第1話 レイラ
「リオン……起きて……リオン、リオン!!」
僕は彼女に名前を呼ばれ少しいやいや目を覚ます。
「何だよ……レイラまだ6時前じゃん」
「何だよ……じゃないでしょ!今日は7時から特訓を始めるって約束したじゃない!」
「え、ああ、そうだったな。」
「はあ、全く……ほら朝ご飯つくってあげたから早く食べて」
この子は「レイラ」この村で唯一の同い年の女の子でいわゆる幼なじみだ。僕とレイラは毎日朝早く起きては魔法の特訓をしている。
「お!今日のスープすげーおいしいじゃん」
「でしょ!でしょ!昨日近所のおばさんにおいしい作り方おしえてもらったんだ」
早起きはそこまで苦痛じゃなかった毎朝レイラがおいしい朝ご飯を作ってくれるからだ。
「よし!ご飯も食べ終わったし早速特訓始めようか」
「ええ、まだご飯食べたばかりだし10分後ぐらいにしない」
「ううん……そうねじゃあ、10分後にいつもの場所に行きましょうか」
レイラは僕とは違い魔法の才能に長けていた。その上努力家でもあって毎日特訓を欠かさなかった。彼女には夢があった有名な「魔法学校」に入ることだった。
レイラの父親は有名な魔法使いだった。この村、いやこの国でも指折りの魔法使いだったらしい、だが、3年前戦争に参加して、竜人に殺されてしまった。レイラは自分のような戦争の被害者をこれ以上出さないため、この戦争を早く終わらせるために魔法学校に入学し卒業した後魔法使いとして戦争に参加するというものだった。
ちなみにレイラの父はリオンの……僕の義父である。竜人に両親を殺され孤児となった僕を保護し自分の子供のようにそだててくれた……らしい、ここが少しややこしいのだが、僕がこの世界に転生したのが1年前なのだが、「リオン」という人間自体は元からこの世界に存在していたのだ。つまり僕は……
「ほら!もう10分たったよ、早く始めましょう」
「う……うん、そうだね」
……とにかく今、僕は「リオン」としてこの世界に暮らしている。不安なことも多いがこの生活には満足している。その理由としてレイラの存在が大きい。
「レイラ」は正直……めちゃくちゃタイプだ。まず優しい、すごく優しい。僕が病気で寝込んだときは1日中付きっきりで看病してくれた。そしてかわいい、めちゃくちゃかわいい、金色に輝くさらさらな髪、まるで水晶のようにきれいな瞳、それから……
「何ぼーっとしてるの」
「えっ」
「ほら手止まってるじゃないこれ終わったら次、村の周りを一緒に10周だからね」
「じゅっ、10周はさすがに……」
「ふーん、まっ、リオンじゃ無理か、じゃあ私だけ走ってくるからリオンはその木陰で休んでていいわよ」
「は?10週ぐらいできるし、余裕だし」
「ふふふ……そうこなくっちゃ」
あ……すっかり乗せられてしまった。まあ特訓もむりやりつきあわされているわけではない。僕は魔法使いとしてどんどん成長していくレイラを見て僕は少し焦りを感じていた。だから、レイラに少しでも追いつけるように彼女と同じように特訓している。
もちろん、こんなことをしても無駄なことはわかっている。それでも、ぼくは諦めたくなかった。
不思議だ……前の世界の僕はこんな人間ではなかった。努力をすることなんて馬鹿馬鹿しい。そう思っていた。ただ自分にとって都合のいいことをただ願うばかりの人間だった。それなのにこの世界で俺はあれだけ嫌いだった努力をしている。きっと今の自分がいるのはレイラのおかげだろう。
「よし!10周走り終わったし今度は魔法の特訓を……」
「さっ、さすがに少し休憩をしよう」
「ええ~まだもうちょい頑張れるでしょ。」
冗談じゃない!!あんだけ走らされて、まだ特訓させるのかよ!!
「悪魔だ、ここに悪魔がいる……」
「だ・れ・が、悪魔ですって?」
「ひっ、」
「もう、冗談よ、さすがに私も少し疲れたし。」
……とかいう割には全然息が上がっていない彼女は本当に人間なのだろうか?もしかしてマジで悪魔……いやそんなわけないか。
僕たちはそこの木のかげで休むことにした。いつもここで僕たちは他愛もないはなしをしている。隣町に新しい飯屋ができたとか隣の家のウサギが逃げ出したとか、だけど、こんな時間が一番楽しかったりする。
「でね、そのウサギがさあ……あ!」
「どうしたの?」
「特訓で使う魔法杖おいてきちゃった……ちょっととってくる」
「でも今から取りにもどるのめんどくさくない」
「大丈夫5分ぐらいで戻ってくるから」
レイラが魔法杖を取りに戻っていったそのとき悲鳴が聞こえた。
「機竜だ!機竜 がでたぞ!!」
「ついにこの村にも出やがった!」
「機竜」竜人がつくった竜型の兵器だ大きな羽が特徴で口のようなものから魔力の玉を発射して攻撃してくる。話には聞いていたが実際に見るのは初めてだ。
「誰か魔道士は、魔道士はいるか!」
近くに魔道士がいる様子はない。くそ、やるしかないのか!!
「グライア!」
グライアは空中浮遊の初級魔法だ。空中兵器である機竜を倒すために必須の魔法でこれができないと魔法使いになるどころか魔法学校にすら入れない。まあ僕は最近まで使えなかったが……
飛んでくる魔法弾を魔法で防御しつつ少しずつ近づいていく。機竜は本来通常の魔法使い3人か、大国魔道士1人でやっと1体倒せる。
だが、それは、昔の話だ。最近、機竜の弱点が大国から発表された。首の付け根の部分そこは人間でいう脊椎のようなものでここを破壊すれば動けなくなるとのことだ。
「デコイ!」
デコイは分身魔法、魔力消費は激しいが自動追尾型の機竜にはおとりとして使える。これに気をとられているすきに後ろに回り込み……
「サンダー!」
攻撃魔法を首の付け根にたたき込む!まあこれはレイラに教えてもらった対処法なのだが……とにかくこれで動きがとまっt……
ドン!!
一瞬ガードが遅れ機竜の攻撃がもろに食らってしまう。なぜだちゃんと首の付け根の部分を狙ったのに!、機竜の様子をよく見ると前に大国から配られた機竜の絵と少し違う気がする。まさか改良型か!
ドン!!
もう一発の弾はギリギリガードできた。だがもう魔力が残っていないどうすれば……
「ジェット!」
突然、誰か飛んで向かってくる。レイラだ。
「レイラ!あの機竜、首の付け根への攻撃がきかないぞ!」
「前の機竜とは違うってこと!?」
レイラは詠唱を唱え目を閉じる再び目を開くと目が青くなっている。
アイズは、レイラの特殊能力で魔法ではない、遠くのものを見たり、敵の弱点を探したりするのに使う。実は前の型の機竜の弱点を見つけたのもレイラなのだ。
「見つけた!サンダー!」
僕のとは比べ物にならない威力のサンダーが機竜の胸に直撃する。やがて機竜は動きを止める。
「す、すげー」
「さすがあの大魔法使いアランの娘だ!」
村の人たちが騒ぎ出す。レイラは村の中でも一目置かれている。やっぱり僕はレイラの足下にも及ばない、一体……一体どうすれば……
「ほら、今日はもう帰ろ、怪我治してあげるから」
「ごめん……迷惑かけて」
「何言ってるのよ、あんたが戦ってくれなっかったら今頃大変なことになってたわよ。それにいつの間にデコイ使えるようになったの?やるじゃん。」
「そ、そうかな……」
「まあ、これも私の指導のおかげね。」
「いや別にそれは関係ないような……」
「なによ。そんな態度とるなら怪我治してあげないけど」
「冗談、冗談だから!いや、本当に」
「ふふふ……」
とにかくこんな毎日を僕は送っている。この毎日がずっと続くとそう信じて……
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