10.ドレスコードは婚約者


 お母さまのおかげで、やや華美に盛られた髪が重い。

 編み込まれた髪に、真珠やサファイア、エメラルドなどの宝石のついたピンが幾つも差し込まれているのだ。確かに、綺麗だけれど。

 綺麗だし、私もそれなりに女、きらきらしたものは好き。見るのは好きだけど、飾ると、落としたらどうしようって、そればかり気になって病んじゃいそうなんですけど……


 お母さまのご好意だから、今はそのままにしておくけれど。


 エメラルド色の、スタンドカラーの胸元も背中もきっちり隠した、オーガンジーと絹のレースで出来たドレス。これも高額品なんだろうな……


「貴女は、エルヴィス様の婚約者だから、外出時には、エルヴィス様のイメージカラーを纏わなくてはいけないのが寂しいわ。

 髪に合わせて、明るい温かい色のドレスや紫色も作りたいのに、黄色と緑しか着られないのですもの」


 そういう習慣らしい……


 エルヴィス様の金髪、宝石のような薄い碧眼グリーンアイをイメージした色のドレスや小物しか、外出時には使えないのか。

 お母さまの少女趣味な、レースやフリルをふんだんに使った紫色のドレスは……

 そう思ったら、エルヴィス様が一般的な金髪碧眼でよかった。

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