20.私が一番、問題ありすぎる


 彼の人柄が何となく解ってきた所で、一番の謎は、自分、という事になってしまった。


 自宅を見ても、両親に会っても、ピンとこない、記憶の迷子だ。

 一般知識はあるし、言葉にも不自由しない。

 時折、見たことも聞いたこともない、不思議な知識があるけれど、覚えてないだけで、本か何かで見たのかもしれない。


 それはいい。


 自宅に戻っても、両親に会っても、自分の名前も思い出せない。今までどうやって過ごしてきたのかも、ぼんやりとした霧の向こうだ。それこそ、何となく聞いたことのある他人の人生のよう。


 私の名前は「リナ」だと思っていたが、リィナリッテが本名らしい。ファーストネームだろう。

 ミドルネームはあるのだろうか? 家名は? 父の爵位の領地名は?


 思い出せない事がありすぎる。


 恐らくは、3日前の高熱とやらが関係しているのだろうけれど。


 熱が高すぎて、頭の中が一部壊れてしまったのだろうか?



 必死に考えながら、周りを観察している私を、時折見下ろして微笑みながら、エルヴィス様は、階段を上がり始める。


「少し揺れるよ、ちゃんと掴まって」


 私の部屋は二階より上の階にあるらしい。それも覚えてない。

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