13.公爵家のささやかなお茶会


 サロンに入った瞬間、女性達のお喋りがピタッとおさまる。


「さ、サレズィオ様が、女性をエスコートなさるなんて」

「親しいお方?」


 そんなに珍しい事なのだろうか、女性客の視線が、一瞬私の全身像に、やがてその場の全員の視線が、サレズィオ様の腕に重ねられた私の手に集中する。


 給仕をしているメイドや侍従達まで、立場を忘れて直視していた。


 思春期の女学生なら慌てて手を振り解くところだろうけれど、この場でそんな事をすれば、サレズィオ様に恥をかかせる事になる。ジッと耐えるしかない。



「みなさま、こちらは、フォルタレーザ侯爵令嬢、リィナリッテ・フォン・エステルフェード嬢ですわ。

 以前から、私も、お兄様も親密に・・・・・・・していただいてますの」

「アナ、言い方。エルヴィス様との縁で、時折親しくしていただいてるだけだ」


 確かに、彼女の言い方では誤解を招きそう……


 招待状の文言といい、今の紹介の仕方といい、なぜかわざと複雑にしようとしているようにも思える。


 それが、ただ面白がっているだけなのか、多少の悪意があるのか、思惑も裏もない無意識の事なのか……



 大振りの花瓶が幾つも飾られ、薔薇、百合、ダリヤやカスミ草など、華やかな花がたくさん生けられている。


 それらの華やかさよりも主張してくる、きらびやかな花々貴婦人が大勢、こちらを見ていた。


 ──身内のみの小さなお茶会?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る