6.王立学舎の学者、サレズィオ様
王妹殿下アニエス様?
恐れ多くも王族の方の侍女が、お勉強をみに来てくださってるの?
王族の侍女、侍従と言えば、貴族の奥方や子息が起用されるもの……!
「学舎に直接おいでいただければ、色々資料もあって、お教えしやすいのですがね」
鼻の先にズレた銀縁眼鏡を押し上げながら、銀髪の青年が一言こぼす。
「サレズィオ様、お勉強していらっしゃる事をあまり出したくないと思われるリィナリッテ様と、彼女の意思を尊重しかつ女性が学ぶことを快く思わない旧貴族達から護りたいと仰られるエルヴィス様のお言葉に同意なさったのですから、もう今更何度も言わない事ですわ」
マリアベル様に窘められ、咳払いをしながら、分厚い本を開く。
「まあ、通うだけでちっとも身にならない阿呆共に教えるよりかは、手応えはありますがね」
「あんなこと仰られてますけれど、王宮に戻られたら、手放しで誉めてらっしゃるのよ?
子爵様は、ああ見えて、学者である事に自負がおありだから、教えがいのある優秀な生徒は好きなのよね」
こっそり耳打ちしてくれる。
サレズィオ様の教えてくださるのは、国の歴史と地理、諸外国との交易、大まかな法律に関わる問題だった。説明はとても解りやすく、すんなりと入ってくる。
例を挙げながら噛み砕いて説明できるほどご本人が熟知しているからこその教鞭である。
サレズィオ様とマリアベル様が揃って、王宮内でのしきたりやタブー、マナーや決まり事までをも教えてくださった。
「もう、急に王宮に勤めることになっても、問題はなさそうね?」
「今日までよく学ばれた。更に勉学がしたければ、せび王立学舎に通いたまえ」
サレズィオ様の基礎学習は、今日の復習講座で終了し、後は、本を読んだり現地で実地視察したりして自分で学んでいけと言われ、マリアベル様の、女官や高級侍女の、嗜みや教養は、今後も教えていただけるとのことだった。
今日は、今まで教えていただいていた事の復習を兼ねた、応用試験だったらしい。学んだ覚えはなくても、知識は忘れずに身についていた。
……良かった。風邪の発熱で頭が痛くて、今までの事はすべて忘れてしまいました、なんていったら、サレズィオ様ががっかりなさるところだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます