8.公爵家息女からの招待状
上位貴族からの正式な招待状。お断りしづらい。いや、正当な理由もなく、断ることは無理だろう。
サレズィオ様は、博識なだけでなく、洗練された所作とキリッとした態度、正確なマナーでいらしたので、王宮でも権威のある、格式の高いお家の方だろうとは思ったけれど、公爵家の方だった。
……そこまで知ってもなお、よく思い出せないのだけれど。
そんな方の妹君からのお茶会のお誘い。
文面には、僅かに嫌味かと思われる箇所もあったけれど、考え過ぎかもしれない。
私が勉強をしているのを表に出さないために、わざわざサレズィオ様とマリアベル様が訪問してくださっているのに、それを知っている……サレズィオ様がお喋りしたとは考えにくいから、元々知っている間柄なのかもしれない。
公爵令嬢と侯爵令嬢が仲良く交流がある。……別に変ではないわよね?
昨夜の夜会以前の事、エピソード記憶というものがほぼ思い出せない。一般的な知識や言葉は出るのに。
身内の小さなお茶会と仰られても、公爵家のご婦人方、取り巻きや親戚の方もいるかもしれない。
何度もお会いしてるはずのサレズィオ様やマリアベル様、ピンとこないけれど婚約者のエルヴィス様、メリルや家族まで思い出せない私が、そんなところへ出向いて、問題を起こさないだろうか……
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