23.私の婚約者はイタズラが大好き?


「期待させて悪いけど、まだ、お預けかな?」


 笑いをこらえるような声が降ってきて、恐る恐る眼を開くと、楽しそうに眼を細めたエルヴィス様と、視線が合った。


 私の肩の両隣に手を突き、私はその腕の空間に閉じ込められた状態で、エルヴィス様は、笑いを少しもらしつつもこらえながら、私を見下ろしていた。


「実に残念なんだけど、このまま楽しい事に突入したいのだけど、私達はまだ結婚していないし、君は今、具合が悪いからここにいる。そうだね?」

「は……い」


「いい子だ。この先の素敵な時間は、結婚した後の楽しみにとっておくよ。今夜は、ゆっくりおやすみ」


 優しく、私の前髪を払い、額にキスをすると、体を起こしてベッドから離れる。

 一度だけ頭を撫で、頬を覆うように手を添えると、眼を細め微笑んで立ち上がった。

 添えた手を離し際、ふわっと、親指が私の唇を撫でていく。


「次に会うときは、元気な顔を見せてくれ。リナ、おやすみ。共に暮らし君のそばで安らげる日を楽しみにしているよ」


 侍従を伴って、私の寝室から立ち去ってゆく。


 嵐のような時間が過ぎて、ほっと息を吐いた。




「はっ。エルヴィス様! この部屋を出られましたら、すぐに手を洗ってうがいをなさってくださいね!」

 慌てて上半身を起こし、去りゆく背に声をかける。


 びっくりまなこで振り返り、私を見るエルヴィス様。

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