16.なぜそんな事を訊くのかしら?


「リィナリッテ様、お話を聞かせてくださいな? 昨夜、エルヴィス様の腕の中でどんなお気持ちでしたの?」


 サレニアーナ嬢の言葉に、ご婦人方が色めき立つ。悲鳴に似た声を上げる人もいた。


「アナ、言い方。誤解を招くような言い方はお止めなさい」

「あら、だって、昨夜、エルヴィス様に抱えられてお帰りになったのは皆様ご存知だわ」


 それは事実だし、この場にいらっしゃる方々も大半は、昨夜、参加されていた人達で、知っているようだったが、中には「昨夜」「腕の中」「どんな気持ち」だけを拾って、恥ずかしい想像をなさった方もいたようで、頬を染めて奇声を漏らす人、扇で顔を隠してひそひそ囁き会う方もいる。


「ご想像にお任せいたしますわ。ただ、恥ずかしかった、とだけ……」

「リィナリッテ嬢」

「だ、だって、あんな衆人監視の中、抱きかかえられて運ばれたのですもの、恥ずかしくない人なんていないと思いますわ」

「そ、それはそうだろうが……」

 アナの意図する事はそれじゃないと思うが……


 サレズィオ様は、やや頬を染められて、口をへの字にそっぽを向いた。

 やはり、お可愛らしい所がおありなのね。


 サレニアーナ嬢は、目を細め、口元を弧に曲げてニッコリと微笑まれた。

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