14.記憶と状況との齟齬がある


 私の記憶や知識と、体感や状況に、幾らかの齟齬があるこの状態はなんなのだろう……


 熱のせいで、記憶障害になってるのだろうか?


 思いだせない上に、霞がかかったようなぼんやりとした先に、見た事もないものなのに知っている知識はなんなのだろう?


 考えていると、どんどん熱があがってきたような気もする。



「リナ。勉強のしすぎで倒れたのだろう? 気になる事もあるのかもしれないけど、今はなにも考えずに、ゆっくりしなさい」


 婚約者の青年──エルヴィス様が、眉根を寄せて、目を合わせてくる。


「あ、あの……この状態ではゆっくり出来ません。せめて、隣に座らせてください」

「屋敷までの短い時間くらい、婚約者らしく親密な時間も欲しいのだけれど? いつもは、なかなか手も握らせてくれないじゃないか」

「それが普通なのでは?」


 恥ずかしさに死にそうになりながら、俯いたまま、抗議してみる。


「お家同士で決めた、縁故関係の縁談ならね。少なくとも、私達はお互いに望んで一緒になれるのだと思っているのだけれど、違ったのかな?」

 形のいい鼻や唇を、何度も私のピンクブロンドの髪にすり寄せうずめて、香りを嗅ぐ気配もする。


 もう、本当に、呼吸不全で倒れそう……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る