7.ここはお城、あなたは……婚約者?


 宝石のようなきらびやかな青年に促され、メリルは語り始めた。


「は、はい。

 実は、お嬢様は、三日前、高い熱のため寝込まれました。

 お医者様の仰るには、連日連夜お勉強にお励みになられて、風邪と疲労とが重なったからだと……

 エルヴィス様との婚礼に向けて、熱心に学ばれておられましたから……」


 メリルの言葉に、青年は驚きと喜びを複雑に絡めた表情で、寄り添うように立つ私を見おろした。


「2日間寝込まれ、昨日はお勉強の遅れを取り戻そうと、1日机に向かわれました。

 今日は夜会があるので、お勉強はお休みにして、午前中はサロンでゆっくりされた後、午後からお肌や御髪おぐしのお手入れに……」

「めっ、メリル、その下りは必要ないんじゃないかしら?」


 よくわからないし思い出せないけど、私の事を話してるのよね?

 これじゃ、私が彼と並ぶために、一生懸命になって最大限努力してるって公表してるようだわ! 恥ずかしいし、それは違うような気が……


 ──ダッテ、ワタシハカレヲ、オボエテナイ


「リナ? 照れなくてもいいじゃないか。私達は、近々結婚するのだし、そのために君が努力をしてくれているのは嬉しいし、敢えて隠すことじゃないだろう?」


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