第15話 再び「後編」

「死ねや、おら!!」


 竜人の女は何かピンポン球サイズの黒く丸いものを手から錬成する。そして、それを剛速球でこちらに向かって投げてきた。


「アイズ!!」


 僕はアイズを使い黒く丸いものを捉えよけることができた。


「へー、目の色が変わった……その目があんたの能力ってわけ?」


 この能力はなるべく温存したかった。だが使ってしまったものは仕方がない。


「でもいつまでよけきれるかなあ!!」


 女の竜人は更に数個さっきの黒い物体をこちらに向かって投げつけてくる。さっきよりも数が多い。その数5個。俺はアイズを使いその一個一個を確実によけ……


「……爆ぜろ!!」

「……な!!」


 女の竜人の一声と共に突然黒い球体が五つとも爆発を起こす。


「ぐ、ぐほっ……」


 簡易的にではあるが防御魔法を展開したおかげで致命傷は免れたが、脇腹を含めた数カ所……爆風によるダメージを受けてしまった。どうやらこの黒い球体の正体は……だ。


「打ち損じた……さすがに数が少なすぎたか。……出し惜しみしてる場合じゃないな……」


 無数の爆弾を錬成し続けこちらに飛ばし爆ぜろを連呼してくる。この『爆ぜろ』という言葉が爆弾を爆発させるためのトリガーなのだろう。……爆発の範囲からしてもよけることは出来ない。防御魔法を展開して攻撃を防ぎ続けるしかない。


「おらおらどうした反撃してこいよ!!」

「……」

「いや、出来ないか!だって防御魔法を展開している間は攻撃魔法は撃てないんだからな!!」


 ……こいつの言う通りだ。防御魔法を展開し続けている間は他の魔法を使うことはできない。防戦一方の状態になってしまうのだ。


「さあて、そろそろフィニッシュと行こうか……」


 竜人の女は更に十個の爆弾を手に持つどうやらこれで防御魔法を完全に破るつもりだ。


「爆ぜろ……」


 女の竜人の一言とともに十個……いや、の爆弾が全て爆発する。その衝撃で展開した防御魔法が粉々に砕け散った。次何か攻撃がくれば防ぐことは出来ないだろう。次が来れば……だがな。


「な……何故だ。」

「……」

「何故、足下に爆弾があるんだ!?」


 こいつの言うとおり、な・ぜ・かこいつの足下にあった爆弾が爆発しその爆発が竜人の女にかなりのダメージを与えた。この状態から次の攻撃が飛んでくることはまず無いだろう。


「落としたのか……いやそんなはずはない。爆弾の扱いには細心の注意を払ってたんだぞ……」

「最初に投げた爆弾……」

「え?」

「最初にお前が陽動のために投げた爆弾……あれ爆発しなかっただろ。何でかなって思ってたんだよね。」

「……」

「距離……だろ。あの不発弾はお前からかなり距離が離れてたからなだから爆発しなかったんだよな。だからさ。その不発弾をあんたの側に置いたってわけだよ。」

「そ、そんなのどうやって……てめえは防御魔法を使っていたはずだ。他の魔法を使うことは出来なかったはずだ。

「確かに防御魔法を使っている間は他の魔法を使うことはできない。だが、は違うよな……」

「特殊能力……?お前の特殊能力はその目だろ……その目で何が出来る……?」

「ああそうさ。この目じゃ何も出来やしないさ……でも僕の能力が一つだけとは……限らないだろ。」

「……ま、まさか……」

「ああ、僕のもう一つの能力……強固な糸『スチールストリング』を使ったんだ。」


 この能力は……レミ村が襲撃されたときに発言したリオンの能力だ。この能力で僕は不発弾を巻き取り彼女の近くに置いたのだ。そして彼女の『爆ぜろ』と言う言葉に反応し足下に置いた不発弾が爆発したというわけだ。


「く、こいつ……」

「イカズチ!!」

「ぐ、ぐああ!!」


 命中した。今度はデコイじゃない。


「ぐほっ、ぐほ!!」


 まだ生きてるのかよしぶといな……


「ま、まさか能力を二つ持ってる猿人がいるなんて……」


 糸の能力はレイラになってからも使えることはわかっていた。だが、いざというときのためにずっと隠していた。そう、まさにこのときのために……な。


 僕は竜人の女に近づき腰に装備していたナイフを取り出し竜人の女に突きつける。


「……なんだよ殺すならさっさと殺せよ」


 竜人の女は表情ひとつかえない。


「……ちっ、つまんないの。」


 僕はナイフを振り下ろそうとする……


「……!?」


 ナイフを振り下ろそうとしたその手の動きが突然止まる。……手首を捕まれたんだ。一体誰……僕は後ろを振り向く。


「……!!」


 後ろにいたのは一匹の竜人だった。僕はこの竜人のことを何も知らない。何も知らないが……これだけは言える。こいつはただ者じゃない……まさかこいつが……ゼノスなのか!?


「……ふん!!」


 ゼノスとおぼしき竜人は僕の腕をつかんだまま投げ飛ばす。


「ぐはっ!!」


 投げ飛ばされた僕は近くにあった木の幹に背中から激突した。


「う、うぐぐ……」

「……」


 ゼノスはそんな俺の様子を見て眉一つ動かさず俺に話しかける。


「……おまえがアランの娘か?」

「……だったらなんだよ?」

「……お前の命もらい受けよう。」

「……」


 僕は痛みを我慢して立ち上がり臨戦態勢をとる。集中力を高め深呼吸をし相手がどこから来ても冷静に対処できるように心がける。


「掛かって来いよ……」


 僕がそういったその瞬間。僕は衝撃の光景を目の当たりにする。


「えっ……」


 ゼノスが……目の前から消えた!?


「……!!」


 気がつくとゼノスは僕の背後にいた。数メートル間隔が開いていたにも関わらずだ……瞬間移動か?


「……紅蓮覇斬」


 防御魔法を展開することも、よけることもできない、攻撃をもろに食らってしまった。


「ぐっ、ぐああああ!!」


 今までに感じたことがないほどの痛み、そして、圧倒的な力が僕の全身に駆け巡る。


「一撃で死なない……バフでもかけていたのか、まあいい次の一撃でとどめを刺してやる……」


 ゼノスは倒れている僕の方にに向かってくる……まずい、やられる!!


「ブレイズ!!」

「……!!」


 その声と共に灼熱の炎が僕達の目の前を横切った。


「大丈夫か!!レイラ!!」

「誰だ、お前……」

「ぎ、ギル隊長!!」


 あの、強面な顔に、がたいのいい体つき間違いなくギル隊長だ。


「どうしてここに……」

「いやな予感がしてこっちに来たんだ、とにかく今は逃げろ!!そいつはアランを……お前の父親を殺し……」


 ギル隊長がそういうと共にゼノスは瞬間移動を使いギル隊長の懐へと距離を詰めた。


「な!!」


 そして、ゼノスは自分の持った剣で……ギル隊長を刺し殺した。一瞬の出来事だった。その光景を目のあたりにし僕は何も出来なかった。


「ギル隊長……ギル隊長!!!」


 なんでだよ……なんで、なんで……僕はレイラなのに何でも出来るレイラなはずなのにこんなの……こんなのって!!


「き、貴様あああああ!!」

 

 こいつはギル隊長を……そしてレイラの父親を殺した。つまり俺の敵……殺さなくちゃ、こいつを殺さなくちゃ、殺さなくちゃ……殺す殺す殺す!!


「イカズチ!!」


 連続でイカズチを討つ。こうすれば相手はひとたまりも……


「……あれ?いない……?」


 また……瞬間移動なのか?


「紅蓮覇斬!!」


 僕は相手の瞬間移動にどうすることもできない、ただただ相手の攻撃を食らい続ける。くそ……こうなったら。


「グライド!!」

「……逃げる気か、この俺から逃げられると思っているのか」


 ゼノスはすごい速さでこちらに向かってくる。だが、瞬間移動ではない。どうやら地上戦限定の能力らしい。チャンスは今しかない。ぼくは詠唱を始める。


「ロテハ、グナ、ベルハ、ハデラ……」


そして……


「クロスゲイザー!!」


 決まった、これを受ければさすがに……


「ほう、クロスゲイザーまで使いこなすとはな……」

「……え!?」


 クロスゲイザーは直撃した。なのに……


 嘘だろ……なんでこれ食らってピンピンしてるんだよ!!


 そのままゼノスは斬りかかる。僕は魔法で防御する。だが、実力差は圧倒的長くは持たない。


「それにしてもお前は本当にアランの娘なのか?」


 何を今更、僕はアランの……


「アランは敵ながら英雄と呼ばれるにふさわしい正義感を持っているように感じた。だが、お前は復讐だけに囚われて正気を失っている。やつの娘とは思えないな」

「うるさい!お前に何がわかる!!僕は!!」

「もう終わりだ。アランの娘よ……」

「くそがああああ!!!!」


 アランはそう言うと持っている剣を振るう。その一撃は僕の防御魔法では防ぎきれない。なすすべもなく僕は……僕は……








「……生きてるみたいだな」


 僕はだいぶ遠くに飛ばされたらしいな……それに少し気を失っていたらしい。


「……ゼノスは!?」


 そうだこうしちゃいられない。僕はあいつを、あいつを……


「うっ!!」


 だめだ足が動かない、全身は怪我だらけ。骨も複数折れている。あんな強大な一撃を食らったんだ。


「レイラ-!!どこにいるの!!」


この声は……リアとカンナか、まずい、二人を巻き込むわけには行かない。


「リア!カンナ!逃げて!!ここは危険……」


 僕は二人にここへ来ないように声を出しここに来ないよう伝えようと……伝えようと……つたえ……


「……え?」


 ……背中に感じたことのない感覚をかんじた。その一瞬あとでその感覚は痛みへと変わる。そして胸を見ると刃のさきが貫通している。刺されたんだ……後ろを振り向くとそこには……竜人が剣を手に持って俺の……俺の背中を……


「あ、あああ……」


 やがて痛みすら感じなくなっていく。血も止まらない。そしてこの感覚、これは……死










































 


 



 





















 



 




 

 














 


 









 


 






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