11.私は、コウシャク令嬢……らしい?


 男性の膝の上なんて、落ち着かないし、ドレスの下の幾重にも重なったレースのおかげで、痛くも硬くもないけれど、座り心地はそんなによくない。


 それでも、おうちまでの時間、考えなくては……!



 私は誰?


 青年は、コウシャクテイヘやってくれと言った。

 ってことは、公爵か侯爵、よね? 私の父親は、コウシャク様らしい。


 私は、『リナ』と呼ばれる、コウシャク令嬢。



 私を楽しげに抱き寄せ、時折ピンクブロンドの髪に鼻をすり寄せているこの人は?


 私の侍女かメイドと思われるメリルは、エルヴィス様と呼んでいた。

 ダンスホールに居た女性の多くは、『黄金の君』と呼んでいた。高貴な身分の方を、許可なく呼べないから、通り名のようなもので呼んでいるのだろうか。

 婚約者・・・のひとりくらい抱えられる程度には鍛えてある、と言っていた。


 青年は、一般人が気軽に呼びかけたり話しかけられない高貴な身分で、私の婚約者のエルヴィス様。


 気楽に呼び掛けられないくらい高貴だなんて、公爵家か、まさか王族じゃないよね?



 私達の結婚に向けて、私は、何かを学んでいた。


 根を詰めすぎ、夜も勉強していた結果、3日前に、風邪と過労から、発熱し、倒れたらしい。


 少しよくなって、今朝はゆっくりし、午後から夜会に参加するために、身支度中、再び体調を崩し、倒れたらしい。覚えてないのだけれど。

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