5.ここはお城、あなたは……?


 金糸の刺繍で縁取られた若草色のベスト。

 白い、クラヴァットとドレープが優雅な印象のドレスシャツ。

 深い森を思わせる深緑色の、タックをとってややゆったり目のトラウザーズと、革の帯で締めた腰との対比が、決して弛んだ体格ではないことを際立たせていた。


「君はこういう派手な空間は苦手だったから、こうして私の色を纏って参加してくれたのは嬉しいよ」


 ま、眩しい!


 ペリドットの眼を細めて微笑み、私の立つ壁際へと近づいてくる。

 シャンデリアが反射しているのか、まさか彼自身が輝いているのか、ペリドットの眼も金糸の髪も、白いドレスシャツも、彼の存在すべてがきらきらとまばゆい姿に、平常心が落ち着きと手を取り合って家出した。


 でも、慌てながらも、


 彼のような高貴な方・・・・・・・・・に自ら近寄らせてただ待つなんて失礼だ!


 そう思い、こちらから近づこうとするが、先ほど捌こうとしてそのままだった長いドレスの裾を踏みつけた。


「おっと。君らしくないね、慌てて飛び込んでくるくらい会いたかった?」

 爽やかに笑って、つんのめった私を抱き留める。


「このまま、踊るかい?」

 自然な流れで、体勢を崩した私を起こし、背に手を回してホールの中心へ促す。

「あ、いえ、私はダンスは……」

 踊れない? もちろん、私は・・踊ったことなどないけど、なぜか、踊れる気がした。



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