24.うがい、手洗いは入念に!


 驚いた様子で、まじまじとベッドの上の私を見る。

 よく聞こえなかったのかしら? もう一度。


「私は風邪で熱が出た後です。エルヴィス様が体調を崩されたら、私……」


 少しの沈黙の後、エルヴィス様は遠慮なく笑った。


「ははは、リナの風邪なら移されてみたいけれど」

 私が子供を叱るように、眉根を寄せると、

「解ったよ。良くない発言だった。謝る。けど、手洗いうがいとは?」

「風邪のウイルスがついたかもしれませんから、手をキレイに洗って、うがいして、ウイルスを流してください。予防の第一歩です」


 手のひらをもう片方の手の甲に重ねて、指の間に指を滑らせるゼスチャーをしながら、訴えかける。


「風邪の予防?」


「そうです。手のひらに石鹸をつけるだけではなく、ちゃんと泡立てて、こう、指と指の間に洗い残しがないよう……」

 左手で、右手の親指を握り込んで、きゅっきゅっと滑らし回すようにして見せ、

「指の一本一本もちゃんと洗ってくださいね。あと、うがいも、お茶を水で薄めたものを使って、出来ればちゃんと歯磨きをした方がより効果が高いです」

私の説明を真面目な顔で聴いている生徒さんエルヴィス様に力説する。


「それで風邪が防げるのかい? それを知っているリナは、今、風邪に負けているようだけれど?」

 うっ、痛いところを! ……説得力がないかしら。


「私は、外でウイルスを拾ったのではなくて、暖かくしたり湿度を保ったりといったケアを疎かなまま、お勉強で夜更かしをした疲労から、免疫力を落とした結果ひいた風邪です」

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