第20話「ふたつの再会」


「今日の会食も不発であった、な」

「せやなぁ……」


 月明かり代わりの光が闇から降りる夜。

 ウルク・ラーゼと内宮のふたりで歩く夜道。

 酒の入っていない素面シラフな顔で、いつもどおりの結果に諦め半分の落胆をする。


「そもそもや」

「何だ?」

「V.O.軍で金星が揺れとる時に、合コンに精を出すのもどうかと思うんや」


 会食、というのは方便であり半ば冗談。

 三十路みそじ手前の内宮と、40歳が手の届くウルク・ラーゼ。

 ふたりの独身者は将来の伴侶を見初めるべく、1年以上前から婚活を続けていた。

 続けていた、ということは振るわなかった事しかないということであり、こうやって夜道をトボトボと歩くのもお馴染みの光景であった。


「日常が壊されつつある中こそ、日常を謳歌することに意義があるのだよ」

「せやろか?」


 12番コロニーで問題が発生しているとはいえ、前線から離れた9番コロニー・クーロンの住人にとっては対岸の火事。

 アーミィとしても人員や戦力を送ったり、いつでも緊急出撃ができるようにと対応はしているが、何もない事が当たり前なのは変わらない。

 変わったことといえば緊急事態に対応できるようにと、アーミィ隊員全員の飲酒が禁じられたくらいだ。 


「我々アーミィが日々を崩さぬところから、民衆は安心感を覚えるのではないかね?」

「現実が見えてないて非難されなええけどな」


 現状V.O.軍は第12番コロニー・サンライトを占領して以降、目立った動きはない。

 捕虜となったはずの現地アーミィ兵たちの安否もわからないまま。

 通信も塞がれている以上、今できることと言えばこれ以上の侵攻を許さないために前線に兵力を貼り付けるくらいだ。


「……にしても、今日は酷かったな」

「せやな。うちとあんさんがなごう合コン通うてる言うたら……二人でくっつけば、やと?」

「冗談ではない! 貴様のような母性のカケラもないなまり女などに!」

「なんやと! うちかて、そないな変な仮面の大仰おおぎょう中年男なんて、物好き女でも手ぇ出さへんわっ!」

「貴様、言うに事欠いて!」

「お返しや!」

「「ふんっ!!」」


 戦火の迫る中でも、二人にとっては婚活という人生の戦いの方が苛烈だった。



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       鉄腕魔法少女マジ・カヨ


       第20話「ふたつの再会」


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 【1】


ももちゃん。まだ実感沸かないけど、華世ちゃんたち行っちゃったんだよね」

「寂しくなりますが、私達も頑張らないとです!」

「そうだね。……って、もうこんな時間か~」

「すっかり遅くなっちゃいましたね、結衣先輩」


 宇宙港に向かうバスに乗る華世たちを見送った帰り道。

 結衣とももは空いたな休日の一日を使って二人でウインドウショッピングを楽しんでいた。

 普段だと服飾系に興味がない華世に配慮してできなかった、可愛らしいアレコレを見回る遊び。

 あまりに二人で熱中しすぎた結果、すっかり夜も遅くなり街から人気ひとけも無くなっていた。


「なんだか、気味が悪いね」

「そうですか?」


 いつの間にか迷い込んでいた、暗い住宅街。

 


「こんなに周りに人がいないと……オバケとか出たら怖いね」

「お、オバケ……? だ、大丈夫ですよ結衣センパイ! 私たち、魔法少女ですし!」


 ドスン。


 低く鳴り響いた音と地響きに、顔を見合わせて震える二人。

 街頭の光だけが照らす路地の向こうから、一歩いっぽ地揺れとともに近づいてくる何か。


「まさか、オ・バ・ケ?」

「そんなそんな、こんな時代にオバケなんて」 

「でも、近づいて来るよ……!」


 暗闇の奥から近づいてくる巨大な気配。

 それは、街灯の光に照らし出されてシルエットを浮かび上がらせた。

 巨大な体躯、大きな頭。

 太い腕に握られていたのはよく見るタイプの銀行ATM。

 真っ暗な頭部に赤い光を浮かべたそれは、1機の〈ザンク〉だった。


『こ、子供……!?』

『見られちまったらしょうがねえ! 人質に取るぞ!』


 スピーカー越しに発された声とともに、大きな機械の腕がゆっくりと結衣たちへと伸びてくる。

 オバケに恐怖してたところに現れたキャリーフレームに、腰を抜かして動けない結衣。

 ももも立ってはいたが、震えて動けなさそうだった。


「危ないっ!!」


 突如、よこから割り込むようにして飛び込んだ人影。

 街灯の光が映し出したその姿は、流れるような美しい黒の長髪。

 長いスカートの深いスリットから、輝くような綺麗な足を伸ばしたその女性は、腰の鞘から刃を抜いた。


 刹那、放たれた横薙ぎの一閃。

 その一撃は〈ザンク〉の腕と両足を一刀のもとに切り離し、結衣たちへと迫った脅威を斬り倒した。

 にわかに聞こえてくる、パトカーのサイレン音。

 騒がしくなってきた一帯をよそに、刀を鞘に収めた女性は、へたり込んでいた結衣たちへと笑顔を向けながら手を差し出した。


「あなたたち、大丈夫?」

「え、あ……はい!」



※ ※ ※



「すっかり遅くなっちゃったね〜、ELエル

「書類仕事を残してパトロールに出るからですよ」

「忘れてたんだってば〜」


 結衣たちが謎の女性に助けられていた、その同じ頃。

 少し遠くでキャリーフレームによる強盗事件が起こっているとはつゆ知らず。

 咲良はコンビニで買った6人前のオデンを両手に、食事可能なボディを借りたELエルと二人で家路についていた。


「それにしても本日……木星での修理が終わった〈ジエル〉が納入されたのはずでしたよね?」

「まだ〈ザンドール〉でパトロールしておけって命令だったもんね〜。何がトラブルでもあったのかな」

「〈ザンドール〉だと私の支援が充分に行なえませんから、早く元の…………待ってください、咲良」


 急に足を止め、守るように片腕を伸ばして咲良を制止させるELエル

 彼女が警戒する方向から、小さな影がゆっくりと暗闇から近づいてきていた。


「迷子の、子供……?」

「時刻的に不自然です。ツクモロズの刺客の可能性も」


 ぺち、ぺちと足音を立て、一歩ずつ近づく何者か。

 その姿が街灯の光に照らし出されたとき、咲良は「あっ」という言葉しか出なかった。


「おにゃか……ぺこぺこ〜〜……」


 咲良たちの顔を見るやいなやその場に倒れる、見た目小学生くらいの少女。

 慌てて駆け寄ると、その子はなんと靴を履いていなかった。

 それだけではない。

 服はボロボロで、身体はツーンとした匂い。

 伸び放題の髪は艶がなく、全身から生気がまるで感じられなかった。


「どうします、咲良?」

「えーと、えーっと……とりあえず、助ける!」


 オデンをELエルに押し付けた咲良は、そのまま少女を抱き抱えて走り出した。



 【2】


「いったい、なんの騒ぎやぁ!?」


 パトカーの方とは真逆の方向から結衣たちのもとへと走ってきたのは、聞き覚えのある関西弁。

 妙に着飾った格好の内宮が、倒れたキャリーフレームと座り込んだ結衣たちを見て、首を傾げる。


「なんや、何で〈ザンク〉が倒れとるんや?」

「恐らくキャリーフレームを使ったATM泥棒でしょう。犯人がこの子たちに危害を加えようとしていたので、咄嗟に助けました」

「そ、そりゃあ偉いことやけど……もも、なんともないか? それよりあんさん……?」


 結衣たちを助けてくれた女性の顔を覗き込む内宮。

 まるで見覚えがある顔を思い出すように、難しい顔をしながら「むむむ」と唸っていた。


「あんさん……もしかして女優の?」

「はい。私は……」


「なんだね内宮少尉。この騒ぎは……」


 遅れてやって来たのは変な仮面で目元を隠す、クーロン支部長のウルク・ラーゼ。

 彼もまた妙に気合の入った白いタキシード姿であったが、冷静に状況を見回していた。


「ウルク・ラーゼ支部長。なんでもももたちが泥棒に襲われてたところをこ、の人が助けてくれたらしいんや」

「泥棒といってもキャリーフレームではないか。これはいったい……?」


「ウルク? もしかして……ウルク君なの?」

「む? のわっ……!?」


 支部長の名前を聞くやいなや、目に涙を浮かべウルク・ラーゼへと抱きつく黒髪の美女。

 突然おこった予想外の行為に、結衣を含めこの場の全員がポカンと口を開けて立ち尽くすしかなかった。


「よかった……やっと会えた……!」


 ひとり感涙する、支部長に抱きついた女性を除いては……。



※ ※ ※



「にゃはは、ご飯ご飯おいしー! しあわせ!」

「いっぱい食べてね~」


 器に盛られたオデンの具を、笑顔でパクパク食べる行き倒れ少女。

 その肌艶はボディーソープが取り戻し、きつかった匂いもギトギトになった浴槽が綺麗サッパリ落としてくれた。


「まったく……なぜ私がこんな苦労を。本当ならば咲良と二人でオデンパーティの予定だったというのに」


 一方で視線をそらして不貞ふて腐れる、パジャマ姿のELエル

 咲良が夕飯の準備をする間、一緒にお風呂に入りながら少女を洗ってくれたのだが、様子を見るになかなか大変だったようだ。


「ごめんってば、ELエル。今度埋め合わせしてあげるから~」

「じゃあ、フレンドマートのダブルシュークリーム2つで」


 そんなことで良いのかと思いつつ、やや機嫌の戻ったELエルから目線を外し、オデンのおかわりをする少女を改めて観察する。

 今はELエル用に買った子供用パジャマに身を包んでいる小柄な身体。

 最も目を引くのは綺麗にしたことで判明した、鮮やかなエメラルドグリーンの髪。

 胎児の時に宇宙線を浴びた際、人間離れした髪色になる事例は聞いたことあるが、それを考慮しても不思議な色だった。


(まるで今のELエルか、ももちゃんみたい)


 アンドロイドの髪は人間と違い人工的に作られたものなので、色の制限がなく様々なカラーが存在する。

 実際に今ELエルが借りているボディの髪も、暗いグリーンのボブカットだ。


 もう一つ、特異な髪色という特徴で思い出すのは、華世の妹ということになった少女・もも

 名前の由来にもなった明るい桃色の髪は、まるでアニメに出てくる女の子のようだった。


「……咲良、なにあの子をじっと見つめ続けてるんですか?」

「いや、髪色すごいなーって思って。そうだ、あなたの名前……まだ聞いてなかったよね。教えてくれると嬉しいな」

「にゅふふ、良いよ! 私はヘレシーちゃんです。よろしくね、葵お姉さん♪」

「ヘレシーちゃんか~。変わった名前だね。……あれ?」


 今、ヘレシーと名乗った少女は間違いなく咲良のことを苗字で呼んだ。

 しかし、ここに来るまでのELエルとの会話で、苗字を名乗った覚えはない。

 アパートの表札を真っ白のままで放置している現状、彼女が咲良の姓を知るよしはないはずだった。


「ねえ、ELエル。どこかに私の苗字、書いてあったっけ?」

「いえ。机の奥の書類等に記載はありますが、室内で確認できるものはありません」

「……だよね。ヘレシーちゃん、どうして私の苗字がわかったの?」

「かんたんだよー! だって……」


 そう言って、咲良が仕事に使っているカバンに手を入れるヘレシー。

 咲良が止めようと立ち上がる前に、少女はその中から赤く輝く宝玉を取り出していた。


「モミジちゃんの魔晶石、なつかしー! お姉さん、モミジちゃんのお姉さんだよね?」

紅葉もみじ……って、妹を知ってるの!? ちょっと待って……ヘレシー、ヘレシーって……!!」


 人知れず魔法少女として戦い死んだ咲良の妹、あおい紅葉もみじ

 ヘレシーが彼女の名を出した途端、記憶の奥に仕舞ってあった文字列が急激に呼び起こされた。

 急いで妹が遺した日記帳を開き、思い当たったページに目を通す。

 

 ──今日は、長いあいだ敵だったヘレシーと、やっと友だちになれた。

 ──あの子は一人ぼっちで、寂しかっただけだったんだ。


「ヘレシー、あなたまさか……」

「どーも、ツクモロズの……ヘレシーちゃんです♪」




 【3】


「あの……」

「何や?」

「このお茶、飲んでもよろしいでしょうか?」

「ええよええよ、飲まれるために出したんやし」


 換気扇の回る音くらいしか聞こえない静かな取調室の中で、丁寧な動きで湯呑みを持ち上げる黒髪の美女。

 彼女は緑茶を喉に通す音すら出さずに、空になった器をそっとコースターの上へと戻した。


 本来ならば、取り調べその他をやるのはポリスの方である。

 しかし、今回の事件に関しては様々な事情のため、西之園の身柄だけはアーミィの方で預かるようにしたのだった。


「えーと、あんさんの名前は西之園にしのぞの美月みつき35歳。職業はドラマ俳優。……さ、さんじゅうご歳ぃ?」

「はい……」


 現場から参考人として同行してもらった西之園の顔を、疑いの眼で覗き込む内宮。

 若干の幼さすら感じる小ジワひとつない綺麗な顔は、とても自分より5年以上長く生きている人間とは思えない。


「内宮少尉」


 部屋の隅の壁にもたれかかっている支部長からの威圧的な声。

 余計な話は程々に早く仕事をしろ……というプレッシャーに押され、渋々本題を切り出した。


「あ、はい。えーと……この刀はいつも携帯しとりますんか?」

「はい。私は西之園流という野太刀剣術の師範代でもありまして、護身も兼ねてコロニーに赴くときは常に持ち歩いています」

「なるほど、なるほど……」


 タブレット端末上に映し出された調書データへと、西之園美月の発言を入力する内宮。

 その最中にも、横目チラチラとウルク・ラーゼの様子を見る。

 先程の抱き付き行為が無かったかのように、双方その件に関しては触れないようにしていると感じる。


「その西之園流というのは」

曾祖母そうそぼが考案した野太刀……つまりは大きな刀を用いた武道です。私の家系は代々ならわしとして習得していまして、祖父の姉にあたる大伯母おおおば様は地球圏のコロニーで道場を開いておりました」

「道場を、開いていたと……」


 美月の説明を聞きながら内宮の脳裏に、華世に武術を教え込んだ矢ノ倉の姿が浮かぶ。

 あの人は宇宙体術の先生であったが、まあ世間がそこまで狭いはずはないだろうし、美月と関係は無いだろうと思考を打ち切った。


「では次に……現住所は地球らしいんやけど、どないして金星に?」

「仕事が落ち着いて長期休暇を得られましたので、帰省にですね」

「帰省? 金星出身なんか」

「はい。ベスパー出身です」

「ベスパーなぁ……」

「あの、どうしました?」

「いや、何でもないで。ベスパー出身と……」


 第二のベスパー事変にあたる事態が起こっている今、その名称には敏感な今日こんにち

 別にコロニーそのものや住人に罪はないのだが、どうしても意識してしまうのだ。

 調書を書き終わった内宮は、端末を美月の前に置き、サインを書くためのタッチペンを手渡す。


「自白強要なんかの不当な取り調べは行われなかった、っちゅう証明のためにサインをここに書いてな」

「あ、はい。…………これでいいですか?」

「はいはい、ありがとさん。せやったらこれで終わりや、ちょいと完了手続きするから待合スペースで待っててな」


 促され、取り調べ室から退出する美月。

 その背中が閉じる扉の先に消え足音が聞こえなくなってから、内宮は隅でじっとしていた支部長へと食って掛かった。


「ホンマにあの人、支部長と関係ないんですか?」

「記憶にないな。私に人気女優の知り合いなど居ない」

「でも、じゃあどうしてさっき……」

「人違いだったのだろう。さあ、手続きが終わったら宿泊施設まで送って差し上げろ。有名女優が帰り道に事件に巻き込まれでもしたらアーミィの恥だ」

「……せやな」


 美月について、知らぬ存ぜぬを突き通すウルク・ラーゼ。

 絶対に二人には何かがある……と勘付いた内宮であったが、これ以上ウルク・ラーゼに踏み込むのは良くないだろう。

 彼を詰問するのは諦め、言われたとおりに手続きを進めた。



 ※ ※ ※



「私たち……何もできなかったね」

「そうですね……」


 待っているように言われたガランとした待合スペース。

 夜勤をしている受付のチナミだけがいるひっそりとした空間で、結衣は美月に助けてもらった時のことを思い返していた。


「魔法少女に変身できるようになったから、華世ちゃんと一緒に戦えるって思ったんだけどなぁ……」

「実際に前にしてみると、やっぱりキャリーフレームって……怖いです」


 暗くて、オバケを恐れていたのもあるかもしれない。

 けれども8メートル……3階建てのビルに匹敵する大きさのキャリーフレームが目の前に現れたとき、向けられた敵意に身体は完全に縮こまっていた。

 もしもこれが華世だったら、即座に変身して反撃していたに違いない。


 戦いのライセンスが無いという理由で、華世たちに置いていかれた結衣ともも

 しかし実際は戦いに対する覚悟の無さと、恐怖に呑まれる弱い心を見抜かれての動向拒否だったのかもれない。


 信頼している華世から事実上の戦力外扱いをされたことで気にしていた事を、今回の事件で完全に現実として思い知らされた。

 そのことが、結衣とももの心に影を落としていた。


「あっ……西之園さん!」


 俯いていたところで、明るい声を出して立ち上がるもも

 彼女が向かっていった先に目を向けると、黒く美しい長髪を揺らす西之園美月がゆっくりとこちらに歩いてきていた。


「あら、あなた達……帰ってなかったんだ」

「内宮さんにここで待っててって言われまして……そうだ!」


 美月の顔を見て、ひとつ思いついた結衣。

 そのアイデアを伝えるために、美月のもとへ駆け寄り、彼女の手をギュッと握った。


「お姉さんは、どうしてそんなに強くなれたんですかっ!」

「強い? 私が?」

「キャリーフレームを前にしても、私達のために毅然きぜんと向かっていく姿、惚れ惚れしました。どうやったら、私達……お姉さんのように強くなれますか!?」


 出会って時間の浅い相手への、不躾な質問。

 この場に華世がいたら必ず叱られていただろうが、強くなりたい結衣は真っ直ぐに感情をぶつけるしか手がなかった。

 結衣に問われ、困ったような眉のまま微笑みを返す美月。


「お姉さんは、強くないわよ」

「でもっ! さっきはあんなに……」

「ううん。今も私、怖く感じてるもの。せっかく出会えた幼馴染が、別人なんじゃないかって……」

「幼馴染って、あの仮面の支部長さんですか?」

「ええ……」


 決して涙は見せず、表情に表さずとも、震える手が彼女の恐れを結衣に伝えていた。

 何があったかは知らないけれど、キャリーフレームに対して揺らがなかった女性が、震えている。

 その事実がわかってもその裏にあるものは、結衣にはわからなかった。


「でも、どうしてあなた達は強くなりたいの?」

「私、友達の役に立てなかったんです」

「お姉さまは、私達の力不足がわかってる。だから置いていったんです」

「だから私、強くなりたいんです! あのとき、斬機刀で〈ザンク〉を撃退したあなたみたいに……!」


 藁にもすがる思い。

 生身でキャリーフレームと戦える女性、それは結衣の目指すところである。

 涙が浮かぶ目で、真っ直ぐに美月の灰色の瞳を見つめる。

 彼女は少しだけ悩んでから……「そうだ」と言ってウィンクした。


「じゃあこうしましょう。私が勇気を持つためにしたこと、明日からあなた達に教えてあげる!」

「本当ですか!?」

「渡航禁止が出ちゃって、しばらく身動きがとれないもの。これも何かの縁だし、お姉さんでよければ協力してあげるわ」

「「ありがとうございます!!」」


 二人でお礼を良い、ももと手を握り合って飛び跳ね喜ぶ結衣。

 しかしこれが、過酷な修行の始まりだとは二人はまだ知らなかった。

 


 【4】


「おはよーさん。ん、支部長は何しとるんや?」


 いつもより人が少なく、ガランとした仕事場に脚を踏み入れた内宮。

 自分のデスクに荷物を置きながら、内宮は楓真へと訪ねる。

 なぜそんな質問を投げかけたかというと、窓際で動かず双眼鏡で外を眺め続けるウルク・ラーゼの姿が目に入ったからだ。


「さあね。双眼鏡でスパイの捜索……なんてするような人ではないし。なぁ、咲良」

「……えっ、あっ、何?」


 名前を呼ばれて驚き、首を傾げる咲良。

 側でしていた話題を聞き逃すなんて、いつもの咲良らしくはない。


「大丈夫か? ボーッとしとったみたいやけど」

「いえいえ、何も~。それで隊長、何でしたっけ?」

「支部長が何をしとるか、あんさんは知らへんか?」

「さぁ……私もさっき来たばかりですが、かれこれ三十分くらいずっとあのままらしいですよ~」

「三十分なぁ」


 支部長としての仕事を放っているのを見逃すわけにもいかず、ウルク・ラーゼに近づく内宮。

 側まで寄ったというのに、気づかないのか微動だにしない支部長。

 内宮は不意打ち気味に彼から双眼鏡を奪い取り、そのレンズが見ていたであろう方角を自分の目を通して眺めた。


「こらっ、貴様っ!」

「……ははぁーん。あそこにおるの、昨日の女優サンやないか。……よう見たらももと結衣もおるな」


 内宮の目に映ったのは、百年祭があった運動公園にてジャージ姿で竹刀を握る美月。

 そして彼女の監督の元、ランニングに励むももと結衣の姿だった。


「やっぱり知り合いとちゃいますか?」

「そうではない。私自らの目で、彼女が怪しいものではないかと観察しているのだよ」

「どうだか。……それにしても、寂しなりましたな」


 支部長席のある場所からオフィスを見渡し、呟く内宮。

 双眼鏡を取り返した支部長が、再び窓の外に目を向けながらフゥとため息をつく。


「君の隊のトニーとセドリックも含め、多くのキャリーフレーム操縦者が戦力を前線に貼り付けるために異動になったからな」

「占領されたサンライトの隣接コロニーの防備を固めるため……やったっけ。手薄になったココが狙われなええですけどな」

「異動になった彼らには悪いが、ここに残しているのは君も含めて精鋭たちだ。数は減っても、増強した機体の質でプラマイゼロ、いやプラスの計算のつもりだよ」


 増強した機体、というのは先日ネメシス傭兵団によって納入された機体群である。

 修理を終えた咲良の〈ジエル〉を含め、キャリーフレーム本体から新装備まで、多岐にわたる品目が運び込まれたと聞いている。

 しかし……その〈ジエル〉含め納入された機体たちは、一晩経った今も運用できないままだと聞く。

 このまま準備が不十分な内に襲撃があったら、と思うと心配の種は尽きなかった。



 ※ ※ ※



「あと一周!」

「は……はひっ!!」


 疲労物質が溜まった足を動かしながら、美月の掛け声に返事をする結衣。

 修行に付き合ってくれる……という美月の言葉にこの公園に赴いてから、かれこれ敷地の外周を9周ほど全力疾走していた。

 マラソン並みの距離を走り続け、すでにヘトヘトな結衣。

 一方のももはというと、疲れの色こそ見えるが顔と速度を見るににまだまだ余裕そうだった。


 グラグラする視界で転びそうになりながら、ようやく最後の一周を終えた結衣。

 美月から手渡されたスポーツドリンクで喉を潤してから、芝生の上に大の字に倒れ込む。

 

「づ……づがれだ……」

「お疲れ様。一休みしたら、次は肺活訓練をしましょう」

「ええーー……」

「質問です! どうしてこのようなスポーツ選手みたいな訓練が、女優であるあなたの強さに繋がったのですか?」


 スポーツドリンクのボトルを空にしたももが、高らかに美月へと質問した。

 この訓練は、あくまでも美月が女優として勇気を持つために行ったことだという話だった。

 軍隊レベル……とはいかなくても、激しい運動と女優の自信はすこしも接点が感じられない。

 しかし、美月はその疑問を投げかけられるのがわかっていたかのように、即座に返答を返した。


「これはあくまで私の持論なんだけど、勇気を出すために必要なのは、自分の能力を信じることだと思ってるの」

「自分を信じる?」

「これからすることが、必ず上手くいく……なんて、未来が見えない限りはわからないでしょう? だけど、自分の能力が充分だ……って信じてあげられたら、恐れずに実行できる。これが、私なりの勇気の出し方なの」


 迷いなく言い切る美月の言葉。

 その裏には恐らく、長い女優生活の間に起こった苦労の山が存在するのだろう。

 しかし、ここにいる彼女はその山をすべて乗り越えてここにいる。

 その苦労を登り切る力の源こそ、美月の言う自分への自信なのだろう。


「私は頑張ってきたから、必ず成功できるんだぞ! 絶対に諦めないんだぞ! ……って自分に言い聞かせるの。いままでずっと、そう思うことでいろんな仕事を乗り越えていったのよ」

「そのための、運動なんですか?」

「ええ。本当は演技練習とかもやってたんだけど、あなた達は女優を目指しているわけじゃないし。だから身体づくりをすることで、少しでも自分の身体能力に自身を持てたら……って思ったの」


 たしかにいま結衣の中には、とてつもない疲労とともに、凄まじい距離を走りきれたという自分の能力への驚きがあった。

 これを重ねていくことで、自分への自信に繋がる。

 美月の話が、頭ではなく身体で少しだけ理解できた気がした。 


「私にとって勇気って、自分を……自分の能力を愛することから生まれると思ってるの」

「愛から、勇気が……」

「そう。ラブ&ブレイブ、が私のモットーなの」


 ラブ、愛。

 結衣の心を暖かくさせる言葉。

 自分を愛するという概念に、ハッと気づく感覚。

 身体に染み渡るように、暖かさが広がっていく。


「愛と、勇気か……」

「まずは自分の力を愛せるようになるところから。だからほら、頑張って!」

「でも……もうちょっとだけ休ませてぇぇ……」


 悲鳴を上げる身体を労る方が、今の結衣には必要だった。



 【5】


「はぁ……」


「どうしたんだい咲良。今日はずっとため息続きじゃないか。君らしくもない」


 立てた肘に顎を載せ、ぼんやりコンピューターの画面を見ていたところで楓真から飛んできた指摘。

 咲良は「なんでもない」と取り繕うが、その心中にはずっとヘレシーと名乗った少女のことが渦巻いていた。


(紅葉の友達で、ツクモロズ……)


 彼女の言っていたことはすべて、妹の日記に記されていた事と合致する。

 それは嘘ではない証明であるが、咲良が思うことは別にあった。


(魔法的なロックで、話せないって何よ)


 あの夜。

 自らの正体をあかしたヘレシーに対し、咲良は拳銃をいつでも抜けるように手をかけながら、いくつかの質問をした。


 なぜ妹は死んでしまったのか。

 V.O.軍の蜂起にツクモロズは絡んでいるのか。

 ツクモロズという集団の目的はなにか。

 ツクモロズの本拠地はどこにあるのか。


 しかし、そのどれもにヘレシーは「わからない」と返す。

 知らないというわけではないらしい。

 曰く「魔法的なロック」とやらで、今のツクモロズに不利益なことは話せないようになっているそうだ。


 けれども、何の情報も得られなかったわけではない。


『紅葉が……85代目の魔法少女だった?』

『うん。今の子は87代目だね。86代目の子が戦いの途中で地球から金星に引っ越したから、今のツクモロズは金星にいるんだ』

『そんなに長く……でも、まだツクモロズがいるってことは、魔法少女たちは一度も勝てなかったってこと?』

『そんなことないよ。現に紅葉ちゃんは勝った。勝てたけど、その後で……』


 言葉を濁したメレシーの態度。

 それがツクモロズに勝った後に何が起こって、咲良の妹が死んだのか。

 言えないのか、言いたくないのか。

 伝えられないのか、伝えたくないのか。

 わからなかったが、一つわかることがあった。


 それは、脈々と続く果てしない戦いの歴史。

 終わりのない少女たちの戦い。

 倒すだけでは、何も変わらないという事実。


(でも、あの子はツクモロズ。本当のことを言っている保証は無い)


 彼女から聞いたことを皆に言い出すべきか、伝えるべきか。

 確信を持てないヘレシーという少女ツクモロズの出した情報が、ずっと咲良の中で渦巻いていた。


 目を閉じれば思い出せる、愛する妹と笑いあった記憶。

 思えば、華世を護りたいと思ったのは、妹と同じ目に遭う子を見たくなかったから。

 けれども彼女は旅立ち、役割に縛られた咲良は今、ここから動けないでいる。


(強く……ならないと)


 決意は固まれど、動けないこの身。

 咲良は切っ掛けを欲していた。

 強くなれる、切っ掛けを。



 ※ ※ ※



 クーロンの中にある、とある廃倉庫の中。

 動かない換気扇とトタン壁の隙間から差し込む光だけが照らされた広い空間。

 無数のキャリーフレームのまえで、レッド・ジャケットの隊員であることを示す赤いジャケットを羽織った男ランス・ランサーは、弟・スピアから報告を聞いた。


「ランス兄さん。準備が整ったと各地の工作員から連絡が」

「スピアよ、言伝ことづてご苦労であった。これが怪物モンスター核晶コアとやらか」


 ランスは、スピアから受け取った正八面体をまじまじと眺める。

 潜伏している廃倉庫の中では、仲間が同様の核晶コアを手に、キャリーフレーム〈クアットロ〉の前でランスの指示を待っている。


「諸君、これより我々はアーミィの連中に怪物モンスターをけしかける。威力偵察というやつだ」


 自らもタラップとなったコックピットハッチの階段を登り、核晶コアを握りしめるランス。

 その一挙手一投足を、この場にいる者たちが固唾を飲んで見守る。

 いや、通信機の先にいる多くの同士も、ランスの言葉に耳を傾けているに違いがないのだ。


「アーミィは我々のような敵をやすやすと通してしまうほど愚かしい存在だ。故に金星人ビューネシアンの幸福のために、正義の鉄槌を下さねばならん!」

「「「「イエス・リーダー!」」」」

「金星開拓を支えた紳士殿クアットロには泥をかぶって貰う形になる。しかしアーミィ共に用済みとされ、廃棄された彼らならば大義の礎となるならば、本懐というものだろう」

「「「「イエス・リーダー!」」」」

「我らの敵はあくまでもアーミィであるからして、罪なき民間人へと危害を加えることはレッド・ジャケットの恥と知れ!」

「「「「イエス・リーダー!」」」」

「作戦を開始する! 女神様の祝福には──」

「「「「──厳しい暑さと暖かき光がある!」」」」



 【6】


 それは突然のことだった。


「あ……」


 メキメキという破壊音とともに、公園そばの古びた建物の屋根を突き破って、キャリーフレームが姿を表したのだ。

 まったく異なる複数のセンサーがまぶされた巨大な顔。

 ゆっくりと自分たちの方へと向けられたその視線に、結衣は言葉を失う他なかった。


 背中からバーニア炎を噴射し、飛び上がる巨体。

 ずんぐりむっくりとした金属の塊が、すぐ側に降り立ち高みから見下ろしてきた。


「〈クアットロ〉……? 金星の地表掘削用キャリーフレームがどうして、こんな所に」


 見上げながら後退りする美月がそう呟いている内に、ゆっくりと持ち上がる〈クアットロ〉の肩から伸びる補助腕。

 結衣が「危ない!」と叫ぶ前に、ももが美月へと飛び込んだ。

 振り下ろされた金属のアームが大地を割る側で、叩きつけを逃れた美月ともも

 すぐさま立ち上がったももは、桃色の髪を振り乱しながら荷物置き場に駆け込む。

 そして、自分のカバンから赤い宝玉が輝くステッキを取り出し、叫んだ。


「ドリーム・チェェェェンジ!!」



 ※ ※ ※



 警報鳴り響く廊下を走り、エレベーターを待つ時間すら惜しく階段を駆け下りる咲良。

 先に行く楓真と内宮が息を切らせながら話す会話は、咲良の疑問を解くものだった。


「いつ緊急事態になっても、ええようにって、常時キャリーフレームフォールできるように、しとるんやって!」

「そりゃあ、ありがたいね! 隊長! 昼飯を、外で、食ってても! その場で、出撃できるって、わけだ!」


 待ち合いスペースを通り過ぎ、ガラス扉を押し開け外に出る、咲良たちハガル小隊一行。

 隊からふたり抜けて戦力は低下しているが、文句を言う暇はない。


「「「キャリーフレームフォールシステム、降下位置設定!」」」


 各々の携帯電話越しに命令を飛ばし、空を見上げる。

 コロニー中央を伝うシリンダー・ユニットから、キラリと輝く幾つかの光。

 その場所から咲良たちのいる広い駐車場へと、キャリーフレームが光を受け瞬きながら降り立った。


「……なんや、1機多くあらへんか?」

「ほんとうだね。4機降りてきてる」


「それは、私も、出撃、するから、だ! ぜぇ……ぜぇ……」


 低い声に振り返ると、ウルク・ラーゼ支部長が仮面顔のまま息を切らせつつ突っ立っていた。

 彼はそのままフラつきながら咲良たちの横を通り過ぎると、黒いキャリーフレームへと慣れた動きで乗り込んでいく。


「支部長が出てもええんですかい?」

「前線に人員を送った手前、人手不足は否定できぬからな! 敵は待ってはくれん、君たちも速やかに搭乗したまえ!」


 ウルク・ラーゼの声に従い、急いで機体に乗り込む各員。

 咲良もコックピットに体を滑り込ませながら、通信越しに聞こえてくる作戦説明ブリーフィングに耳を傾ける。

 

『現在、クーロン各地に複数の〈クアットロ〉が出現し暴れている。現在確認した数こそ25だが、増援の可能性も否定はできない』

『支部長、やはりV.O.軍の襲撃ですやろか?』

『すべての機体から生体反応は確認されない。単に自然発生したツクモロズなのか、人為的なものかは不明だ』

『ツクモロズということなら、遠慮はいらないね!』

『しかし我々よりも敵は遥かに多数だ。数に飲まれぬよう散会して撃破に当たれ! 作戦開始!』

『『『了解ラーサ!』』』


 次々と飛び立つ僚機を見つつ、咲良は指先からしびれるような感覚とともに神経を機体と接続。

 何度乗っても慣れない〈ザンドール〉と一体化してから、ペダルに載せた足に力を入れた。


「行くよ、EL! ……は、家で待たせてたんだった」


 家に置いたヘレシーを見張るため、ELがこの場にいないことを思い出す。

 アシストなしの操縦で戦えるか不安に思いながら、機体を飛び立たせる咲良。

 ぐんぐんと高度を上げ、眼下を高速で通り過ぎる町並みを見下ろす。

 しばらく真っ直ぐに飛行を続けていくと、不意にレーダーから敵発見を知らせるアラートが鳴り響いた。


 敵の概要を知らせる相棒の不在に、慣れない手付きでコンソールを操作し照会。

 報告にあったツクモロズ化した〈クアットロ〉の反応が2つ。

 迅速な殲滅のために自分が単騎であることを意識し、人々が逃げ惑う大通りへと咲良は〈ザンドール〉を着地させた。


 正面に映る、黄色い機影。

 火星地表の採掘現場で使用される〈クアットロ〉は、その太めのシルエットを構成する重厚な装甲が特徴。

 肩部から伸びるフレキシブル・パワー・アームに注意……というコンソールに表示された文章を横目で斜め読みした咲良。

 操縦レバーを握りしめ、流れ弾の心配がない格闘武器のビーム・アックスを機体に握らせる。


「生体反応無し……ツクモロズ、覚悟!」


 ペダルを踏み込み、前方へ加速。

 こちらを敵と認識した〈クアットロ〉が、手に握るマシンガンを放ってくるのを、ビーム・シールドで防ぎつつ肉薄。

 シールドのビーム粒子が弾丸を蒸発させる音を聞きながら、レバーを力いっぱい押し倒す。


「はあっ!」


 振り下ろしたビームの斧が、敵機のコックピットを溶断。

 腹部を中の核晶コアごと切り裂かれ、崩れ落ちる〈クアットロ〉。

 咲良はビーム・アックスを引き抜かせながら、レーダーに視線を移し、次の敵の位置を確認する。


「隣……ビル? 屋上ッ!」


 自機に被さった影に上を向くと、フレキシブル・アームを前に伸ばした〈クアットロ〉が飛び降りてきていた。

 反応が遅れて回避が間に合わず、重量を生かした一撃を半ば無意識で〈ザンドール〉の右腕で受け止める。


「いけない……!」


 衝撃を受け止めきれずに歪み、潰れる機械の右腕。

 一度後方へと飛び退き距離を取ろうとする咲良。

 しかし、道路を蹴った〈ザンドール〉の身体が、空中で何かにぶつかった。


「さっきの〈クアットロ〉! まだ生きてた……!?」


 ガッチリと機体を掴んで離さない、腹部を溶解させた〈クアットロ〉のパワーアーム。

 レバーをガチャガチャと動かすが、その拘束を解くことはかなわない。


「まずったなぁ……!」


 絶体絶命のピンチに、咲良は苦笑した。

 相棒のいない自分の情けなさに。

 自分すら守れない、己の無力さに……。



 【7】


 蕾のようなステッキの先端が花開き、放たれた光弾が尾を引きながら〈クアットロ〉に次々と突き刺さる。

 反撃とばかりに肩から伸びたパワーアームを振り下ろす敵に対し、ももはくるくると回転しながらの跳躍で回避。

 空中で直し構えたステッキを握りの先端から、1メートルほどの輝く刃が伸びる。


「マジカル・セイヴァーっ!!」


 横薙ぎの一閃がキャリーフレームの巨体を真一文字に切り裂き、人型の機械を鉄屑へと変える。

 一体を倒して一息ついた、思った直後に上空から新たな〈クアットロ〉が2機、結衣たちの眼前に降り立ってきた。


「このままでは美月さんと結衣先輩が……一旦立て直しましょう!」


 背中から光の翼「天使の翼」を広げたももが、結衣と美月の手を握り上空へと飛び立った。

 手を伝って彼女から受ける浮力に、風を切りながら空を飛ぶ三人。

 空中で浮遊感に身を任せている間に、美月がももへと質問を投げかける。


「あなたのその姿に力……もしかして魔法少女とかいう?」

「はい、そうです! ご存知でしたか?」

「地球でそんな存在が実在したという噂をいくつかの聞いたし、金星のニュースもチェックしてたから……」

「とにかく、お二人を安全なところまで運びます! あとは私に任せてください」


 勇ましいももの言葉。

 結衣はそこで「私も」と言えないことに、勇気を出しきれない自分に憤っていた。


(私だって、勇気があれば……華世ちゃんくらいに戦えなくても……!)


 結衣の心境を知ってか知らずか、美月が結衣の方向を向いて口を開く。


ももちゃんがそうってことは、結衣ちゃんも魔法少女だったりするんじゃない?」

「そうですけど、私は……ダメですよ。才能、無いから……」

「結衣ちゃん……そんなこと言ってはダメよ」

「美月さんに、私の気持ちなんてわかりませんよ! 私は臆病者なんですよ、目の前であなたが危険だったのに、足が動かなかったんですよ! 何時間かのランニングをしただけでももちゃんは戦えるようになってるのに、私は……!!」

「じゃああなたは、何にもならないと思って私に頼み込んだの?」

「それは……」


 コロニーの空の中で、繋いだ片手に身を預け風を切りながら、美月は綺麗な灰色の瞳で真っ直ぐに結衣の目を見た。


「あの時のあなたは決して、自分がダメとか才能がとか言わなかった。自分が勇気を持てるって、信じてたからでしょう!」

「でも、私は……!」

「あなたの人生は、あなたが主役なのよ! 誰かの代わりじゃない、あなた自身に……ひとつ上の自分を目指すのよ!」

「ラブ&ブレイブですよ、結衣先輩! ひゃあっ!?」


 いつの間にか背後まで迫っていた巨大な影。

 後方から追いついていた〈クアットロ〉のパンチが、気がついたときにはももへと放たれていた。

 間一髪でかわすももだったが、その衝撃で握っていた手が滑り抜けてしまう。


「美月さん、結衣先輩!!」


 浮力を失い、人工重力に従って落下する結衣。


(もう、ダメだ)


 落下しながら、諦める結衣。

 変身のためのステッキは公園に置いたまま。

 このまま落ちて、死んでしまうんだ。


 絶望に飲まれていた結衣。

 しかし、結衣の目に写った光景は、諦めきることに待ったをかける。


 隣で落ちる美月は、落ちながらもじっと結衣の目を見続けていた。

 このままふたりとも落ちて死んでしまう。

 その結果が見えているのに、彼女から生きる気力は失われていなかった。

 彼女の視線に、美月が自分にいった言葉を思い出す結衣。


(ひとつ上の、自分に……華世ちゃんの変わりじゃなく、自分自身に……!)


 キラリと、遠くの風景の一角で何かが光った。

 その輝きはひとりでに動き、こちらへと向かってくる。

 やがて目ではっきりと見えたそれは、自分に向かって飛んでくる変身ステッキ。

 それは結衣の勇気が呼び掛けとなり、自らの意思で主のもとへ馳せ参じたかのように自然に手の中に収まった。



 ※ ※ ※



「何やってんだろ、私……」


 ミシミシと悲鳴を上げ、歪んでいくコックピットの中で諦めつつあった咲良。

 一人じゃ何もできない。

 誰かを守るどころか、自分すら守れない。

 それなのに、妹の姿と重なっただけで、華世を守れると思い込んでいた。


「ごめんね、紅葉……お姉ちゃん、もうすぐあなたに会えそう」


(諦めないで)


「え……?」


 誰も居ないはずの密室の中に、響いたささやき声。

 それは確かに、咲良の耳に届いていた。


「これ……紅葉の魔晶石……」


 いつもお守りにと持ち歩いている、亡き妹の形見。

 綺麗な赤い宝玉にも見えるそれが、確かに声を放っていた。


(あなたを紅葉ちゃんと同じところへは、行かせない)

「ヘレシー……なの?」

(生きることを諦めないで。あなたには、あなたを必要としている人がいる)

「必要としている、人……? あうっ……!」


 大きく揺れるコックピット。転がり落ちる魔晶石。

 転がった先に見えた、裂けた外壁の隙間。


「……紅葉、助けてくれるんだ」


 妹の形見を拾い上げながら、裂け目に思いっきり飛び込む咲良。

 尖った装甲の破片に腕に切り傷を負いながら、硬い道路の上に投げ出される身体。

 痛みに呻き声を上げそうになるが、歯を食いしばり立ち上がり、走り始める咲良。


 生き残るために。

 自分を信じてくれる存在に、報いるために。


 脱出した咲良に気がついたのか、潰れきった〈ザンドール〉を投げ捨て向き直る〈クアットロ〉。

 一歩ずつ近づいてくる巨体から逃げられないとわかっていても、咲良は走った。


 直後、咲良の頭上を一筋の光が走る。

 その光は一陣の風となり、〈クアットロ〉の胴体を撃ち貫いた。

 咲良を救ったビームを放った巨大な何かが、咲良のもとへと降り立ち、影を落とす。


「これは……〈ジエル〉? にしては、大きすぎる……?」


 人型のキャリーフレームをコア・ユニットとした、アルファベットのYの字を思わせるシルエットの巨大なオーバーフレーム。

 その姿は、まるで綺羅びやかな帆船の船首に飾られる天使の像。

 機体の腹部が開き、搭乗用のワイヤー・リフトが咲良の目の前に伸びてきた。


『咲良、早く乗ってください!』

ELエルなの!? 家に居たはずじゃ……」

『話は後です。複数の敵機がこちらに集まってきています。早く!』

「……ええ!」


 ワイヤー・リフトに脚を乗せ、巻き取られる紐を掴みながら10メートル近く上のコクピット・ハッチへと持ち上げられる。

 そして、見慣れたパイロットシートに腰掛けていた人物に咲良は仰天した。


「ヘレシー、あなたが操縦を?」

『この娘、咲良が危ないと言って飛び出していってしまいまして。そうしたら、この機体……ARCアークユニットを装備した〈ジエル〉がCFFSで降りてきたんです』

「えへへ。ヘレシーちゃんは多芸なのだ。でも戦うのはちょっと苦手かな。咲良お姉ちゃん、あとはよろしくね♪」


 自ら椅子の側の空間へと降りたヘレシーに導かれるままに、パイロットシートへと座り込む咲良。

 色々と考えなきゃいけないことはたくさんある。

 けれども今やるべきことは、自分のために危険を冒してくれた二人に応えること。

 両手で操縦レバーを握りしめ、再度の神経接続。

 機体と一体化した咲良は、まっすぐに前を見据えた。


ARCアークユニット装備の〈ジエル〉……。ううん、〈アーク・ジエル〉発進!」


 神話の大天使アーク・エンジェルに似た名前を与えられた咲良の新しい翼が、光の羽をはためかせた。



 【8】


「美月さん、私は……やってみます! だめかもしれないけど、諦めないでやってみる! あなたを助けるために! ドリーム・チェェェンジッッ!!」


 変身の光のまゆを飛び出し、輝く翼を羽ばたかせて美月を受け止める結衣。

 今は戦うことは二の次で、とにかく彼女を安全な場所へ。

 その一心で空を駆けていた。恐怖にあらがっていた。


「結衣ちゃん、その姿……」

「怖いけど、怖いままじゃ駄目だって思って。とにかく美月さんを、安全な場所まで運びます!」


 初めて会ったときにももがしてくれたように、ひときわ高いビルの屋上へと降り立つ結衣。

 美月をそこに降ろして、すぐに後ろを振り返る。


「私は華世ちゃんのようにうまく戦えないし、勇気もない。でも、少しでも友達の力になる……自分のできることを、諦めずに精一杯やってみます!」

「頑張って、結衣ちゃん! 私、ここから応援してる! ランニングをやりきったあなたのガッツは、あなたの持ってる良いところだから!」

「はい!」


 ビルの屋上から飛び立つ結衣。

 すぐさま空中で撃ち合うもものもとへと合流しようと、天使の翼を輝かせる。


「き、来たっ……!」


 正面から来る〈クアットロ〉。

 けれども結衣は戦わず、向かってくるその巨体の脇をすり抜けるようにして交錯。

 無事にもものもとへと合流した。


ももちゃん!」

「結衣先輩!」


 合流したももと背中合わせの格好で、斧のような形状をしたステッキを構え直す結衣。

 さきほどすれ違った〈クアットロ〉が再び襲いかかってくるところへ、結衣は思いっきり叫んだ。


「マジカル・ミサァァイル!!」


 ステッキの側面から放たれる無数の弾頭。

 その一つ一つが敵機の装甲で炸裂。

 決して効いているわけではないが、次々と叩き込まれるその衝撃に敵機の動きがわずかに鈍る。

 その隙をついて前進するもも


「マジカル・セイヴァー!」


 光の刃で切り裂かれ、空中でバラバラになりながら落下する〈クアットロ〉。

 結衣は急いでその破片のもとへ急ぎ、ひときわ大きいものをステッキで打ち放った。


「えーいっ! マジカル・ホームランッ!」


 弾丸となった巨大な残骸が、別の〈クアットロ〉の胴体へとぶつかる。

 よろめいたそのキャリーフレームを、またももが光の剣で薙ぎ払った。



 ※ ※ ※



『正面に敵3。地上1に空中2、距離30です!』

「地上が近いからビーム射撃は控えて……ビーム・クロー展開!」


 咲良がレバーをひねると、〈アーク・ジエル〉右肩から伸びるユニット、その先端が展開し爪状のビーム刃を形成した。

 そのまま速度を上げて突進。すれ違いざまに〈クアットロ〉の胴体へとビーム・クローを突き刺す。

 挟み切るようにして核晶コアごとコックピットを溶断しつつ上昇。

 空中からマシンガンの銃口を向ける2機の〈クアットロ〉を正面に見据える。


『敵の射撃、来ます!』

「ビーム・フィールド展開! そのまま突撃よ!」


 操作に呼応し、〈アーク・ジエル〉の正面に形成される光の膜。

 放たれた弾丸はビームの障壁によって蒸発し、逆に弾丸となった〈アーク・ジエル〉のフィールドが〈クアットロ〉を飲み込んだ。


『沈黙を確認! ですが、敵が6機が集結中、囲まれます!』

「こっちに来すぎじゃない!?」

「大きいから目立つんだろうね。でも、いっぺんにやっつけちゃえば問題ないない♪」

「いっぺんにって……マルチロック?」


 コンソールに表示された武器をセレクトし、周囲を移すモニターに目を移す。

 次々とターゲット・カーソルが四方から接近する敵を捉え、ピピピとロックオン完了の音を鳴らした。


『ターゲット、ロック!』

「メドゥーサ・ビーム・スラスター、一斉発射!!」


 巨大な〈アーク・ジエル〉の高速飛行を支えていた幾つものビーム・スラスター。

 それらが神話の怪物メドゥーサの髪の蛇が如く蛇腹の管を伸ばし、その身を砲身へと変える。

 ロックオンしたターゲットへと同時に放たれる光線。

 接近しようとしていた全ての〈クアットロ〉を捉えたビームは、敵意のある巨体を瞬時に薙ぎ払い打ち倒した。


「残存兵力は!」

『レーダーの反応ゼロ』

「地上の被害!」

『墜落した敵機、すべて道路上に落下。確認できる死傷者……ありません。お見事です』

「……よかったぁ~~!!」


 一時は諦めかけた戦いの勝利。

 自分を信じてくれる二人に見守られながら、咲良は生き残った充足感に四肢をうんと伸ばして感動に震えていた。



 ※ ※ ※



「終わった……の?」

「そうみたい、ですね」


 敵の攻撃が止み、静かになった空中。

 ようやく〈クアットロ〉の増援もなくなり、クーロンに静けさが戻っていく。


「結衣先輩、すごかったですよ!」

「私は……まだまだ。ほとんどももちゃん頼みだったし」


 結衣は心のなかで、ももへの敗北感に苛まれていた。

 ももは最初から、キャリーフレームを怖がってなかった。

 恐らくは結衣に合わせてくれたのだろう。

 彼女はランニングも軽くこなし、〈クアットロ〉の出現にも冷静に美月を守り、変身して戦った。


「……そうだ、美月さんを迎えに行かないと」


 天使の翼を羽ばたかせ、美月を降ろした高層ビルを目指す結衣。

 屋上に彼女の姿が見えたとき、その側に立っているキャリーフレームに気がついた。

 そのコックピットから顔を出し、美月へと話しかけるのはウルク・ラーゼ。

 彼は結衣たちの姿に気がつくとコックピットを閉じ、美月を置いて飛び去ってしまった。


「美月さーん!」

「あら、結衣ちゃんにももちゃん。大丈夫だった?」

「はい、おかげさまです!」

「美月さん、支部長さんと何を話してたんですか?」

「私が無事かどうか確かめたかったみたい。なんだ……結局、気にしてくれてるんだ」


 嬉しそうな顔で夕暮がかった空を見上げる美月。

 その顔の中には確かに、結衣が好きなラブが溢れていた。


「美月さん、もしかして……支部長が好きなんですか?」

「ええ。ずっと、ずーっと……子供の頃からね。彼、色々変わっちゃったみたいだけど……変わらないところもあったわ」

「どんなところですか?」

「気恥ずかしくなるとちょっと冷たくなることと、なんだかんだ心配性なところ!」


 優しく微笑む彼女の表情は、とても満足そうだった。

 鍛えてくれているお礼に、美月の恋の応援をしたい。

 結衣は心のなかで、そっと温かい決意をしたのだった。


 ──────────────────────────────────────


登場戦士・マシン紹介No.20


【アーク・ジエル】

正式名:ジエル(ARCユニット装備)

全高:15.8メートル

重量:36.4トン


 咲良の愛機ジエルが木星クレッセント社から返ってきたときに、オマケで付いてきた新型ユニットを装備した形態。

 この状態は人型ロボットの形状を大きく逸脱しているため、キャリーフレームではなく「オーバーフレーム」に該当する。


 ARCアークユニットの開発コンセプトはジエルの長距離巡航の実現と、単騎による多数の敵の制圧である。

 これはアーミィ内でも少ない優秀なパイロットの力を拡張することで、一人の活躍を大幅に増やそうという狙いがある。


 ユニット名のARCアークはAugmented(拡張)Reinforced(補強)Cruise(巡航)という意味を持つ。

 全体像はアルファベットのYのようなシルエットをしており、線が交差する部分にコア・ユニットとしてジエルが内蔵されるように組み込まれることで稼働する。


 腕と一体化した翼には左右それぞれに10門のビーム・スラスターが内蔵されており、これによって大型化した機体による高速航行を実現している。

 また、このビーム・スラスターは有線式ではあるが分離可能で、自在に曲がる蛇腹状の管を介して伸ばすことができる。

 搭乗者がマルチロックオンすることで、敵ひとつひとつに一本ずつビームを放ち、周囲を囲む多数の敵に一度に対処することができる。


 腕が翼と一体化している都合上、汎用的な携行兵器は使用することができない。

 しかし翼の付け根にあたるアーマー部分に右翼には大型ビーム・クロー、左翼には高出力ビーム・キャノンが装備してあるため、攻撃能力は低下どころか増している。


 防御兵装としてビーム・フィールドというバリアー発生機能を持つ。

 高速巡航モードでビーム・スラスターを噴射すると余波のビームが翼のように広がり、ビーム・フィールドを伴いながら突進することで進路上の敵に大打撃を与えることができる。

 


【クアットロ】

全高:7.8メートル

重量:9.8トン


 金星地表で採掘作業を行うために開発された、重装甲の作業用キャリーフレーム。

 イチから作られた機体ではなく、金星初期開拓期に「クアッド」と呼ばれ使われた機体が祖先。

 これは、ザンクを始めとした4種類のキャリーフレームの組み合わせて作られた即席の作業キャリーフレームであり、この複合機体を一個の機体として改めて再設計されることによって誕生した。

 左肩部から伸びるフレキシブル・パワーアームが最大の特徴で、採掘の際は掘削・破砕・運搬にと万能な活躍をする。


 顔面下部にツインアイ、中央にゴーグルアイ、額にモノアイと4つの異なるセンサーアイを持っており、ツインアイがヒゲに見えることから「紳士殿ジェントル」という愛称がある。

 その経緯から金星初期開拓民、通称・金星人ビューネシアンの多くが強い思い入れを持つ。

 金星宙域の電磁波、金星地表の熱に耐えられるように設計されているため、現在の戦闘用キャリーフレームと比べても遜色がない頑強さを誇る。

 また、基本フレームがザンクの流用であるため標準的なキャリーフレームの武器も用いることができる。



──────────────────────────────────────


 【次回予告】


 巡礼の旅の第一歩として、華世達がたどり着いたのは極寒のコロニー・ウィンター。

 リンの参詣さんけいのためウィンター・アーミィ支部を尋ねる華世たちは、ウィンター支部長、キリシャ・カーマンにツクモロズ退治を依頼される。

 アーミィを悩ませるツクモロズ、それはこれまでに例のない強大なものだった。

 

 次回、鉄腕魔法少女マジ・カヨ 第21話「白銀の野に立つ巨影」


 ────迫る脅威に対抗するのは、人間の意地と絆の力。


 


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