4.ここはお城、私は……誰なんでしょう?


 透明感あるピンクブロンドを巻いてまとめ、レースとオーガンジーのドレスを纏い、手袋と扇子、高めなヒールの絹の靴、血管も透けて見える白い肌。


 近くに鏡はないけれど、それだけでも、私も日本人らしい姿をしているとは思えない。


 舞踏会とか夜会ではなくて、コスプレ会場なのかしら。そんなものに縁はないと思ってたんだけど、優理子につきあわされてるのかしら?


 ──優理子って?




 頭の中に霞がかかったように、よく思い出せない。


 どうして私はここにいるの?


 ここは、どこのお城なの? お城に見えるだけのテーマパークとかイベント会場なのかしら……


 優理子って誰だった?


 じゃあ、私は誰?



「リナ」


 柔らかい、高くもなく低くもない優しい声が、私に向けられた。リナ?


「私の髪と瞳の色のドレスを着て、来てくれたんだね」

 シャンデリアのきらめきに負けない、レモンイエローの絹糸のような髪。

 ミントグリーンの光彩に若草色の瞳。

 シトリンとペリドットで出来たような、綺麗な顔立ちの男性が、私に微笑みかけた。


 誰? リナって私? 私はリナなの? あなたは?


 ──頭の奥がツキンと痛んだ。



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