傘は敢えて置いていくんだ




雨が降る

横殴りの、土砂降りの雨が

哀しみに染まった雨が

あの街にも

この街にも

あの娘にも

この僕にも



雨が降る

横殴りの、土砂降りの雨が

悲しみに染まった雨が

怒りに染まった雨が

悔しさに染まった雨が

後悔に染まった雨が

過去に染まった雨が

涙を隠す雨が

まるで止むことを知らないかの様に降るものだから

今日も全てがずぶ濡れで

大地が雨水を吸うように

全てをその色に染めてゆく



今日もまるで土砂降りで

僕はずぶ濡れで

傘を差す気もなくなってしまったよ

僕らしさも洗い流されて行方不明

ならいっそのこと雨に溶けて消えるのも悪くないな

なんて自嘲気味に笑ったら泣けてきたよ



ずぶ濡れのまま

睨みつけた空の先に

雨雲の切れ間

雨も消えるのか

なんて思ったら

もうどうでもよくなってしまったよ

涙はもう雨に消えた

だからって訳ではないけれど僕は歩き出す

ずぶ濡れのまま


光射すあの切れ間こそ僕の存在証明

生きる道標だ



なんて思って勇んで歩いていたら

風邪を引いたよ




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