやら……ん、レイラ何よんでんの?『世界の奇病百科』……なんだこれ?」
「ああ、カンナにはまだ言ってなかったよね、実はね……」
カンナに昨日先生と話したことを大体のことを説明した。
「なんだよ、そういうことはもっと早く言ってくれよ!」
「ごめん、先生が他の人には内緒にしてくれって言われてたからさ。」
「そう……で、その本には毒についてなんてかいてあるの?」
「うん、この中毒症状の正式名称はアポネシア中毒、奇病といわれている原因はその症状の発症自体が珍しいことに加えて首元に特徴的な赤い斑点ができること、毒を摂取したときから一日以内の記憶が消失すること、さらに……」
「長い!!もっと短く書いててくれないかなあ……」
「これでも十分短い方だよ。ほら、この病気なんて10ページ以上説明が書いてあるんだよ」
「うわーマジかよ。そんなあるのかよ……」
「ほかにも……ん、これは……」
「どうしたの?」
目についたのは百科事典の隅っこに書いてあった目の奇病「フレイアイ」だ。症状自体はたまに目が痛くなるというぐらいでたいしたことがないが、特徴としてその希少さがあげられている。300年以上続く大国の歴史でも目撃情報は三件しかない。そして、目に紋章のようなものがあらわれるという……
「う、嘘これって……」
「ど、どうした!?レイラ!」
「こ、これは……」
リアの目に浮かんでいる紋章と同じものだ。
「……」
「……」
僕達はただ呆然としていた。なんせこんな形でリアの呪いの謎を解いてしまうなんて思ってもいなかったから……
「と、とりあえずこのことをリアに報告しよう!」
「うん……そうだね。」
僕達はすぐに自分達の部屋を出て反対側にあるリアの部屋に向かった。しかし、リアになんと説明すればいいだろうか、いままで起きた不幸の連続が呪いのせいじゃなかった何て聞いてどう思うのだろうか。納得してもらえるのだろうか……そんなことを考えていたそのときだった。突然ドン!!という音が宿舎一階中に響きわたる。
「な、なんだ!?」
僕はあまりの大きな音に少し動転する。だが、もしかしたらリアに何かあったのかもしれないと思い至り僕達はすぐに気を取り直しリアの部屋に向かう。そしてその部屋の前で更に驚くべき光景を目の当たりにする
「お、おいリアの部屋の前で誰か倒れてるぞ!!」
リアの部屋の前で人が倒れている。おそらくこの人がリアを部屋から出ないか監視していたのだろう。首元に赤い斑点がある。あの毒だ。そして手のひらに針に刺されたような傷ができている。
「……」
カンナはおそるおそる部屋の中を確認してみる。
「いない……部屋にリアがいない!!」
僕もリアの部屋の中に入った。カンナが言っていた通り部屋の中にリアがいる様子がない。
「う、嘘まさかほんとにリアが……いや、そんなはずは……」
僕はリアの部屋の辺りを見渡してみる。そして、僕はこの部屋の複数の違和感に気付く。
「……そうよ。それはないわ。絶対に……」
「え?どうして絶対だって……」
「カンナこれを見て。」
私は窓を指さした。宿舎の窓には泊まっている生徒が夜間にこっそり外出するのを防ぐために窓格子が取り付けられているのだがその窓格子が壊されている。壊れ方からして爆発魔法を使って一回で壊したのだろう。
「もしリアがこの窓から逃げ出したのだとしたらまず、リアを見張っていた人が倒れている位置がおかしいの。もし、あの人を襲ったのがリアだとしたら、リアは一度部屋の外にいる警備員に毒を盛った後わざわざ窓を壊して外に出たってことになる……そんなまどろっこしいこと普通する?」
「え、じゃあ……つまり警備員に毒を盛ったのは別の人……でも、なんのために?ていうかリアが中毒事件の犯人じゃないなら何で逃げたりした?」
「毒を盛った理由は……恐らくあれよ。」
僕は部屋の中に落ちている『あるもの』を指さす。
「こ、これは……鍵?でも、たちが普段使ってる部屋の鍵とは少し違うような……」
「多分これは、警備員が持っていたマスターキー。そして中毒事件の犯人が外の警備員を襲った目的はおそらくこの鍵。犯人はこの鍵を使ってリアの部屋に入ったのよ。」
「お、おう……」
「でも、リアが爆発魔法を使って部屋から逃げた。多分部屋の外で何らかの異変が起きているのを察知したんだと思う。」
「うん……」
「そして犯人はリアが壊れた窓からリアを追いかけた。この鍵は恐らくここに落としてしまったものだよ。」
「ええっとつまり……」
「つまり、リアは犯人に襲われそうになった。それで窓から逃げ出したってことよ……私の推測が正しければね。」
「で、でもさ、なんで、リアを襲うようなことをしたんだ犯人はリアをはめようとしてたんだよな、だったらこの行動は少し変じゃないか?」
……カンナの言うとおりリアを犯人にしたいはずだ。それなのにリアを襲うというのは……
「ううん……そこはよくわからないけど……とにかく早くリアを探そう」
「そうだな、今はそんなこと考えてる場合じゃないからな……」
リアはそう遠くにいっていないはずだ。ここはあれを使おう。
「
人捜しにこの能力はうってつけだ。僕が部屋の窓から外を見渡してみる。
「……あれは?」
学校の外の森に2人誰かいる。だが、暗くて顔まではよくわからない。でもそのうち一人のシルエットはリアによく似ている。
「学校の外の森に誰か二人いるみたい、一人は多分リアだけど、もう一人はよく分からない。」
「ま、まさかそいつがリアを……」
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