概要
『日常の謎』なので、人は殺されません。
大学4年生の初夏。
渡貫 詳(わたぬき しょう)は、『お悩み相談サークル』に所属している。
気の強い後輩、角川 貴理(かどかわ きり)に振り回されながらも、他人の悩みや、持ち込まれる些細な謎を解決することで自尊心を満足させる、虚しい毎日を送っていた。
そんなある日、詳自身が盗難に遭ってしまう。
割引券、鑑賞券、小冊子という一見無価値なものが次々盗まれ、ウェブ新聞記事のコピーと思われる紙切れと、『死神』のタロットカードが残される奇妙な連続盗難事件。
いつも通り貴理に押し切られ、詳はその事件の解決に乗り出す羽目になる。
犯行の法則性は何なのか? 犯人は誰なのか? その目的は?
『人間は根源的に時間的存在である
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!灰色の日常を変えるのは死神のカードと小さな窃盗事件
高校時代に女友達に振られたことを引きずり続けている大学生の渡貫詳。
一応『お悩み相談サークル』に所属し、時々持ち込まれる事件を解決して自尊心を満足させたりもするがその日常は灰色なまま。
そんな彼が学食で食事をしていると、ちょっと目を離した隙に割引券が盗まれるという妙な事件に巻き込まれる。しかも、ただ盗むだけではなく新聞記事とタロットカードをその場に残すという妙な犯行アピールをしてくる犯人。その後も学内で似たような小規模な窃盗事件が起き続け、サークルの後輩の角川貴理にせっつかれ、詳は事件の解決に挑むことに。一見何の意味もない犯行に思われた事件だったが、捜査を続けるうちに事件と被害者にある共…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ミステリー小説を今まで読んだことがない人に薦めたい作品です。
まず最初に、登場人物が若者であるため、どの年齢層の方でも感情移入がしやすい作品です。
窃盗事件を題材にしています。これは、広義のミステリー(刑法犯)に当てはまるため、巷にあふれてきた「別に解かなくてもよい謎」でないのも推奨できる点です。通常、盗んだ人は誰なのか? 知りたいですよね。
語弊があるかもしれませんが、ミステリー小説の入門として適切な小説です。これはなにも単純であるという意味ではありません。
それは何故か。
フーダニット(誰が犯人か)とホワイダニット(なぜ犯行に及んだのか=動機)がうまい具合に融合されているのです。
と言って頭がこんがらがるような複雑さはなく、伏線もフェア…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ミステリーに興味のない人も、是非ご一読!
主人公、渡貫 詳の『お悩み相談サークル』に持ち込まれる数個の謎について、鮮やかに解かれている作品。
主人公の感情の根底にある謎からも目が離せなくなるような構成になっており、単なるミステリーとは一線を画します。
読者は待ち受ける最初のミステリ、八代 愛美の浮気調査の依頼で程よいジャブが効いてくるのを感じてくるでしょう。ジャブが効いたらあとは自然に目が離せなくなっていきます。
そして最後の「死神盗難事件」……物語を通じて撒かれていた伏線が絡み、解かれる様に一気に目を瞠ります……!これは是非ミステリー好きでもそうでない方も目を通していただきたい物語です。読後感はすこぶる良く、すっきり晴々とし…続きを読む