1-2 1マイルは遠すぎる

 旧学生会館を出ると、待ち合わせ場所であるという駅前に行くため、このキャンパスの出口を目指す。

 このキャンパスは出入り口付近に講義棟が連なり、そこから奥へ中庭をはさみ学生会館が建っている。

 数年前に新築された学生会館は1階に学食も内包しており、講義が終わった後も人が絶えない。

 逆に、取り残された旧学生会館は、いつ訪れてもほとんど人がいない。

 そんな、講義棟から歩いて15分以上もかかる旧学生会館の5階の端。それがあの部屋の立地だった。

 まさにこのキャンパスの最果てという形容が最適。

 その静けさが、俺のお気に入りだ。


「そろそろ、教えてくれてもいいんじゃない?」


 隣を歩く貴理から、さっさと真相を教えろとせっつかれる。

 八代さんには先に待ち合わせ場所に向かってもらい、後から俺たちが尾行する手はずになっていた。


「いや、外れたら嫌だからまだダメ」

「けち」


 頬を膨らませてみせるのはあざといが、普段の言動があまりに刺々しいのでマイナス100億点。


「……」

「……」


 それ以上言葉を交わすことなく、目的地へとひた歩く。

 普段交わしている言葉の中身程仲が悪いとは思っていないが、絶えず談笑しているような間柄でもない。

 むしろ沈黙が作るこの静かな雰囲気が、2人には合っている気がしていた。

 人気の多い講義棟の森を抜け、出口を出て駅の方角へ進む。

 この街は割と広い。

 西側には今俺が通っている大学があり、東側には以前通っていた高校まである。

 大学がある西側は繁華街を中心に比較的都会であり、学生たちの遊びの中心。

 駅があり商業施設も充実しているので人が多く、常に雑多な雰囲気を醸し出している。

 案の定、大学を出て繁華街に差し掛かると、歩道を自由に進めない程人が溢れていた。

 だから夕方のこの時間、ここを通るのは嫌なんだ……

 平日とはいえ、この時間帯は大学から出てきた学生や、スーツを着たサラリーマンが大量に出現する。

 おかげでこの辺りの飲食店は大分儲かっているらしい。

 客が入りきらず、列形成をしている店までもがチラチラと見受けられる。

 その列がまた、歩行を阻害しているわけだが。

 人の波ならぬ人の壁に、もう帰ろうかと危うく挫けかけるが、待ち合わせの駅前広場はここを抜けた先にある。

 待ち合わせ場所として駅前は鉄板ではあるが、八代さんを呪わずにはいられない。

 人が多いところは嫌いだ。

 なぜなら――

 頭を振って暗い考えを追い出すと、駅前広場へと歩を進めた。

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