第9話 事件「後編」
僕達は、リアを追いかけるため壊された窓から浮遊魔法を使い学校のすぐ近くにある森へ向かった。
「いた、あそこか……おい、リア!大丈夫か!」
そのまま僕達はリアの方へ向かっていった。リアはどうやら怪我をしているようだ。
「レイラ、カンナ……危ない!後ろ!!」
僕らは後ろを振り返る。僕らは背後から何かが二つすごいスピードでこちらに飛んでくるのを視認する。
「……やばい!」
僕達は間一髪でよけることができた。飛んできたものが一つは近くにいた鳥の体をかすめながら後ろの木に刺さる。これは……ナイフか?
「……誰か来る。」
カンナが言った通りナイフが飛んできた方角から草木をかき分けてこちらに向かってくる音が聞こえてくる。そしてその音が聞こえてすぐに僕達はその音の主の姿を視認する。
「お、お前は……誰だ?」
カンナの言うとおりそこに現れたのは同じクラスでもなければ知り合いでもない。制服のリボンの色からして同学年の一般女子生徒だった。
「あら、もしかして……レイラさんですか?」
ナイフを投げてきたやつが僕に話しかけてくる。
「え、なに?レイラの知り合い?」
「え、ええっと……うーん……」
知り合い……なのか?僕はこれまでの学校での記憶を思い起こしてみるが全く思い出せない。
「ご、ごめん。誰だったっけ?」
「……まあ、知らなくても無理ないですよね。こんな私みたいな一般モブ生徒のこと何て……」
「い、いやそういうわけじゃなくて……」
なんか気まずい雰囲気になってしまった。
「私の名前はミル・エンリ。レイラ親衛隊の副隊長です。」
「れ、れいらしんえいたい?」
それってあれか?カンナが前に行ってた私のファンクラブってやつ……
「……あ!」
思い出した……この子、この前私に話しかけてきた。僕に……レイラに憧れているとか言っていた三人のうちの一人。
「そうか、君この前私に話しかけてくれた……」
「もしかして……あのときのこと覚えててくれてたんですか!?」
「え、ああうん……」
「……」
「ど、どうした?」
「ひっ、ひっぐ!!う、うれしいですぅ!!まさかレイラさんが私のことを覚えていてくださるなんて本当に……感動ですぅ!!」
ミルは泣きじゃくりながらそう言った。それを見て僕は少し引いてしまう。
「そ、それで、今回の騒動はあんたの仕業なの?一体何が目的?」
「そ、それは……」
ミルは気味の悪い笑顔をくすりと浮かべた後口を開いた。
「……レイラさんのためですよ」
「私のため……?」
レイラのため?それって一体どういう……
「だってこのリアってやつは呪いの少女っていわれてるんですよ。こいつに関わってたら呪われちゃいますよ!」
「……は?」
「だから、この女がどれだけ危険なのかわかってほしくて……それで……」
「それでリアをいじめていた人間に毒を……」
「はい、でもレイラさん優しいから……全然こいつと距離とってくれなくて……だからもう……こいつを……呪いの少女を殺すしかないかなって思いまして……」
……こいつの言っていることは何一つ理解できないがこれだけは言い切れる。こいつは話し合いとかできる人間じゃない。はっきり言って狂ってる。
「私が時間を稼ぐ。カンナ急いで先生達呼んできて。」
僕はカンナにそう耳打ちした。
「えっ、でも……」
「いいから早く!!」
「わっ、わかった」
カンナはすぐに学校の方へ向かっていった。
「10分もすれば先生達が来る!だからもう諦めておとなしくしなさい」
「ひどい……なんでこんなことするんですかレイラさん……」
「何でってあなた……」
「まあいいですよ、私の毒は記憶を消す効果もあるんです。この毒でレイラさんの記憶を消した後でカンナを追えばまだ……」
ミルは完全にやけになっている。これは相当まずい
「まずはリアあんたからよ!!」
ミルはリアに向かってナイフを投げた。リアは防御魔法でなんとか防ぐ。
「サンダー!」
僕の打ったサンダーがミルに直撃した。もちろん死なないように威力は調節している。
「い、痛いですよ、レイラさん。そんなにこいつのことが大切なんですか!」
今度はミルがリアを炎魔法で攻撃してくる。それを僕は防御する。
「あたりまえでしょ!友達だもん!」
「友達って……やっぱりこいつの呪いにやられて!!ああ恐ろしい!!早く私がなんとかしなくちゃ……」
ミルが今度はナイフを逆手で持つ。そしてこっちに向かってくる。
「レイラさんちょっと痛いと思いますがこれもあなたのためなんです。」
ミルが僕に刺しに向かってくる。正気とは思えない。だがどうする。攻撃しなければこちらがやられる一方だ。
「もうしつこいですね。いい加減おとなしくしてください……」
……しつこいのはどっちだと思ってるんだ。『レイラ』が本気出せばこんなやつなんて造作もない。もういっそのこと本気を出してしまおうか。いや万が一でも殺してしまったらまずい、でもそんなこと言ってる余裕も……
「本気を出せば私なんて一撃なのに……やっぱり優しいんですね。」
別にこいつのためにしているわけじゃない。こいつは私を殺そうとしているわけではない。その相手をレイラで殺すのは気が引けるだけだ。
「もう終わりにしましょうか……」
ミルがそうつぶやくとミルの周囲に魔方陣が展開される。この魔方陣に僕は見覚えがあった。
「どうです!!こんな時のために、禁断魔法を覚えていたんですよ!!」
クロスゲイザー……この魔法は覚えるの自体はそこまで難しくないだが、実力にそぐわないものが使えば暴走し自分自身だけではなく関係ない周りのものにも危害を加える。そのためこの魔法は禁断魔法に指定され上位の魔法使いしか使用は許可されていない。
「やめろ!こんなことしたら……」
「レイラさんが悪いんですよ!!私の言うこと聞いてくれないから……」
さすがにまずい、もうやるしか……殺すしか……
「……ロテハ、グナ、ベルh……ってちょっと何よこれ!!」
「……?」
「止めて!!来ないで!!」
ミルの様子がおかしい。一体何が……?僕はアイズを使い様子を確認する。
「あ、あれは……」
蜂だ。蜂がミルの周りを飛び回っている。しかも色が青白い……見たことがない品種だ。
「や、やだ……虫は虫は……」
ミルはその蜂を振り払おう蜂は全く同じない。そして蜂はミルの首元にとまりミルを刺した。
「う、うっ……」
ミルは蜂に刺されるとそのままぐったり倒れてしまった。
「……ふう、なんとか間に合いました」
「リア、これって……」
「私の能力です。虫や動物を操る能力なんですけど、まだうまく操れなくて時間がかかってしまいました。すいません。」
虫や動物を操る能力……つまり、あの蜂はリアが仕向けたものだったのか。
「いやいいのよ、ありがとう、それより怪我は大丈夫!?」
「大丈夫です。逃げている途中にミルの魔法を少し食らっただけです」
「ちょっとこっち来て怪我治すから。」
リアがそう言って私に近づくと……
「近づくんじゃねえぞ!!呪いの少女が!!」
ミルが地をはいながらつんざくような怒声でリアを怒鳴りつけてきた。
「嘘!まだ動けるの!?」
地をはうその様子はまさにゾンビ……僕はその様子を見て反射的にに身構え。
「……この蜂の針は刺した人間をしびれさせるんですが、しばらくはまともには動けないし魔法も能力も使えない。だから安心してください」
リアの言うとおり這いつくばってはいるが魔法や能力で攻撃してくる様子はない。勝負はついているようだ。
「……レイラさん考え直してくださいこの女といたらあなたはいつか呪われて不幸に……」
「ミル……あなたにひとつ言っておくわ」
「えっ?」
「僕は、一年以上前から……この世界に来てから、ずっと……ずっと……
呪われている
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