第2話 魔法学校入学試験

 それからさらに半年以上のときが過ぎた。ついに、ここオルディアで魔法学校統一試験が始まる。

 

 「ついに、ついにこのときがきたんだね。き……緊張してきた……」



 レイラは少し震えている。レイラほどの魔法使いでも緊張することってあるんだなあ……。まあ、今日はそれだけ重要な日ではあるのだが。



「よ、よし!さっさと手続きしにいこう」

「受付は……あ、あれだ」



 『魔法学校統一試験』筆記、実技、面接この3つの試験で魔法使いとしての適正を図る。そして成績の優秀な人を学校側がスカウトする形になる。まあ、野球のドラフト会議のようなもの……いやちがう……う、うまい例えがおもいつかない。


「コ、コンニチハ、キ、ホンジツハ、ヨ、ヨロ」

「あのー、受験票だしてもらえます?」


 いやいや緊張しすぎだろレイラのやつ。まあぼくもかっ、かなり緊張してるけど……


 オルディアには一度だけ来たことがある6年前だそのときはレイラの父親のアランさんもご健在でレイラとアランさんそしてリオン……僕の3人で遊びに来ていた。僕が転生する前のリオン記憶だ。実際に経験していないのにすごく懐かしく感じる。


「ほ、ほら早く1次試験の会場いこ!!」


 1次試験会場にはすでに人が集まっている最近の戦争の影響で全体的に試験のレベルが上がりそれにともなって試験の難易度も上がっているので誰も彼も殺気立っている。受験をうけるのは終夜だったときも含めて3回目だが本当にこの雰囲気には本当に慣れない。


「おい、1次の筆記試験あと5分で始めるぞ、席につけー」


  筆記試験は……正直自信ない。前の世界でもテストはいつも赤点ギリギリ。ああ思い出しただけで頭が痛くなる。いやここは異世界だ前の世界とはちがう、きっとナ○トみたいに普通の試験とちがって……


 そんなことはなかった。まあレイラといっしょに勉強していたから全くできなかったわけではないが……正直自信ない。二次試験で挽回しなければ……


「二次試験の面接の会場にいどうしてくださーい」


 二次試験は面接だ。筆記試験はともかく異世界に面接があるとは……面接はもちろん苦手だ。人見知りのぼくにとって1番厳しいテストだ。


「魔法学校に入ろうと思ったきっかけは?」

「魔法学校でどのようなことを学びたいですか?」

「卒業してからは何をする予定ですか?」


 次から次へと質問攻め、しかも各学校の責任者達がその様子をじっと見ている。地獄だ。結局、面接は終始がちがちでそれとない返事しかできなかった。くそ、3次試験は3次試験こそは……



「リオン……」

「お、おいどうしたレイラなんか顔色わるいぞ」

「1次も2次も緊張しすぎて、う、うう……」

「おいおい、3次試験がまだあるだろ落ち着けって」



 まさかレイラがここまであがり症だったなんて意外だ。そういう意外な一面も見れて僕の緊張も少しほぐれた。


「そ、そうね3次試験は実技、このためにどれだけ特訓したことか、この試験だけは絶対に譲れない……」


 そう3次試験は実技、おそらく去年と同じ魔法人形との模擬戦だろう。かなり手強いらしいがレイラにとっては造作もないだろう。いや瞬殺かもしれない。僕にとっても毎日レイラと同じ特訓をしてきたんだ負けるわけがない。


「では、3次試験会場に移動してください」


 3次試験会場である闘技場に着いたとき僕は目を疑った。


「おいおい嘘だろう……」

「マジかよあんなのってないぜ。」


 周りもざわつき始める。あの大きな翼間違えない「機竜」だ。


「これは大国が機竜を元につくった魔法人形だ。本物ほどの性能はないが動きや攻撃方法はかなり似せている。これを倒せないようではどの魔法学校にも入れないと思え。」


 本物ではないにしろまさか機竜と戦うことになるなんて……半年前はまるで歯が立たなかったあの機竜と……


「それでは試験番号1番の方から前へ。」


 それから何人もの受験者が機竜に戦いを挑んだ。1人、また1人機竜に破れていった。そして……


「試験番号20番、前へ。」


 ついに僕の番がきた。大丈夫だ落ち着け、僕はほかの受験者と違って機竜と戦うのは二回目だ。弱点もちゃんと把握している。ぼくは半年前と同じようにデコイでおとりを作りそれに気をとられているすきに、こんどはちゃんと胸の部分を狙って、


「メガサンダー!」


 サンダーの上位魔法が機竜に直撃する。ぼくの半年以上の特訓の成果そのすべてを!


「ギ、ギギ、ギギギギ」


あと少しあと少しで倒せるそう確信したそのとき……


「う、うそだなんで……」


メガサンダーがでない。魔力が……切れた。


「そこまで!受験者の魔力がゼロになったためこれにて試験を終了とする」

「そんな、まだ僕は……」

「たわけが!自分の残り魔力も把握できないやつにこれ以上試験を受ける資格はない。去れ!」



 僕はこれ以上何もいえなかった。正直、これ以上やる気が出なかった。レイラは・・彼女は普通のサンダーで一撃で機竜を倒した。それなのに僕は、上位魔法の

メガサンダーで魔力いっぱい使っても倒せない……



「次!試験番号21番前へ!」


 レイラの番だ。恐らく何の問題もないだろう


「サンダー!」



 勝負は一瞬でけりがついた。機竜はサンダーで一撃で消し飛んだ。



「ま、まさか一撃で……しかしこれでは実力が測れない……すいませんが私と手合わせしてもらってもかまいませんか?」

「おいおい!受験者が試験官、大国魔道士と戦うなんて前代未聞だぞ」

「一体何者なんだあの少女は……」



 ああ、やめてくれ……


「一度あなたとは手合わせしたいと思っていました。アランさんの娘と」

「こちらこそ大国魔道士と戦えるなんて光栄です」


 これ以上僕をおいて先に行かないでくれ……


 10分以上の死闘の末ついにレイラは試験官を倒してしまった。まさかここまで差をつけられいたなんて……僕は一体どうすればレイラに追いつけるんだ?彼女と僕の間に大きな壁を感じる。きっと努力なんかじゃこの壁は絶対に越えることはできない、そう絶対に……




「これにて試験を終了をする。結果発表までしばらく待て」


 そうこうしているうちに3次試験が終了した。機竜を倒したものは何人かいたがレイラ以上の魔法使いはいなかった。そして結果発表のとき……


「やっ、やったー!『聖魔道女学園』受かってる!リ、リオン受かった、受かったよ!」


「聖魔道女学園」魔法学校でtop3にはいる超エリート学校だ。にしてもtop3のうち1つしか受かっていないとは……1次と2次はそうとうボロボロだったんだなあ。



「ねえねえ、リオンはどこ受かった?」

「……ぼくは、機竜を倒せなかったし、きっとどこも受かってないさ……」

「そんなことないわよ!いいから確認してみて!」


 言われるがままにさっき配られ結果が書かれた紙を確認する。不合格、不合格、不合格、どこも不合格ばかり合格している気配がない、


「最後だ『獣魔学校』……」


 心臓の音がとまらない。合格か不合格かそして、紙には……合格の文字が書かれていた。


「合格だ!合格したぞ!!」


 その瞬間目から涙があふれ出てきた。

【惜しくも機竜を倒せなかったが立ち回りやあのメガサンダーには目を見張るものがある。伸びしろも十分あり今後の成長に期待できる】そう紙に書かれていた。



「おめでとうリオン!本当に、本当に……」


 僕はレイラの顔を見るとその目元には涙を浮かべていた。


「な、何でレイラが泣いてんだよ」

「だって、だって……」


 レイラはまるで自分のことのようにいや、それ以上に俺の合格を喜んでくれた。彼女はそういう人なのだ。


「ありがとうレイラ。君のおかげだよ。」

「う、うぐ……」


 俺は彼女と一緒に本当に、本当によかった……



そして帰り道



「でも、何でレイラは僕が合格したってわかったんだ?」

「何でって、あんなに努力してたのにどこも受かってないわけがないじゃん。それに私はねリオンはすごい潜在能力を秘めていると思うの!」

「そ、そうかなあ……」

「そうよ、1年前は体力はないし、魔法なにも使えないし、ていうか小さい時は私とけんかで負けてたしそれに……」

「もういい、もういいから。」

「でも、今はメガサンダーまで使えるようになったし、1年でこの成長スピードはすごいよ!もしかしたらさらに1年後には私以上の魔法使いになってるかもよ」

「いやいやそれはないだろう……」

「ううん……それもそうね。」

「おいおい……」


 レイラ以上の魔法使いか……そんなの一生かけてもなれる気がしな……


「それよりさあ、あっちなんか光ってない?」

「光ってる?」


 俺はそう言われてレイラが指さす方を見てみる。確かに数キロメートル先何故か一カ所だけぼんやりと光っている。


「……本当だ。火事か?」


 俺はそう言った後何かとてつもない悪寒がした。俺は、この感覚を一度経験したことがある。そうあれは前の世界で死ぬ間際に感じたあの感覚……。そして、レイラの一言でこれが気のせいではないと確信する。


「ねえ、あそこって私たちの村じゃない……?」

「そ、そんな……」


 絶望が始まる。













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