3.ここはお城、私は……貴族令嬢……よね?


 いろんなカップルがくるくる回りながら踊っているのを、ただ黙って壁にそって立ち、眺めている。

 (ドレスがかさばって壁にもたれられないし、汚したりまわりに引っ掛けたりしたくないから、少しだけ空間を空けて、でも他人と当たらないように、壁の花になる)



 ──まず、頭の中を整理しよう。



 お城の舞踏会で、ドレスを着て参加している以上、私もいわゆる令嬢と呼ばれる人達のひとり……と思われる。


 クリームっぽい淡い黄色のドレス。袖や肩の、絹の布地とオーガンジーの切り返しや膨らみを整える部分に若草色のリボンがあしらわれ、それでも周りの人達に比べると、地味なデザインだ。少しホッとする。

 スカートの開いた部分から、淡いピンク色のレースがのぞいている。

 裾を捌き直すために少し俯くと、肩からさらりと髪が滑り出す。

 これがまた、ドレスのレースと似た、ピンクがかった金髪だ。ピンクブロンド? 染めてるのかしら?


 髪に手をやり、くるくる巻かれている束からこぼれた髪を、指に巻いてまとめ直す。染めてるとは思えない、綺麗な透明感と艶のある髪。

 日本人にこんな髪はないよね……


 ──日本人?


 周りの人達はどう見ても西洋人にしか見えない。


 私は……令嬢な、西洋人なのかしら?



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