8.ここはお城、私達……結婚するの?


「いえ、譬えそうだとしても、自慢する事ではありませんから……」


「君は、昔からそうだね。派手な事や贅沢を好まない、貴族令嬢としては珍しくつましい、出過ぎず欲張らない、よくできた人だよ。自慢の婚約者フィアンセだ」


 顔に集まった熱が下がらず、真っ赤で恥ずかしがる私に、多少は遠慮したのか、力は込めず、そっと抱き寄せられた。


「あ、あの!」

「うん、まだ少し熱が残ってるみたいだね、温かい……というより、熱いよ?」


 メリルが慌てて、氷嚢を包んだ厚手の手拭いを差し出した。


「身仕度が完成間近に、ふらっと意識を失われて……だから、私はお止めしたのです。意識をなくされる程に体調がよくないのに、夜会に出るなんて危険すぎます、と……」


「そうだね。これでは、今夜は踊れないし、重ね着して重いドレスのせいで具合が益々よくなくなって、食事もまともに摂れないかもしれないね」

「え? あ、あの……きゃっ」


 ますます熱量が上がりますよ、こんなの!


 自称?婚約者フィアンセの青年は、ひょいっと、本当に軽々と、重い絹のドレスとそれに身を包んだ私を、横抱きに抱え上げた。


 お姫さま抱っこ!! 乙女の憧れ、夢のお姫さま抱っこが現実に……!


 しかも、私を抱え上げる青年は、まばゆい限りの、宝石細工のような整った容姿で、使用人がうかうか言葉をかける事は赦されない、とても高貴な身分の人!


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